琥珀色の戯言

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県庁の星(再掲) ☆☆☆

県庁の星 スタンダード・エディション [DVD]

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K県庁のエリート公務員・野村聡(織田裕二)は、200億円をかけたプロジェクトを踏み台にキャリアの躍進を狙っている。プロジェクトに必要な「県と民間の交流」をクリアするため、半年間の研修に借り出された野村は、三流スーパー「満天堂」に派遣されることに。パート従業員の二宮(柴咲コウ)が野村の教育係になるが、役所のスキルを押し通そうとする野村は、スーパーの現場に馴染めない。その頃県庁では、野村抜きでプロジェクトが動きはじめてしまう。

気軽に観られる娯楽作品としては、けっこう面白かったです。少なくとも「観て時間の損した!」とは全然思いませんでした。適度なスーパーという職場の専門知識と、この作品が初共演だという織田裕二柴咲コウの組み合わせは、それなりに魅力的でしたし。まあ、正直それはあまりにご都合主義なんじゃないの?というような展開も多かったですし、ここまで「公務員」を悪しざまに描かれてしまうと、「民間」の公務員への悪意みたいなものが露骨に伝わってきて辛いなあ、とも感じたんですけどね。

この映画って、原作の小説の設定をうまく生かしつつも、まったく別の作品に仕上げているのです。なんといっても、原作では「体格のいい中年のパートのオバサン」であった「二宮泰子」が、映画では柴咲コウさん演じる若いパート女性の「二宮あき」に変えられているのが大きい。
小説版の「県庁の星」っていうのは、「県庁さん」こと野村の変化と同時に、「変わらない日常の袋小路」に迷い込んでいた(いわゆる、ミッドライフ・クライシスってやつですね)二宮泰子たちの変化が主題だったと思うのですが、「二宮」が若い女性になったことによって、二宮を中心とした「スーパー側の人々の行き詰まり」みたいなのはかなり薄まってしまったような気がします。小説版では、野村が豪華弁当の「難点」に気がついて、それを改善していくまでのプロセスが見せ場だったのに、それがかなり端折られてしまっていますしね。「冷えた弁当を食べてみたんです」だけで、次の場面でいきなり豪華弁当が売れまくるのは、小説版を読んだことがなく映画しか観ていない人たちにとっては、あまりに不親切なのではないかと。「整合性」よりも「テンポ」なの?そのわりには、議会でのシーンなんて、単に冗長なだけにしか観えなかったんだけどねえ。
そして、いくらなんでも柴咲コウの年齢で「スーパーを裏で仕切っているパート」という設定には無理があるし、あのくらいの年で少々行き詰っていても、柴咲さんくらいのルックスがあれば、あんまりその「行き詰まり」も深刻には感じられないんですよね。少なくとも、この映画はオッサン、オバサンには勇気を与えられないのでは……
もとの小説版も「努力!友情!勝利!」の「週刊少年ジャンプ小説」ではあったのですけど、映画版は、小説中のそのエッセンスを煮詰めて、織田裕二柴咲コウのロマンスのエッセンスを加えてみました、という作品なのです。たぶん、興行的には、それで「成功」だったのでしょうし、これはこれで「楽しい映画」ではあるんですけどね。それにしても、柴咲さんにはこういうキツめの女性の役が似合います。