筆者のテレワークは,人との接触をほぼ100%ない形で遂行できる。テレワークに極めて適した仕事をしている。以前は,企画の打ち合わせに出張して出会い,交渉していた。1回目はどうしても打ち合わせが必要だが,出張の機会も徐々に減り,都内で打ち合わせできるケース以外は,メールで企画を提案し,電話で打ち合わせをして,進めるようになった。
COVID-19禍で,zoom会議が標準で使えるようになり,打ち合わせでもzoom会議で十分になった。その後のやり取りは,完全にデジタル。メール添付ほか,データ送信サービス,そしてクラウドストレージの利用で,以前は光ディスクが必要なほどの容量のデータを簡単に伝送できるようになった。通信回線もこれまでの1000倍以上速くなった。電話回線も4Gで映像のストリーミングもできるようになった。5GでWi-Fi並みのスピードも実現できる。
モノのやり取りは,宅配便で何でも送れるようになった。以前は,郵便局の定形外郵便や小包しかなく,梱包が面倒で時間もかかった。数時間で届けるケースではバイク便,自転車便などを使った時期もあったが,あまりにもコスパが悪かった。今は,コンビニに行けば翌日にモノが届けられる。いずれはドローン便も出てくるだろう。
リアルな出会いをするためには,移動に時間がかかる。場合によっては飲食を伴う。仕事と割り切れば,リアルはなくても進める方法はある。実際,営業でも入社面接でも,リアルなしで進められるケースが増えている。
モノの販売も,双方向オンラインでの接客ができるようになった。中国のメーカーや販売店が積極的に取り入れた。大国だから,リアルに客を集めるよりもオンラインで接客して販売し,オンラインで決済し,モノはロジスティクスで送るだけ,という方が効率がいいのは当たり前である。
医療分野でも,オンライン初診が実現されてきた。触診ももちろん必要だが,問診で判断できる9割のケースは,リアルなしでも第一段階をカバーできる。
リアルに価値があるのが,飲食,宿泊,旅行,そして個人的な出会いである。この分野のバーチャル化については,以前提案したが,また機会を改めて考えてみたい。
エンタテインメント分野はどうだろうか。オリンピックを含む大小さまざまなイベントは,人を集めてしまう。バーベキューや花火でも,人が集まってしまう。人が集まれば,楽しさが何倍にも拡大することは当たり前である。
「リアルな楽しさが拡大すると,感染リスクも拡大する」。大きいイベントは,ルールを守らせればいい。しかし,アングラ(アンダーグラウンド)を含めて小さいイベントは,ルールどころか,危険性に対する認識がほとんどない。オープンな飲食店は,ルールを守っているが,アングラの飲食店はルールを守らない。
個人レベルのリアルな出会いというのも,見方を変えれば「アングラ」である。家庭もアングラ,仲間うちもアングラである。
筆者の家族ですら,個人的なイベントには気軽に出かけて行く。筆者がCOVID-19感染に極端に神経質なことを知っているから,マスクの使用や屋外を利用することなど,気は使っているが,会う相手にそれを100%押し付けることもできないようだ。筆者はワクチン接種を完了しているが,家族はまだなので,家庭内感染のリスクはまだまだ残っている。
VR(バーチャルリアリティ),AR(オーグメンテッドリアリティ)をさらに進めること,そして「テレイグジスタンス」(遠隔存在感)あるいは「タンジブル」(手触り感)という,本当にそこにいるかのような感覚を実現する技術が必要になるだろう。
実際,公表はされていないが,軍事技術の範囲では遠隔手術において触覚フィードバックは実現しつつある。しかし,無人攻撃機,さらにドローンによる自動操縦攻撃などの方が現実的かもしれない。
東京大学で研究されていた「テレイグジスタンス」における没入型ディスプレイは,当時はまったく存在感を表示できるような代物ではなかった。いまや,画素を感じさせない大型ディスプレイを低コストで実現する技術が整っている。信号伝送も,5Gで双方向でも遅れのほとんどないリアルタイムな通信が実現できている。
Apple Computerが1984年に放送したテレビCM ちょうど21年前、アップルが放映した初代Macの伝説的CM - iPhone Mania (iphone-mania.jp) や,Microsoftが2009年に作成した未来ビジョン マイクロソフトが描く2019年のITビジョン - YouTube などに登場する空間ディスプレイ,あるいはドラえもんの「どこでもドア」が,エンタテインメントをバーチャルでも感動的なものにすると信じている。「オール・オンライン・オリンピック」で行こう - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/3/20。日本はこれをオリンピックという大きなイベントで実現することで,アングラも含めたすべてのエンタテインメントをバーチャルで楽しめることを示す最大のチャンスを逃してしまった,ということである。日本の技術を信じてきた人間としては,まことに残念である。しかし,きっとどこかのベンチャーが実現してくれることを信じている。