SmartNewsの運営がニュースを収集し、傾向を分析し、各iOS端末にニュースをプッシュ配信している。FlipbordのようなRSSリーダーではない。プッシュ配信されたニュースはキャシュとして保存され、広告などがそぎ落とされた「Smartモード」として端末が圏外であっても読めるのが特徴。3G回線を使っている私としては便利なアプリなのだが、このキャッシュ保存が「転載ではないか」と議論を呼んでいる。
著作権上の問題があるとの指摘はあるのだけども、具体的にどの点で問題なのかがすっきりしないので自分なりにまとめてみました。
SmartNewsはどの辺が著作権的に問題なのか
SmartNewsは各ニュースがFlipbordのように並んでおり、タップするとオリジナルのWebページを回線を通じて読み込み始める。その際に「すぐに読む」をタップするとあらかじめダウンロードされていたキャッシュを表示する。これが「Smartモード」だ。ウェブページの読み込みが終了すると、画面下部に読み込みが終了のアナウンスの後に「Webモードに戻る」バーが表示される。「Smartモード」はインスタペーパーのテキストモードのように、広告などが表示されないため、WebモードよりもSmartモードのほうが読みやすい。
「Smartモード」は便利なのだが、著作権上の問題があるのではないかと議論になっている。これに対して、運営会社は SmartNewsに関心をおもちいただいているみ��さまへ | 株式会社ゴクロ (Gocro, Inc.) と、あくまで著作権違反ではないとの見解だ。
各端末にインストールされたSmartNewsがどのようにキャッシュを保存しているかわからないため微妙な問題なのだが、各端末がそれぞれニュースサイトにアクセスしキャッシュを保存しているならば著作権的には問題ないはずだ。つまり、SmartNewsの運営が独自のアルゴリズムに基づきニュースを選択し、それぞれのニュースサイトから取得するべきデータの情報をプッシュ配信し、各端末がデータをダウンロードしている場合。この場合は、ユーザーが「あとで読むか」を決めていないけれども、挙動としてはインスタペーパーなどに近いだろう。
一方で、SmartNewsの運営が収集したデータをキャッシュとしてプッシュ配信している場合は著作権的に問題となる可能性が高いだろう。つまり、SmartNewsの運営が各ニュースサイトからデータを収集し、それをキャッシュとして保存し、ニュース本文だけを抜き取り、加工して各端末に配信している場合。あるいは、ニュース情報を更新する際に端末がSmartNewsの運営するサーバーにアクセスし加工されたデータをダウンロードしている可能性もある。どちらにせよ著作権的に問題であり、インスタペーパーやポケットなどと比較するのは不適切であろう。
「Smartモード」にはキャシュ取得時間が表示されるが、この時間とプッシュ配信した時間、あるいはアプリを更新し最新ニュースを取得した時間は必ずしも一致しない。そのため、恐らくSmartNewsの運営が収集したデータをキャッシュとして各端末へプッシュ配信しているか、各端末が加工されたデータを受信している可能性が高い。
著作権上の問題を解決するには、SmartNewsが各サイトからページをダウンロードするように改善すれば良い。もちろん、現状でもそのような挙動をしているのかもしれないが。
ビジネス上の問題
SmartNewsのもう一つの問題は、各社が広告出してなんとか無料でニュースを配信しているのに、広告を剥ぎ取るような方法でニュースを表示させていること。つまり、ニュースを配信している側にデメリットがある点。ニュースを配信している会社がSmartNewsにデメリットを感じれば、SmartNewsをブロックした方が手っ取り早い。例えば、SmartNewsが情報を取得するサーバーをブロックしたり、あるいはSmartNewsからニュースを読めないようにしてしまえば良い。訴訟を起こすよりも、こちらの方が早く対応できるはずだ。
例として適切かは分からないが、ニコニコ動画はβ時代にYouTubeを参照していたが、アクセスがあまりにも多かったためかYouTubeがアクセス遮断した。このまま改善しなければSmartNewsも同じ道をたどる可能性があるだろう。
これを解決する方法は、SmartNews問題、転載されているブロガーとして思うこと(イケダハヤト) - BLOGOS(ブロゴス) にも論じられていますが、一つはSmartNewsが各社へ転載料金を払うこと。これは、ヤフーニュースなどと同じで、各ニュースサイトからニュースを買い取って掲載する方法。転載料金を支払わない場合は、転載される側がデメリットを受けない、むしろよりメリットを得やすい形式にする。例えば、「Smartモード」にも広告を掲載した形の表示形式にするとか。
SmartNews側としては、著作権上問題無いと突っぱねるよりも、それぞれのサービスがより良くなるような方向を模索して欲しい。
ただ、Twitter / yukatan にて岡田有花さんがツイートしているように、SmartNewsの「Smartモード」は現在のスマートフォンの通信速度や処理速度が遅いため、そこで発生するイライラを回避するための機能であり、今後帯域がよくなり、スマートフォンの性能が上がってニュース記事がサクサク読めるようになれば「Smartモード」など必要なくなるわけで、過渡期の機能だよなとは。