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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0459
闇には音は関係なさそうなのに、どうして「門」構えに「音」と書くのですか?

A

漢字の多くは、成り立ちの上では形声文字と呼ばれています。詳しくは用語集をご参照いただきたいのですが、形声文字とは、意味を表す部分と発音を表す部分との2つの要素から成り立つ漢字のことをいいます。
発音といっても、漢字が作られたころの古代中国の発音ですから、現在の私たちの音読みとは違っているのは、大目に見ていただきたいところ。「闇」の音読みはアン、「音」の音読みはオン・インですから、「闇」の場合、「音」は発音を表す部分だということになります。
ここで、アンという音読みを持っていて、なおかつ「音」を字形の中に含む漢字を思い浮かべてみてください。すぐに、「暗」が出てくることでしょう。「闇」と「暗」の意味は、とてもよく似ていますよね。さらに「諳」を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。この字は「そらんずる」という訓読みを持っていて、目では見ないままに文章を読み上げる、といった意味です。こうなってくると、これらの「音」は単に発音を表しているだけではなくて、何か共通の意味を持っているような気がしてきます。
実際、形声文字については、発音を表す部分が同時に意味も表すことがある、と言われています。では、「音」の場合はどんな意味を表しているのか、ということになると、例によって学説が分かれてきます。それらをいろいろと見ていくと、どうやら、形声文字の発音を表す部分として用いられる「音」には、「視覚によらない」という意味がある、というのが最大公約数のようです。
というわけで、「闇」は本来、「門」を閉じて光が入らない状態、視覚が効かない状態を表していたと理解するのがよさそうです。光がなくても音がある。そう考えれば、「闇」という漢字は、私たちにちょっとした勇気を与えてくれそうですね。

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