慶應SFC30年、立命館APU20年――日本の大学をどう変えたか

APU編⑩◆出口治明学長インタビュー(下)「次期学長公募に僕が応じた理由」

2020.09.14

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中村 正史
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新学部を言い出して途中で辞めるのは無責任 

――地域との関係はどう考えますか。

今回のコロナでは、県や市が学生の側に立って、いろいろと支援してくださったのが本当にうれしかったです。僕は、民・官・学のリンケージ(連携)を唱えています。大分県や別府市や九州がさびれてAPUが元気であることはあり得ません。APUがハブになって大分県や別府市や九州を元気にしなければいけません。それがローカルな大学であるAPUの役割だと思っています。

僕は内閣府の大学支援フォーラムPEAKSの幹事会メンバーですが、そこで議論しているのは、地方から東京を経由せずに世界へ飛び出すということと、地域の核となって民・官・学のリンケージを強化するということです。8月下旬に九州大学と連携協力協定を結んだのも、九州から世界に飛び出す人材をつくろう、九州を元気にしようという一環です。昨年4月には九経連(九州経済連合会)と連携協定を結びました。九経連が初めて連携協定を結んだのがAPUで、90以上の国・地域から来ているAPUの学生を九州中の企業と結びつけようとしています。

――学長がやるべきことは何だと思いますか。

学長の仕事は、APUの教育・研究の質を高めて認知度を上げ、入学志願者を増やすことが一番です。一つ一つ目に見える成果をあげていきたい。小さくても具体的な成果が出ることを重ねていくことが、APUのレピュテーション(評判)につながると思います。

――APUは20年経った大事な時期ですし、新型コロナで一時的には国際系の大学の志願者が減りかねない大事な局面だと思いますが。

僕は留学生は減らないと思っています。留学生の最大の受け入れ先の米国は留学生に冷たい政策をとっていますし、英国はEU離脱でエラスムス+(留学サポートプログラム)が使えなくなります。THE世界大学ランキングのトップ200に日本の大学は2校しか入っていませんが、トップ1000だと米国、英国、日本の順に多い。コロナで米国も英国も留学生が減るのなら、世界的に留学生が漂流するのだから、日本にとっては絶好のチャンスだと、留学生を大事にするように政府には申し上げています。

たとえば香港についても、香港が気の毒だと言うのなら、アジアのトップ10に3校も入っている香港の学生を日本が特別枠で受け入れるとなぜ言わないのか。これはAPUのエゴではなく国益を考えて言っているのだと、政府には伝えています。

――2023年に新学部をつくるとなると、そこまでは学長を務めないといけないですね。

新学部を言い出して、中途半端で辞めるのは無責任ですから、今回の公募に応じました。最初の公募時は推挙でしたが、今回は自分で応募書類を書いて出しました。前回は応募書類を書いていないので、どう書いていいのかわからずにいろいろ調べましたね。

(終わり)

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