広域観光と、「らき☆すた」聖地(旧鷲宮町)・「けいおん!」聖地(滋賀県豊郷町)の事例分析研究について/観光情報学会第7回全国大会in川越に参加して来ました
今回はこのブログの読者の方にはあまりなじみがなさそうな学会のレポートです。
ってことで、埼玉県川越市で開催されている観光情報学会第7回全国大会に参加して来ました。
- 大会を取り上げたニュース記事
「なんで一介の図書館情報学徒が観光情報学会に??」という話ですが、昨年秋の日本図書館情報学会研究大会で共同発表もさせていただいた、北海道大学の岡本健さんのご発表が主な目当てです。
- 学会発表資料
本当は1日ずっとご発表等があったのですが、バッテリ的に全ては記録に取れないので、その岡本さんのご発表と、午後に開催されていたパネルディスカッションだけレポートを取ってきましたー。
ってことで以下、いつものようにメモです。
なお例によってmin2-flyが聞きとれた/理解できた/書きとれた範囲でのメモであり、さらにいつもと異なりあまりなじみのない分野でのディスカッションであるのでいつも以上に注意してご利用いただければ幸いです。
間違いなどご発見の場合はコメント欄、あるいまメール等でお知らせいただけると助かります。
では、まずはパネルディスカッションの記録からー。
テーマは「広域観光」とのことでした。
「広域観光による地域おこし」(笹森秀樹さん、観光庁 観光地域振興課長)
- 自己紹介
- 国内観光は非常に大事
- 平成20年に20兆円以上のお金が使われている
- その86.6%が国内観光による消費
- 前原さんの3,000万人プログラムも意味はあるが、790万人の海外からの旅行者の消費は2兆円弱、10%にいかない
- 日本人の国内旅行で日本は振興されている。非常に大事。
- 平成20年に20兆円以上のお金が使われている
- 観光圏整備事業
- 2泊3日できる広域地域づくりを進めよう
- 従来の観光振興・・・特定の観光地/宿泊地がプロモーション(ex:熱海/箱根)
- 90年代くらいまでは団体旅行が大きなマーケットがあり、効果のある売り方だった(バブルまで
- 観光地のホテルが軒並み大きな箱に。ブームが去った今は四苦八苦
- 旅行の形態は変わった
- 家族・友人・仲間と行くもの。ロットは小さい。車1台、4〜5人で行くものに
- 観光地から見ると団体っぽいものも、参加者の意識は個人旅行。なので団体席を用意されたりするのは嫌がる
- 団体旅行なら幹事を落とせばよかった。個人旅行は現地についてからもわがままできる。お寺が嫌とか・・・あ、すみません(会場の住職に
- 1つ1つの集客施設じゃ客が呼べない。今考えているのは、周辺地域も取り込んで、地域に埋もれる宝を探して地域全体で売ること。
- 年齢層、趣味も違う人も呼び込める
- 晴れでも雨でも楽しめる
- そういうことを応援する
- 従来の観光振興・・・特定の観光地/宿泊地がプロモーション(ex:熱海/箱根)
- はじめて2年目で仕分けにあった(汗)
- しかし逆風を乗り越え、今年も認定箇所を増やしている
- 隣接市町村で仲が悪いところがあると申請できない。有名観光地が結構外れる。まわりとやらなくていいと思っているから。京都とかはけっこう落ちる
- 長野や岐阜もあまり入ってない。著名観光地は、実は逆に遅れている
- 2泊3日できる広域地域づくりを進めよう
- 全体をうまくまとめる組織も必要:観光地域づくりプラットフォーム
- 従来型の幹事が誘導する団体旅行向けではない、たくさんの観光資源を結びつける必要がある
- ロットは小さい。川越の街歩きをすると行っても、ガイド2人に対し20人が限度。それを超えると声が聞こえない
- 落とすお金も小さい。地域ガイドに対しては「素人に金払うの?」とか
- それでも皆で連携しないといけない
- リアルタイムの連携もいる。「あと何人参加できる」、「もう5人参加できる?」など。お客の窓口
- こういう組織は儲からない
- 副業として色々な事をしないと儲からない
- 公共施設:みちのえきの指定管理者になる
- 物産の製造・販売
- いろいろなことが必要・・・商工業者との連携、農林水産業との連携など
- 副業として色々な事をしないと儲からない
- 成長戦略会議の中でもプラットフォームが位置づけられている
- Yokoso Japan⇒Japan. Endless Discoveryに変更
- Yokosoは通じない(min2-fly:今さら!)
- 観光庁のwebは評価も高いので、ぜひご覧いただきたい
「埼玉県の観光戦略:超観光立県をめざして」(稲葉尚子さん、埼玉県産業労働部観光課 課長)
- 自己紹介
- 4月から現職
- 出張が多くて勉強もできていないが、勉強の途中経過みたいなものを発表したい
- 県議さんもいらしているそうなので、後のご質問を楽しみにしていたい
- 行き違いがあってスライドがない。拙い説明だけだが許していただきたい
- 埼玉県の観光力/観光の現状について
- 観光客はどういう人?
- 4割は不明
- 宿泊者苦はわかっている6割の中の2%。非常に少ない。全国の中で延べ宿泊者数は32位
- 交通機関の3分の1は自家用車、鉄道1割
- 目的はイベント、行事、祭りが1位。スポーツ2位。東京からスポーツをしに来たり、プロスポーツがブランドにもなっている。レッズ、アルディージャ、西武球団
- 3位は遊園地、産業観光が4位。産業観光は大きな特色。これから力を入れていきたい分野
- 再来訪の希望についての調査結果は、「また来たい」は97.4%。あまり知られていない埼玉だが、来てみたら近いしいいところと思われている
- 観光客の消費額は、客数の増加に対して1人あたりは減少傾向。一人当たり1,330円くらい。日帰りでもあり、お土産程度
- 観光庁の日本全体の結果とはかなり違う
- ブランド力ランキング等では、ご当地愛では最下位。「じゃらん」の調査でも、埼玉県の人に聞くと47位、最下位になる。愛着も47位
- ポテンシャルはある
- 首都圏に近い、交通網、県民自体多い
- 「行ってみたら良かった」資源も多い。
- 「平成百景」の中には埼玉から4つも選ばれた。その中の一つは小江戸川越。従来型観光でもポテンシャルはある
「世界遺産による観光産業の革新」(松田義幸さん、尚美学園大学 学長・理事長)
- 川越はポテンシャル高い。凄い面白い。今の時代にもあっているし、これからを先取りしていると思う
- どの観光地も世界遺産と言う視点を入れたらいい、というのが今日の趣旨
- 今の大学生の第一位の就職希望はJTB。
- 山形県の話
- リオの「環境サミット」伝説のスピーチ
- 6分間のスピーチで伝説になった小学生
「川越観光の将来について」(粂原恒久さん、小江戸川越観光協会会長/蓮馨寺住職)
- 自己紹介
- シンポジウムには慣れている
- 観光こそ経済、文化、教育まで超えて地域に力を持つ
- 浄土宗総本山知恩院の近くの仕事もしている。京都の情報も入るが、その中で川越を再生することは地域のよりどころと考えている
- 川越の観光客について
- 川越とは・・・
- 現在の川越観光の実態
- 広域観光について
- ひとつの街で文化施設を作る時代ではない。近隣都市が一つになって、広域で文化のレベルアップをする時代というシンポジウムを20年ほど前にやった
- 地域連携の観光の時代。広域観光を大いに推進したい
- 最後に・・・
- 川越のやすらぎ、和の心をどう発信すればいいか?
- 川越と狭山茶の関係。茶道と華道は川越が埼玉で最初に連盟が出来た。安らぎの原点はその辺にある。それが川越のよりどころでもある
「広域観光について」(松原仁さん、公立はこだて未来大学/観光情報学会会長)
- はこだて観光圏
- 5年後に新幹線が新函館まで伸びる
- 札幌まで伸びるのは遅れて欲しい、というのが地元の本音。函館で降りてくれるように
- 解決すべき問題は多い
- 市町に本当に連携する気はあるのか?
- しかし広域観光に求めるしかない
- あとは外国人観光客を増やすくらい・・・今が少ないので増やしやすいが、国内客数に比べて圧倒的に少ない。それでは食べていけない
- 函館市が強力なリーダーシップを発揮する(=大幅に譲歩する)必要がある
「早急な中国からの訪日客に対する広域観光策が必要」(大藪多可志さん、金沢星稜大学/観光情報学会副会長)
- 自己紹介
- 金沢から来た
- 日本全体をどうすべきかを観光情報学会の中で考えている。正解は非常に難しいが、今よりどうすればいいか? 少し良くするにはどうすべきかを考えるべき
- 石川県の紹介
- 石川県知事:「石川県は観光立県」と言う
- 多彩な観光資源・・・温泉、食(海と山に面する)、自然、歴史文化。バラエティに富む
- 32〜33年間、プロが選ぶ日本一の旅館である「加賀屋」がある。もてなしの心を県に伝授、県全体を引っ張っていく模範
- 石川県には「あえのこと=神様をもてなす」という習慣もある
- 石川県知事:「石川県は観光立県」と言う
- 日本では・・・
- 昨年、外国人は680万人くらい来日
- 韓国160万人、台湾102万人、中国100万人
- 韓国・台湾は大幅に減っている。中国だけは微増している
- 中国13億人の1割が富裕層。1億3000万人の富裕層。日本の人口に匹敵。母数は非常に大きい地域である。
- GDPその他が2ケタペースで伸びている。1980年代の日本に似ている。ちょっとした失敗は許されるし、そういう人は旅行願望がある。旅行に行けば、日本人の購買動向と異なり、何十万円と買い物する。100万円クラスの買い物をすることも。
- 外国人の売り上げが少ないと言う話は多かったが、日本の国内旅行者に匹敵することを目指すのか? 現状を補完する意味で誘致がいるのではないか?
- 昨年、外国人は680万人くらい来日
- 日本を訪問する外国人
- 従来:品物が精巧、買って間違いがない、日本の技術を見たい
- 文化力の発信が日本は下手?
- フランス・スペインは近隣にも同じ民族がいるのに訪れる人が多い
- 技術力ではなく文化力。ハードの方からソフトに移行しないといけない時期に来ているのでは? 文化力の発信。
- 従来:品物が精巧、買って間違いがない、日本の技術を見たい
- 観光情報学会としては
- 数値的に裏付けた政策���PRし、公表すべき
- 一つの例:中国で海外に出る5000万人のうち、日本に来ているのは100万人だけ
- 出国する意欲はあるのに日本は選ばれない。各国の訪問率が少なければ少ないほど、ポテンシャルがあるとも言える。プロモーションをもっとしては?
- なんらかの評価/検証ができるような数値を導入して行くべきときに来ている
- 統計データが異なっている、という話もある
- 最低限、統一的な計測の仕方をしき、統一したデータを扱うように。県によって数値が違っては比較も評価もできない
- 学会自身、それらの面で少し貢献が出来ればいい
- 国土交通省・観光庁の1,500万人構想・・・2013年までには厳しい
- なにしろ、近隣からの訪問者を増やすべき
- そのためには・・・文化力、プラス、中国・韓国の地方と日本の地方を結ぶ定期便ルートが絶対必要
- 日本全国が上海・北京に向いているが、そうではない。大連市ひとつとっても600万人、遼寧省で3,000万人いる。そういうところに、石川県なら小松空港と結ぶとやっていかないと、アジアの観光圏と結びつかない
- 外国人は必ず宿泊する。石川県は1人1泊の経済効果は波及効果も含めて5万円と計算。日本人の減少を中国人で補完すると考えないといけない
- 地方と地方を結ぶには、日本全国が必ず一つの市町村が一つの観光資源を持つと言うような、多彩な資源を持ち、広域観光を進めるべき
- 空港と観光地のアクセスも問題になる。新幹線の開通で危機感を持っているのは空港。2時間50分以内で移動できる人は空港ではなく鉄道を使う。空港をどう維持するかが目前の課題でもあり、最低限の維持費を得るためにも近隣諸国と地方空港の定期便開設は必須である。特に中国からの便を誘致する必要がある。
- 中国の力は今後増していくことも明らか。
- 言語の問題や情報機器を使った役割、観光情報学会としての役割がある
休憩
パネルディスカッション(コーディネータ:桑原政則さん、東京国際大学/武蔵観研会長)
- 笹森さん:ご批判もあったので誤解がないようにいくつか追加を。観光圏について、函館からまわりに客を送るのは無理と言う話もあったが、周りの地域と仲良くなれない典型例。ゼロサムだと思っているからそうなる。まずは実人員を増やす、色々なフックでひっかけた人が当該地域に来る数を増やす、落とす額を増やすと言う発想。函館だけでひっかからなかった人が函館にも来るようになる、とんがった趣味を持つ人も含めて地域に来るようになる。今までは一泊二日でどっかに行っていた人をもう少し捕まえる。その間にどうやってお金を落としてもらうか。悲観的にならずに、お互いにお客を送りあえると思わないとやっていけない。成功しているところはそこに気付き始めている。2泊目のお客様を相手の地域に紹介してあげたり。これは「日曜日はすいている」という話もあったが、送るのは日曜日の御客なので宿でもなんでもすいているところのお客を送る。送られた方は素通りされるよりは立ち止まってもらえる。当該地域に雲のように滞在して貰える時間を増やして、もう1食、もう1泊お金を使ってもらえるプログラムを持てるか。函館は今回の15カ所の新認定で1位だった。函館で独り占めしていたお客を周りに送り出すと言う寛大な計画で評価が高かった。あとは現場でどうできるか。今の松原さんみたいな、ゼロサムでやっていると思っている人がいると計画が進まない。是非もう少し広い目で見て欲しい。
- 笹森さん:もうひとつ。海外便が増えたらという話だが、まずはチャーター便だと思うが片方向ではそうした路線は開通されない。日本人も行かないと。帰りが空っぽでは50%以上の搭乗率にならない、日本人がいかに向こうにいって観光なりビジネスなりをするか。韓国のアシアナ航空が日本海側沿いでたくさん路線を持っているのは、インチョン経由で来て成田より便利と売っている。ヨーロッパ便に接続する、という話をでっちあげて路線を増やしている。実際は成田と変わらない、つなぎが悪いので。まあ、先がないとお互いに航空路線と言うのは出来てこない。そういうことも含めて、こちらだけでなく向こうの問題と一緒に解決しないとうまくいかない。
- 桑原さん:観光情報学会の会長、副会長へのコメントだった。松原さん、ちょっとコメントを。
- 松原さん:「悲観的になってはいけない」とおっしゃる通り。私が悲観的なのではなく、函館がそうなりかねない、ぬか喜びしているところもあるので認定だけでは変わらないよ、という問題点を上げた。おっしゃる通り、ゼロサムではなくプラスにする発想が非常に大事と思う。先ほどもちらっと言ったが、直前まで仲が悪かったこともあり協議会もまだあまり機能していない。そういうときに仲間になるには危機意識の共有が手っ取り早いので、今は危機意識を煽っている。函館の研究会は「函館の観光が危ない!」というシンポジウムで危機意識を煽っている。良くも悪くも北海道人はおっとりしているところがあるので。せっかく認定していただいたので、結果的に函館にもメリットがくるようにしたい。
- 松原さん:あと、多くの方は知らないかも知れないが函館は国際空港で、ソウル便があるが、ソウルからは人が来るが日本人が行かない。例えば今だと韓国から2泊3日でゴルフ4コースを回る、というツアーもあったりする。大人気だが、それだけではだめなのでソウルだけではなく田舎の都市との連携も考えないといけない。
- 桑原さん:大藪先生のコメントを取ってしまったような。
- 大藪さん:先ほどは舌足らずなこともあったが。日本人が中国を訪れるのは130万くらい、中国日本は100万くらい。日本⇒中国がかなりオーバーしている。小松に限れば日本人の方が行くのが多い。そういう意味でも日本に来てほしい、という視点で話した。
- 稲葉さん:あまり時間はないのでいくつか気付いたことを。広域観光については、隣の県同士でも観光は微妙に利害がある。ある会議では、神奈川県が途中から「お金が出せない」と出てこなくなったと思ったら別の会議を一生懸命やっていたりする。非常に難しい。最近聞いた話では、群馬県の旅行業者は一生懸命、埼玉でのツアーを考えている。それは新潟県が群馬県のライバルで、今は便利になりすぎて、群馬は通過されてみんな新潟に行く。そこで群馬は埼玉でうろうろして時間を稼いで、群馬に泊ってもらいたいと考えている。そういうツアーを作っている。そこでは泊りが県内ではないと言う問題はあるので埼玉と群馬は連携できるが、新潟は格が違いすぎてなかなか連携できない。広い心、広い目でみんながwin-winの関係が作れればいいが、そういった実態がある。
- 稲葉さん:情報学会と言うことで、埼玉はあまりよく思われていないところもあるが、最近はとにかくマスコミに載っちゃおうとしている。最近はB級グルメのことがあり、全テレビ局が2〜3回取り上げてくれた。あとはアニメ。『らき☆すた』、鷲宮神社は大宮に次いで2位になった。あそこを中心に、春日部のクレヨンしんちゃんとかも。NHKの全世界向けのニュースでも流されたりしていて、とにかくマスコミに載ろうとしている。例えば昨日も、秩父のポピーがちょっとNHKのニュースに出たら観光課にガンガン電話が来る。とにかくマスコミに載る、目立つことを考えている。それが観光の本流ではないと言われることもあるが、遅れを取っていることもあり目立つことを第一にしている。フィルムコミッションは日本で今第一位。映画・ドラマの撮影が非常に多い。そういうところが観光地として、秋田や韓国もそうだが、これから期待できると思う。
- 桑原さん:笹森課長に埼玉県の観光にちょっとご意見をいただきたい。埼玉は最下位なのでこれ以上落ちることがない、担当部課は安心。それをもっと上なんだと言うとがんばるようになるので、そういったことも含めて。
- 笹森さん:川越はじめ魅力のある素材がある。どういう風に、どういったお客様を呼ぶかをもっと考えるべき。少なくとも外国人のお客様は最初に東京に泊る、その中でも歴史文化では鎌倉や浅草寺に行く。そこで川越にこんなにたくさん古い歴史も文化も街並みもある、という売り方はしないのか。東京のハイエンドのホテルのコンシェルジェを籠絡すればけっこういけると思うし、外国人が増えると日本人も見直してもっと来ると思う。川越はこれから売れる可能性が無限にある。もうひとつ、まだ2回目、この辺しかうろうろしていないが、学会の皆さんも含め、夜どこで飲んでいるのか? 大人の皆さんは夜をどうやって過ごすのか。これがもう少しなんとかなると、「遅くなっちゃったから泊ろうか」となるのでは。「ここら辺だよな」というのがない。川越都民、埼玉都民が電車を降りて、もう少し駅前で時間を過ごせる雰囲気があると、観光も含めて滞在時間が延びるのではないか。「お店開け」は難しいが、夜のスポットを紹介する売り方もある。まずは東京に、潜在的に川越に呼べるお客様はまだたくさんいて、未開拓。1回来て、街並みを見て帰っちゃう人ももう少し川越らしさを体験して、夜のご飯まで食べてから帰さばお金を落とさせられる。それは住んでいる人が使うお店でいい。もう少しやりようはある。まだ数時間しかいないので確たることは言えないが。
- 桑原さん:松田さんお願いします。そのあと粂原さん。
- 松田さん:2つだけ。レジャーを通じて観光と関わっているが、「あ、そうか」ということを。例えば「静かさや 岩に染み入る蝉の声」この17文字だけで100万のお客様が来る。リピーターも凄く多い。「五月雨を 集めてはやし 最上川」。この17文字だけで真冬に川下りをする人がいる。『源氏物語』がなければ今の京都ではない、『古事記』と『万葉集』がなければ今の奈良ではない。川越は何をするか。先を読んだ方がいい。ターシャ、と言う人がガーデニングの人気を盛り上げた。ここは何か。新しい働き方の研究会で、定年した人が生きがいとしての労働で、ライフスタイルを使いたいという。自由時間とは失業時間でもある。労働を通じていいことをしたい、と言う人が要る。そのポテンシャルをなぜ使わないのか。そのときの17文字にあたるのはなにか。英文学者の先生が「edonization」ということを世界中で説いている人が要る。人に迷惑を書けない、環境に迷惑をかけない、小さく、小さく、小さく、というもの。この中心価値で、旧川越藩をどう活性化するかと言う勉強会があるという。もうひとつ、女は幸せな社会はいい社会、それを良くするのはご住職。法然は女性を幸せにした、女性に尽くした人。そのご住職だから、ここは活性化できる。観光協会の会長なんだから。
- 桑原さん:ものがたりにひきつけられる、ということ。では粂原先生。
- 粂原さん:身に余る光栄な言葉をいただいた。確かに法然は800年も前の方だが、出家をするときに母親を残して比叡山にのぼり、その途中で母親はなくなった。そのときに「お母さんのそばにいてずっと見てあげたかったけど出家の身であるので、悟りに至ることが母に尽くすこと」と言って戻らなかった。75歳のときに京都から四国に流されたが、そのときに上人は大阪の船で大勢の遊女に向って「できるだけ早く環境を変えて欲しい、できなかったらできないなりに大きな御仏によって活かされていることを感謝して暮らして下さい、いつかは誇りのある身に戻ってください」と言われた。私も法然セミナーでパネリストをするときに法然の話をすることになっているので参考にしたい。川越に戻すと、広域と言うのは非常に必要。川越には50御寺があり、同じくらい神社がある。これがもっと開放的に、単なる建築ではなくどういうことを伝えようというのか、心の部分を解放したらいい。山門に書いたっていい。生きる知恵のアピール、本来の仏教の位置に立ち返って欲しい。もちろん神社も。神社・仏閣は仲がいいのでいけると思う。同時に、我々から見ると阿弥陀仏の素晴らしいお寺が凄いある。それだけで川越、坂戸、鎌倉、とジャンル別の観光ができる。曹洞宗なら座禅、あるいは御釈迦様の仏像とかでもポイントになる。そんな意味で、ジャンル別の観光はこれから非常に期待できると思っている。川越の各お寺を公開した「古都巡礼」という本を作らせてもらったこともある。「うちは修行寺だから観光客に来られても困る」というところまで出してもらった。それだけでなく、商品や着物、いろんな切り口で広域観光の可能性は非常に大きい。あるいは時代別のジャンル分けもある。江戸文化、平安文化、明治文化。川越の蔵造りは明治なので、会津喜多方とリンクすることもできる。いずれにしても今日の皆様の専門的な、素人から見るといいご示唆をいただいた。心から感謝すると同時に、大勢の参加者の方が真剣に考えている、ということを大きな心の糧としたい。これからも一緒に、観光を通じて地域の発展、文化の進展につながれば。人間も街も見られると綺麗になる。皆が注目していれば学生も勉強するようになる。
- 桑原さん:ここでフロアから意見表明があれば。
- ?:観光情報について。川越の街で思ったが、川越以外のところ、周辺の町があると言われているが。確かに埼玉県では色々PRしているが、ある限られたところ。今、川越の古い町の中でもいくつか空きがあるところ、ああいうところに埼玉県の他の街のアンテナショップを作れば、川越の街の変化にもなるし、観光客が次に行くところの情報にもなる。川越と他の街のリンクにもなる。わけのわからない業者が入って町がおかしくなるくらいならそういうものを上手く使って、川越で他の街の情報が得られる、川越も街の差別化が出来る。そういう検討もできないか?
- 稲葉さん:カガミヤマ酒造さんの跡地を今改装中で、10月くらいからまさに今おっしゃったような、県内のアンテナ/観光案内をする。
- ?:僕の思ったところだが、あの場所と言うよりも、街の中、菓子屋横丁なんかとリンクする方がいいのでは。あそこはあそこで県の主導でやる以外に、北本がトマトで町おこしをしようとしているが、古い町の中でそういうB級グルメと合わせるような、自由にやれるような、街の特徴がみられるようなものがいるのではないか。県ではなく市町村レベルで。
- 稲葉さん:県は市町村の集合。北本はB級グルメでけっこういい順位になった。川越の中でももっといい場所で、ということでできればいいとは思う。カガミヤマ酒造さんのところは県がやるということで相談させていただいている。それが広がればいい。確かに皆さん川越のことはよく知っているが、広域連携と言うことでぜひ、県内いいところたくさんあるので、県内連携できるところを探っていただければ。
- 北大経済学部・関口さん:川越と関係なくなって恐縮だが、大藪副会長のご指摘が重要なので笹森さんにお願い。観光関係の議論で必ず入れ込み客数や宿泊客数の議論になるが、その辺の数字は極めて信頼性が低い、どのくらい調べて集計されているのかよくわからない。それぞれの調査で決まってはいるが、出てくる数字はどれに基づくのかよくわからないで議論している。これは学会としても努力しないといけないところだが、学術研究の問題以外に統計データの収集組織、あるいは仕組み、制度が十分に整備されていない。その辺の現状と今後の御考えを。特に速報性がって、ある程度限界のわかる統計の取り方を何とかお願いしたい。
- 笹森さん:確かに観光に関する統計データは非常に脆弱。宿泊統計は今はじめているが、H19にはじまったばかり。全国的に、従業員10名以上の施設に悉皆をかけるのはH19からで、それもデータが古いものになっていた。これらに関しては非常に問題意識を持っている。観光庁は一昨年の10月に出来上がってから相当努力している。宿泊統計については都道府県までしか細分できていなかったが、今年からは市町村別までいける。公表時期も4半期ごとになる。8月末〜9月には4〜6月のデータが公開できるようになる。消費額も4半期ごとにやり、公開するようにする。速報性と密度がだいぶ上がってくると思う。入れ込みは都道府県の調査となるので、ずっと右肩上がりで数字が推移する、非常にユニークな結果になっている。これは調べるポイントを増やせばお客が増える。近年はみちのえきが出来るたびにお客が増える、どうして増えるかと言えばみちのえきの完成。調査のやり方をH.22年度から全国統一にして、同時に調べるポイントが増えるとのべが増えるが、どれくらいお客様が周遊されているかについて、これは抽出調査になるがアンケートで調べて、例えば金沢だったらどこ、兼六園と21世紀美術館と・・・と数字が出てくるように。述べ客数がn人ならそのm分の1がわかる、と言う風に。ただし少しこぼれる都道府県もあるが、体制が整い次第標準に従って貰えるとのこと。H.22年度は観光について変わる年。これからはヤマカンではなく、科学的な産業に変わる。
- 稲葉さん:入れ込み客の件は県から見れば不満もある。今の客数は各市町村の出したものを積み上げている。新しい統計はポイントを限定することになる。確かお祭りは入らないとか、小さい市町村はゼロ人としか出せなくなる。それはちょっと違うんじゃないか。例えば体育館に運動に来た人も入らない。それしかないところもゼロ人になる。それは正しいのか。それと、今おっしゃったようにパラメータを調査する。1人が何カ所県内を回ったかを調べる。10カ所回るとすれば100人の入れ込みは10人となる。それを毎年やるのは非常にお金もかかる。市町村や県にとっては負担が重い。これまでの積み上げてきたやり方と並行しないといけないとか、それを今年中に市町村と話し合いながらやる必要がある。
- 松原さん:学会の宣伝をするわけではないが。学会長就任挨拶の中に入れ込み数をどの程度まともに受け取っていいのか、が学会のテーマとして書いている。真面目に調べればコストもかかる、豆に調べればお金がかかる。でも、入れ込み数が函館市の計算方法と・・・函館市は今北海道で3位で旭川に抜かれつつあるとか言っているが、数式が違うのに比べるのに意味があるのか。マスコミに大きく書かれるが、全然式が違うので何が危ないのかすらわからない。入れ込み数は考えない、宿泊数だけにするとか、お金かなんかをベースにするのが個人的には良く思う。それを含めて、この学会で時間をかけずに真剣に議論すべき課題。
- 一主婦さん:この会場に来るのに620円のバス代をかけている。今日は凄い勉強になった。町おこしというのは本当に人起こし、特に女性のパワーは凄い。女性を存分に使わないと嘘だ。10/2に「千の風にのって」の方を川越に呼ぶが、立ちあがったのは主婦。その前に3人の女性が函館に会いに行った。そのときに、「千の風サミット」を大沼公園でやった。しかし函館の方はあまり来ていなかったが。四国からコーラスグループが来て、青森の女性、地元の学生も歌った。これから世代を超えた観光事業が大事と考えて、呼んだ。そのときに函館で感じたのは、あんなに立派な公園が町にあるから、公園の中で観光客をもてなそうと言う気運が凄いあった。函館ってのは全国から人が集まる面白い町と思ったが、高齢者には不向きでもある。坂が多い。なんとか高齢者に向いた年にしないといけないと思った。粂原先生を私は尊敬しているが、長い間ここで辻講釈をしたり、落語の講演会をしたりもしている。私もこれからいい川越にしていきたいと思っている。川越は旅館も少ないので、ホームステイ制度を入れる等はいいのではないか。
- 桑原さん:最後に川越、edonizationにひっかけて、松田学長、ソフトパワー戦略を。
- 松田さん:女性が幸せな社会はいい社会、不幸せな社会は悪い社会。これはつくばから実践女子大学に移って、実践女子大学を作った下田先生が『源氏物語』講義が名物講義だったのだが、女性を元気にする理論を考えてくれと言われて取組んだテーマだった。現代人の先祖はアフリカに住んでいて、昔は全部女系だった。女性は28日×13日+1日、生理の月ですべての農業を支配していた。時間を支配するということに男は太刀打ちできない。季節の行事を支配していたので神様と一体だった。女性が不幸せになるのは悪い社会、というのが『1Q84』のテーマ。『1Q84』を母権制社会から読むと、今は悪い社会とわかる。全部、自然の法則に従って男の悪い社会を殺していく。ただモデルが許せないのだが、そのモデルは江戸時代の忠臣蔵もそう。話を戻すと、edonizationというのは今、世界が注目している。25%削減するとか言わずに、edonizationを世界モデルとする、と川越が言えば、世界のバチカンになれる。と、言うことで。学生運動の頃からずっと考えている。
- 桑原さん:観光は平和を促進する産業。女性が幸せになる産業。女性が幸せになり、世界が平和になるために観光がある、と。ファジーな結論になりましたが、長い間ありがとうございました。
以上がパネルディスカッションの記録です。
続いて、、岡本健さんの口頭でのご発表「情報社会における観光コミュニケーションのあり方に関する一考察」の記録です!
「情報社会における観光コミュニケーションのあり方に関する一考察:埼玉県久喜市鷲宮神社周辺地区(旧鷲宮町)と滋賀県犬上郡豊郷町の事例分析から」(岡本健さん、北海道大学大学院 国際広報メディア・観光学院)
- 埼玉県の皆様、特に鷲宮町の皆様には大変お世話になっている。恩返しができれば。
- 観光を通した交流人口の拡大が期待されている
- 入れ込み客数、経済波及効果への注目
- 旅行者はアイディアを持ってくる可能性がある・・・ツアーデザインに旅行者をどう巻き込む?
- ICTの普及・・・地域による発信の前に旅行者が自主的に来る。アニメ聖地巡礼がその一例
- ホストとゲストだけでは説明しにくい現象の存在
- 観光に関して、コミュニケーションをどう捉えられる?
- アニメ聖地巡礼を例として
- アニメ聖地順英とは?
- 前回発表から:
- 聖地巡礼者にアンケート
- 聖地巡礼を具体的に見る
- 事例研究:埼玉県鷲宮町
- らき☆すたのOP背景
- 初もうで客が13万人⇒42万人に増加
- ストラップなどのグッズ販売。販売所を街中にばらばらに配置することで街をぐるぐる回ってもらう・・・個人商店主との交流
- 地元の祭りに地元の個人商店主から「みこしをだしては?」との提案
- 質疑
- 北大・伊藤さん:実は木村さん(1つ前の発表)と岡本さんの発表を比べると非常に面白い。木村さんは「どこで撮影され、どこがテーマか」が発信されないと・・・というメッセージ。岡本さんの場合は、勝手に読者がネット上で発見して、あるマニア、あるいはオタクが見つけ出した喜びでブレイクした。FC、あるいは漫画のFCが出来たとき、情報と言うのは明確に出すべき? 出さないべき? 日本の驚愕の読者、90%以上が男あるいはオタクなら出さないのがいいのだろう。違うマーケット、木村さんのところなら出した方がいいのだろう。オタクマーケット分析の代表として、出さないところはポイント?
- ばんてんリゾート・釼持さん:秋田の観光事例で羽後町がある。あのモデルはどう考える? あれは原作がないので各地に応用可能かと思う。萌え系聖地巡礼のテンプレートになるかもと思うが・・・
- 芝浦工業大学・村上さん:先ほど巡礼記のお話があったが、外国人の方も見つけていらっしゃった方がいるというのはどうやって見つけられているのか? また、海外で日本のアニメは人気と思うが、日本のアニメを好きなファンが海外から日本に来ると言うことで、外国人の集客もアニメから見込めるか?
- A:一つにまとまる質問。第一の方について、日本語を勉強している方が多い。そのまま読める。あとは、最近は翻訳サイトが割かし正確にやる。ちゃんとした日本語なら訳せるらしい。たぶんここが課題になるが、そういう方はかなり熱心な方。そのあたりを観光情報学会、その辺の翻訳サイトの精度があがったりして出来るなら海外の方が勝手に見つけることも可能だろうし、そういったツアーをやってどれくらい客が来るかのテストケースもやり必要があるのかと思う。
岡本さんのご発表は北大の機関リポジトリ・HUSCAPでたびたびスライドや予稿を読ませていただいていたのですが、初めて生で拝見することが出来ました!
70枚のスライドを20分で、ということで疾走感が凄かったですが、時間内にぴったり収められていて(今回は練習なしとのことでした!)、質疑も白熱していて素晴らしかったです。
バッテリの関係で大変残念なことにメモが取れなかったのですが、岡本さんの前にご発表された名古屋大学の木村めぐみさん(「撮影地における観光現象と情報」)の映画の撮影地を題材にされた研究とちょうど対称を成していて、それもまた議論が盛り上がった一因なのだろうと思います。
岡本さんはじめご挨拶させていただいた皆様、本当にありがとうございましたm(_ _)m
観光情報学会は今回はじめて参加させていただいたのですが、午前中の発表もそれぞれ興味深く、大変楽しかったです。
会場の川越市蓮馨寺とその周りの町並みもとてもいいところで・・・学会発表と出張くらいしか観光をしない研究室ひきこもりであるところの自分ですが(苦笑)、川越はまた行きたいと思いました。
とりあえず、今回は学会会場に持ち込むのが恥ずかしくて買えなかった菓子屋横丁の日本一長いというふ菓子(「水曜どうでしょう」に出てきたもの)を買いに行きたいですね!
しかしそろそろノートPCの電源の問題をどうにかせねば・・・バッテリ追加購入かなあ・・・