多様化する学びの場
不登校の子もそうでない子も一緒に暮らし、学ぶ 寄宿制「はじめ塾」
2024.02.08
不登校の子もそうでない子も一緒に暮らし、学びながら、生きる力を育もうという寄宿制の塾があります。神奈川県小田原市で90年あまり続く「はじめ塾」。子どもたちは寄宿生活を送り、大きな家族として塾長一家と食卓を囲み、勉強や農作業に取り組んでいます。
寝食ともに、人との関係を学ぶ
小田原駅にほど近い住宅街にある、木造2階建ての住宅。午前11時すぎになると、子どもたちが昼食を作り始めた。頭にバンダナを巻いた男の子が慣れた手つきでネギを切る。その横では、エプロン姿の小学生が調味料を探したり配膳を手伝ったり、どの子も自分の役割を見つけて動いている。
現在は中高生14人が寄宿生活を送り、自宅から通う通塾生の小中高生も8人いる。不登校の子もそうでない子も、ともに暮らして人間関係を築いていく。
「人は台所で育つ」という考えから、季節の地物を自分たちで料理して食べることを重視している。寄宿生は朝6時に起きて全員分の朝食を作り、洗濯や掃除など身のまわりのことはすべて自分でやる。不登校の子は日中、塾の農園での畑作業や学習に取り組む。
塾長の和田正宏さん(52)は「社会のなかで自己実現して、幸せに生きていける子を育てたい」と話す。「人は人によってしか育たないので、人と出会って丁寧に育っていく経験をしてほしい」
はじめ塾は和田さんの祖父が1933年に寺子屋として始めた。正宏さんは小学校教諭として私立校で勤務した後、ドイツへの留学を経て、27歳のときに父を継いで塾長になった。4人いる子どものうち、中学2年の長女は寄宿生とともに暮らしている。来春には長男も加わる予定だ。