「ChatGPTでプログラミング」はアリ--記号1文字の間違いでバグになるような世界こそ,コンピュータにやらせよう - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2023/4/12 と書いたあと,ChatGPTでウイルスプログラムを作らせる試みがあることを追記した。
悪いヤツはとことん悪いんだなと,改めて思った。これはもう出来心や欲望を抑えきれず,といったレベルではありえず,改心もしないのではないか。
罪を犯した人をさばく現在の仕組みは,ある意味で正常な人たちの判断による。犯罪を犯した人がまだ正常な範囲にいれば,さばく側の常識と触れ合う部分があり,改心の道も開かれる。しかし,すでに正常ではない域に入り込んでしまっている場合,正常に戻す方法はないのが現状だろう。物理的な疾病でも,早期に切り取れば完治する可能性はあるが,タイミングを誤れば進行してしまう。まして,精神的な病は,部位を切り取ることもできず,進行してしまう。
裁判所は,ある意味でこの「正常」と「異常」の戦いである。もちろん,「異常」と言っているのは,「正常」と目される側からの見方であり,「異常」側には自分たちの常識がある。「ルール」という線引きをどこで引くかも,実は基準がない。
裁判官も検事も,常に「異常」と向き合っている。たいへん精神的にも負担のある仕事だと思う。何しろ,自分たちの考える「正常」や「常識」が通じない人を相手にしているからである。そこで判断の基準,ルールとなるのが,「法律」なのだが,これがまた多くは玉虫色に書かれていて,どのようにでも解釈ができるらしい。また,法律に書かれていない案件については,法律で判断できなくなる。さらに,過去の判断である「判例」もルールの1つにはなるが,これも果たして正しい判断が過去に下されたのかどうか怪しいし,まして時代が変われば判断基準も変わるという厄介な問題がある。
法律家になる人は,法律も判例も多くのことを覚え,その資格を得る。しかし,いったん現場に出れば,法律に記載のない事例であったり,判例が非常に古いものだったり,またあまりにも新しい事案で判例がないものばかりだろう。結局は,自分の常識の範囲で判断せざるを得なくなる。最終的には複数の裁判官による多数決で判定される。
さらに,民間の裁判員が加わると,話はさらに複雑になる。裁判員は一般人であり,被害者に近い立場にある。したがって,被告を罰する側に立つ人が多いのではないか。しかし,有罪側に加担した場合,被告やその関係者からの報復の危険性がないとも限らず,あえて無罪と判断する場合もあるだろう。ここでも,常識の線引きができない状況にある。
人の常識も,自分の命がかかっている場合は支えにはならない。相手から攻撃を受ければ,「暴力反対!」と叫んで抵抗しないかといえば,そんなことはなく必ず防御するだろう。その次には,ひょっとしたら相手を殴るかもしれない。その打ちどころが悪くて相手がケガをした場合,正当防衛か傷害か,という厄介な判断が生じてしまう。反撃の方法にしても,素手で殴るのか,棒で殴るのかで判断基準は変わる。しかし,反撃しなければ死ぬかもしれないと考えれば,人の行動はとんでもないものになると予想される。
高齢者によるペダルの踏み間違いや逆走が社会問題になっている。「うっかり」とか「気づいたら」とかの釈明は聞き飽きた。判断する側も「また同じような事例か」とうんざりしているのではないだろうか。
契約書は玉虫色では問題が生じる。誰が読んでもこれが正しい,ということをまとめてある。実際の契約書が,膨大な文字数になるのはある意味で仕方のないことかもしれない。
一方,法律はさまざまに玉虫色に解釈できるのが現状である。これを,誰の目から見ても抜け道がないようにすることを,AIに提案してもらってはどうだろうか。
たとえば問題になっている憲法第9条にしても,おそらく専守防衛の線引きに関して考えなければならない事例は数千にも及ぶだろう。ChatGPTなら数分でこの事例集を出してくるのではないか。そしてChatGPTにどこまでを線引きするかも判断させたたたき台を作り,その正当性を議論した方が早いのではないか。
かつてなら,この第9条問題だけで終始してしまうだろうが,続けてほかの条文についてもどんどん事例集を作らせてみてはどうだろうか。少なくとも,ネット上に話題として上がっている案件については判断の対象とするだろうから,数日あれば全部の法律についての事例集ができあがるのではないだろうか。
そして,抜け道も見つかるだろうから,そこを補強する条文案も出させればいい。正直,「六法全書」だけを拠り所にしている法曹者よりも,より多くの判断基準を持つことができるのではないか。
そして,かつてSF映画の中にあったように,コンピュータ自身が法律の矛盾に気づき,自己矛盾を肯定できなくなって活動をやめる,などということも起こるかもしれない。あるいは,別のAIとの戦いになるのかもしれない。
囲碁や将棋の世界でも,コンピュータがどんどん実力をつけているが,今のところ最後は人が勝利している。犯罪者もAIに対して勝利するかもしれないが,指し手もキーボードに向かっていて姿が見えない状態ではなかなかいい勝負になってしまうのかもしれない。つまり,犯罪者のコンピュータまではたどりついても,それを操作している人物にはなかなか到達できないからである。
犯罪者もAIを利用する時代になった。情報発信地探索にもコンピュータを使わなければ追いつかなくなるだろう。海外からの攻撃も受けている状態だが,少なくともまず,国内の個人把握をマイナンバーカードで確実に進める必要があると思う。「マイナンバーカードを取得していない人は,ブラックリストに載せますよ」と脅せば,本当に厄介な人たち以外は登録するのではないだろうか。ただ,それを管理する省庁側に,「良識」があるのかどうかは,再度調査する必要があるのかもしれない。