さかのぼること17年前、和歌山県で7000万年前(後期白亜紀)の海の捕食頂点に立つ「モササウルス」類の化石が発見された。
だがこのほど、そのモササウルスは新属新種であることが判明し、「メガプテリギウス・ワカヤマエンシス(Megapterygius wakayamaensis)」と正式に記載されたそうだ。
「ワカヤマソウリュウ(和歌山滄竜)」との通称で呼ばれる古代の海の王者は、モササウルスとしては珍しく両眼視ができ、さらに手脚のヒレが異常に大きいというひときわユニークな存在だ。
それどころか、モササウルスでは唯一背ビレを持っていた可能性まである。
こうした特徴は、モササウルスの泳ぎ方に関する従来の説をくつがえすかもしれない。なんとその泳ぎはペンギンやウミガメに近いものだったと考えられるそうだ。
新属新種のモササウルス類「ワカヤマソウリュウ」
ワカヤマソウリュウのほぼ完全な骨格は、2006年に当時京都大学の博士課程の学生だった御前明洋氏によって、和歌山県の有田川町鳥屋城山で発見された。
その後、京都大学、和歌山県立自然博物館、シンシナティ大学との共同調査によって、化石は「モササウルス」の新属新種であることが判明。
このほど「メガプテリギウス・ワカヤマエンシス(Megapterygius wakayamaensis)」と正式に記載された。また発見地にちなみ、「ワカヤマソウリュウ(和歌山滄竜)」との通称も与えられている。「和歌山の青い竜」という意味だ。
モササウルスは、後期白亜紀(7000万~6,600万年前)の海を支配した頂点捕食者だ。今地球上にいる生物で言うなら、ヘビやトカゲに近く、ヒレ状の足とサメのような尾ビレを持っていた。
だが、種によっては10mに達した体をどのように使って泳ぎ、どのように狩りをしていたか解明するのは、簡単なことではない。
ワカヤマソウリュウはモササウルスの泳ぎの常識をくつがえす
米国シンシナティ大学の小西卓哉(コニシ タクヤ)准教授は、「魚類からペンギン、ウミガメにいたるまで、現生の動物の中にこのような体を持つものはいません」とプレスリリースで説明する。
だがその骨格からは、ワカヤマソウリュウの泳ぎがモササウルスの常識をくつがえすものだろうことが明らかになっている。
従来の説では、モササウルスは尾ビレを左右に振って泳いだとされてきた。ところが、ワカヤマソウリュウはウミガメやペンギンに近い泳ぎ方をしていたようなのだ。
その脚ヒレは、ニュージーランド、カリフォルニア、モロッコなど、世界各地で発見されたモササウルスに比べて異常に大きい。また特徴的なことに、後の脚ヒレが前よりも長い。
こうした特徴からは、ワカヤマソウリュウが前脚ヒレを方向転換やブレーキのほか、前に進む推進力を得るためにも使って���たらしいことがうかがえる。
また脊椎の棘のような突起も特徴的で、イルカやネズミイルカによく似ているという。このことから、背筋が発達しており、前脚ヒレの動きをサポートしていただろうことが推測できる。
ユニークなのは、モササウルスとしては珍しく両眼視ができたと考えられ(モササウルスでは2例目)、さらにこの仲間では唯一イルカのような背ビレがあった可能性まであることだ。
現代のクジラ類にはない背ビレは、潜水や浮上の補助として使われたのかもしれない。そしてサメのような尾は、おそらく前に進む推進力を生むためのものだったろう。
これら5つの流体力学的表面がどのように使われていたのか気になります。どれが操舵用で、どれが推進力用だったのか? モササウルスの泳ぎは、私たちの理解をくつがえしています(小西准教授)
この研究は『Journal of Systematic Palaeontology』(2023年12月11日付)に掲載された。
追記:(2023/12/18)本文を一部訂正して再送します。
References:UC paleontologist describes Wakayama ‘blue dragon’ that ruled prehistoric waters off Japan | University of Cincinnati / 有田川町産出のモササウルス類は新属新種(PDF) / written by hiroching / edited by / parumo
なぜ尾鰭周りにヒョウ柄入れたのか
何かポップな柄だなw
必ずしも絶滅の要因じゃないだろうけど現存してない泳ぎ方なら、その泳ぎが生存に不利に働いてた可能性も有る訳だ
爬虫類版のシャチみたいなもんかね。
世界はまだまだ未知と不思議に満ちている!
その未知と不思議が日本にもあると思うと、わくわくが120%になっちゃうね
モササウルスってカッコいい魚竜なのに今ひとつ人気が出ないのは
やっぱり名前がモサいからか?
>>5
モササウルスは魚竜と同じ海生爬虫類だけど魚竜ではないよ。
外見的には魚竜の方がより魚に近い形��してる。
魚竜はモササウルス類より早く出現し早く絶滅した。
記事の新種は復元図を見ると魚竜っぽい姿をしてるけど、
これは魚竜が絶滅して空いたニッチに入り込んだ結果かもね。
尾びれの下部が長いのは「高速型の特徴であり時に海面からジャンプするタイプ」なのですが(一部サメなどに見られる)、この骨格からどうしてこの絵が描けるのか疑問です
母岩から尾びれの輪郭などが見えたのでしょうか?わかりかねます
>>8
言ってしまうと復元図を描く人の気分も多分に入る
例えば「ゾウの頭蓋骨」からサイクロプスが連想されたように、軟骨や筋肉は残らないので
恐竜などを含めて、本当の外見なんて誰にもわからない
ただ、現代では筋肉の付き方と骨の形状・強度などはある程度関連性がわかってきているので
いまゾウの頭蓋骨から復元図を描かせたら、(ロマンはないが)サイクロプスにはならいし
筋肉の付き方から、その部位に何かしらの部品がついていた可能性などもわかるようになっている
それでも細かすぎるモノや軟骨や筋肉、皮膚などは残らないので、外見がそっくりとは言えない何かになる
あとは、生態系の「どう過ごしていたか」の考察によって形状がある程度は決まっていく
記事にあるように「ウミガメ」では泳ぎ方がのんびりだが、「ペンギン」ならばある程度素早く泳いでいた可能性があり、
そこから「ウミガメではなくて、素早く泳ぐペンギンがいいな」という願望から高速型の形状にされている可能性はある
よーは、外見の3,4割ぐらいは気分が入る
>>8
>>母岩から尾びれの輪郭などが見えたのでしょうか
この種ではないが、ヨルダンの地層からモササウルス類(プログナトドン)でそういう化石が発見されている。
また、その発見以前からモササウルス類の尾の先端はこのような尾鰭状になっていたのではないかと言われていた。尾椎の上に伸びる突起(神経棘)と下に伸びる突起(血道弓)の方向から、尾の先端部分が下に曲がっていたと思われ、これは魚竜と同様の構造であり、魚竜は曲がった部分が尾鰭の下半分を構成し、尾鰭の上半分は骨が無く軟組織のみで構成されている。これはちょうどサメの尾鰭と上下逆の構成になっている。サメは尾の先端の骨の曲がりが小さいものは軟組織のみの尾鰭の下半分が小さく尾鰭が上下非対称になる傾向があるが、既知のモササウルス類には尾鰭が上下対称のサメほど尾の先端が大きく曲がっているものがいないので、上下非対称の尾鰭が復元されている(軟組織のみの側と骨のある側がサメと上下逆なので上半分が小さくなる)。これは先述のヨルダンの化石や、尾の先端が大きく曲がっている魚竜では尾鰭が上下対称になることで支持される。ワニは尾の先端に上に広がっている部分があるが、あれがもう一歩進んだ状態がモササウルス類で、さらに進んだ状態が魚竜で上下対称の尾鰭を持つものと考えると理解しやすいかも知れない。
この種については尾の先端の骨が見つかっていないようなので、実際の尾鰭の上下対称度合や開いている角度が復元図と異なる可能性はある。
>>8>>10
>>15で述べられていることから、この尾鰭の形態はむしろ低速型のものとなる。アオザメ・ホホジロザメのように高速型のサメは尾鰭の下葉が発達しているが、それによって上下対称性が高くなっている。一方、この復元の尾鰭の形態は下葉が発達してこの形態になっているのではなく上葉が発達していないためこの形態になっているものなので、上下対称性が低く、サメであれば尾鰭下葉が未発達のものに相当するものなのだ。
高速と想定するならば上葉が大きく上下対称性が高く、さらに上葉と下葉のなす角度を大きくするところだが、モササウルス類ではそのような状態を示唆する標本は無いので、根拠が無くなってしまうためそうしなかったのだろう。
また、クジラ類・魚竜で見られるが、高速遊泳に適応すると首が短く可動性が低くなる傾向がある。水の抵抗でぐらつきにくい方が有利であるからと思われるが、本種は他のモササウルス類と首の長さがそう変わらない。ここから、他のモササウルス類と高速遊泳性においてはあまり差が無いことが伺える。前後肢の鰭の特異性は、運動性の違いを生むものだったのだろう。
モササウルスって想像図がもっとワニっぽい感じだと思ったけど凄くイルカっぽい
>>9
私は、イクチオサウルスの間違いじゃないか?と思いましたよ💧
何かしっぽの模様がカワイイ(´∀`)
ほんとにこうだったら獰猛な肉食でもイメージ悪くないかも
自分パンダ柄のシャチも憎めないので
>>11
個性を出すためにウミヘビこ模様にしてみたらしい
>>11
筒井康隆御大はエッセイで「ティラノサウルスの実物は誰も見たことがないので、もしかしたら頭は紺青に白の星模様・身体は赤と白の横縞かもし��ないし
鳴き声は“ピーヒョロヒョロ”なのかもしれない」と独自の見解を述べられてました。
青い竜だと蒼龍を当てたくなるけど、博物館の発表が「カヤマソウリュウ(和歌山滄竜)」なのね。
>>13
蒼はくさかんむりで、本来は植物のあおさを表す
滄はさんずいへんで、本来は海のあおさを表す
だから厳密には「和歌山の”海の様に青い”竜」
ただ、現代そのあたりの使い分けはほぼ無に等しい
準学術的な和名ということで漢字の字義を吟味したんだろうと思う
発見者のお名前が読めなかったので��索したら御前と書いてみさきと読むのね(食いつくところじゃない)
白亜紀を生き抜いた猛者(もさ)