2016年のアメリカ大統領選でトランプ氏が勝利してから、海外で暮らしているソニア・ムーアさん。
Sonya Moore
- ソニア・ムーアさんは2016年のアメリカ大統領選でトランプ氏が勝ったら、アメリカを離れようと決めていた。
- ムーアさんはそれ以来、7年間海外で暮らしている。
- ヨガを教えたり、ライターや写真家として働いている。
「今回の選挙でトランプが勝ったら、わたしはこの国を離れる」
わたしがそう口にしたのは、2016年11月のことだ。多くのアメリカ人がそうだった。実際、あまりの多さに大統領選の開票作業が進む中、カナダの移民情報サイトは閲覧できない状態になった。嘘じゃない。
このあと、どれだけの人がそれを実行に移したかは分からないけれど、わたしはやった。トランプは大統領選で勝利し、その9カ月後にわたしはアメリカを離れた。
…正直に言おう。トランプが大統領になったから、わたしはアメリカを離れたわけではない。会社勤めにうんざりしていたこと、世界を見て回りたいという強い願望が主な理由だった。
37歳だったわたしは独身で、子どもやペットもいなかった。だから、仕事を辞めて、今までの生活を捨て、飛び立つことができた。当時、家は持っていたけれど、アメリカを離れた数カ月後に売却した。
出発前はアジアをゆっくり旅して回ろう、お金が必要になったら英語を教えようということ以外、あまり計画を立てていなかった。この"ノープラン"ぶりはわたしらしくなかったけれど、留学経験もあったし、14年間頻繁に海外出張をしていたおかげで、海外を1人で旅することには慣れっこだった。
Sonya Moore
開かれた人生の新たな章
月日が経つにつれ、スペースを空けておくと、人生は自分にとって大切な場所、人、チャンスへと導いてくれることが分かった。
あれから7年が過ぎ、わたしは今もアメリカを離れたまま幸せに暮らしている。旅立ちを決断をしたことで、想像を超える経験の地平が開け、理想の男性との出会いにつながったとはいえ、全てが順調だったわけではない。
最初の1年は、貯金を切り崩しながらアジアをゆっくり旅した。わたしの旅はインドから始まり、そこで10日間、静寂のメディテーション(瞑想)リトリートで過ごし、ダライ・ラマの教えに参加し、ヨガの指導者のトレーニングを受けた。すぐにヨガを教えることに夢中になった。
インドで4カ月過ごした後、わたしはさらに8カ月、アジアを旅して回った。モルディブの透き通った海で泳ぎ、バリのヒーラーを訪ね、ラオスでは山頂から息をのむような日の出を眺め、フィリピンの島々をめぐり、タイの島々をバイクで回り、ミャンマーでは古代のパゴダ(仏塔)を楽しんだ。
アジアは物価が安いので、努力すればかなりの節約が可能だ。わたしは宿泊施設に対してはこだわりがあったので、旅行中は1泊20ド~25ドル(約3100~3800円)くらいのホテルを利用することが多かった。 こだわりの少ない友人たちは、インドで1泊6ドルのもっとシンプルな宿泊施設を利用していた。食事は、一食3ドルくらいだった。インドに6週間もいると、5ドルの昼食代は高いと感じるようになった。
迷いを感じたことも…
不安や目的意識の欠如を感じることもあった。
年月を重ねるにつれ、わたしはそうした懸念や不安の時期が繰り返しやってくることを学んだ。 ただ、信じ続けていれば、やがて道は開けることも学んだ。
アジアを1人で旅していて、怖い思いをしたことはないかとよく聞かれるが、わたしは一度もない(インドで何度か、ガードレールのないヒマラヤの高くて危うい道を走った時を除いては)。
アメリカを離れて1年が経った頃、わたしはミャンマーの小さな山間の町でヨガを教えるチャンスに恵まれた。そこでの生活は静かでシンプルで、美しかった。わたしはここで9カ月暮らし、とても幸せだった。でも、孤独を感じることもあった。
現地の人たちは優しくて親切で、彼らの目や行動には愛があふれていた。でも、自分と同じ言語を流暢に話し、ワインを飲みながら深い話ができる友人が恋しかった。出会いもなかった。
自分と同じくらい世界を旅して回ることが好きなパートナーも見つけた。
Sonya Moore
旅先で見つけた愛
ヨガを教える別の機会を得たわたしは、カンボジアのシェムリアップに移った。シェムリアップは決して大都市ではないけれど、ミャンマーの小さな町で暮らしていたわたしには、まるでマンハッタンのように感じられた。たくさんのレストラン、バー、社交的なイベントもあって、多くの友人、そして魅力的な独身男性にも出会った。
わたしはこの街、生活の質、そして現地の人々に惚れ込んだ。長期滞在するための観光ビザや就労ビザを取得するのも簡単で、インドやミャンマーと同じくらい物価も安かった。
パンデミックが起きた時も、シェムリアップで暮らしていた。その頃、わたしは旅行中に知り合ったフランス人男性と遠距離恋愛中で、国境が閉鎖され、7カ月離れ離れになった後、わたしは彼と一緒にいるためにフランスに引っ越した。
わたしたちの物語は紆余曲折あったものの、それは運命のように感じられた。彼はわたしと同じように世界を旅して回るのが大好きだ。付き合って4年になるわたしたちは今、パプアニューギニアで一緒に暮らしている。遊牧民のような"スロートラベル"の生活に戻りたいと考えている。わたしのキャリアもリトリート、執筆、写真、ヨガなど、自分の内面を明るく照らす創作活動が含まれるように徐々に進化してきた。
アメリカを離れる選択をしたかつての自分に、わたしは心から感謝している。 家族や友人が恋しくなることもあるけれど、テクノロジーのおかげでわたしたちの"つながり"は物理的な距離を超えて続いているし、年に一度は彼らに会いに戻っている。
アメリカのことは今でも大好きだし、アメリカで生まれ育ったことを幸せに思っている。でも、すぐそこには見つけられるのを待っている大きな世界がある。