コロナ禍で,とにかく忙しくなったのがロジスティクス(配送)業だろう。筆者も可能な限りのテレワークに取り組んで2年が経った。
日常の買い物はスーパーマーケットに行く。無農薬野菜など一部の食材は,以前から週1ペースで運んでもらっている。筆者の家族は外食をほとんどしないので,出前もほとんどない。
増えたのは,Amazonでの買い物である。PCを目の前にしていると,ついブラウザーでいろいろなものを検索してしまう。Bluetoothのマウスとかモバイルバッテリーとか,PC周りのグッズが多いが,書籍や衣類なども,注文してしまう。おそらく,コロナ禍前の2倍ぐらいは注文が増えた気がする。
コロナ禍より以前は,クルマで配送されることが多かったように思う。最近は,自転車で配達されることが増えたように思う。お互いの接触を避けるために,勝手に玄関先に置いて配達完了,となるケースも増えた。「置き配」の責任問題をコメントする - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/6/25。筆者は,置き配を望まないので,手渡し希望としているが,宅配ボックスを設置した方がいいかもしれないと思ったりもしている。
モノの配送の場合,自転車でも複数個積んでグルっとルートで回ることができ,効率的に見える。ところが,飲食の宅配は,常に1対1である。
かつての出前は,店で雇われて,店の仕事と出前の仕事を両方こなすスタイルだったが,今はデリバリーのみを行うワーカーを派遣するビジネスが大流行である。大都市圏で始まったこのデリバリーサービスは近隣県にも広がり,さらに複数の業者が林立する状況にある。いずれも,スマホのアプリから注文すれば,届けてくれる仕組みである。
飲食店から客先までが近ければ徒歩で,それなりに距離があればオートバイや三輪バイクが使われるが,おそらく最も多いのが自転車によるデリバリーだろう。
かつての出前と言えば,オカモチと呼ばれる木製の箱に器を入れ,これを手で持って自転車に乗ったり,バネで支えてバイクの荷台から浮かせて運ぶスタイルが多かった。中身をこぼさないような工夫がされていた。
今の主流の自転車デリバリーは,ドライバーが背中に保温箱になったリュックを背負って突っ走るスタイルである。どう見ても器を水平に保って走っているようには見えない。利用したことがないので,疑ってしまっているだけである。
さて,運ばれるモノも心配なのだが,働き方についても心配している。ドライバーは応募の際に自転車が得意なことがポイントになるので,乗り慣れているとは思うのだが,何しろ配達時間を気にしなければならない仕事なので,つい無理な運転をしてしまいがちだと思うのである。しかも,料理も崩さないように気をつけなければならないし,一度も行ったことのない場所へ届けなければならないので,スマホのナビも欠かせないと思う。さまざまなことに気を使いながら,都心では交通量の多い道,郊外ではスピードを出して走っているクルマの間隙を抜けて走らなければならない。危険な仕事だと思うのである。
賃金は出来高制。自転車やバイクは持ち込み。燃料は自腹。傷害保険などもないケースが多いと聞く。それでも,ちょっとした空き時間で仕事ができるので,ドライバー希望者は多いらしい。
これまでの出前は,「お店の人が自分たちの作った料理を丁寧にお客様に届ける」という使命感みたいなものがあったような気がする。いまのデリバリーは,運んでおカネを受け取って終わり,という何か味気なさを感じる。
現在,このデリバリーの仕事で生計を立てている人はほとんどなく,アルバイトが主流だと思う。注文する側も,配達する側も,何かドライな感じがして,料理の配達にはあまり適さないような気がするのである。
飲食店側が,自前で出前までできるスタッフを抱えられないという事情が,このデリバリービジネスを発展させているのだが,しょせん派遣,しょせんアルバイト,という辺りが,料理の宅配にはちょっと向いていないような気がする。