「這いよれ!ニャル子さん」が公式配信アニメの歴史を塗り替える

D
 まったく予想もしない方向からとてつもないブームがやってきてしまった。「這いよれ!ニャル子さん」である。4月9日に関東でテレビ放映が始まり、その2日後にニコニコ動画でも配信開始されたのだが、以降、過去の常識をことごとく覆すとてつもない再生数を叩きだし続けている。第1話の再生数は放映開始から1週間で90万再生。昨日配信されたばかりの第2話も既に20万再生に迫る勢い。

這いよれ!ニャル子さんとは (ハイヨレニャルコサンとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

 これがどれくらいとてつもないかというと、過去の最高記録は昨年空前のブームを巻き起こした「魔法少女まどか☆マギカ」の第10話が1週間で75万再生。これは震災の影響で配信が遅れ、関東圏と関西圏以外はテレビ放送よりも早い配信だったという特殊要因ゆえで、これを除くと第1話としては「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の64万再生というのが最高値。この突発的なブームの理由が皆目分からずこの1週間いろいろ調べていました。

ブームの発端はTwitter

 通常、ニコニコ動画での大規模なブームというのはわかりやすい震源地というものがあるのですが、ニャル子さんブームにはどうもその気配が見当たらない。いかにもニコ厨受けしそうなOPリピート動画が配信直前に投稿されこれも爆発的に再生数を伸ばしているものの、同じようにOP動画が大人気となった「うたのプリンスさまっマジLOVE1000%」では本編は30万再生程度で留まっており、ニコ厨の行動パターンを考えても尺の長い本編動画に大きく流れる理由が見当たらない。

 そうこう調べているうちに、どうやら放映直前からTwitter(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!の1行AAが爆発的なブームになっていたらしいという事実に突き当たったんですね。

http://analytics.topsy.com/?q=%E9%80%99%E3%81%84%E3%82%88%E3%82%8C%EF%BC%81%E3%83%8B%E3%83%A3%E3%83%AB%E5%AD%90%E3%81%95%E3%82%93%2C%E3%83%8B%E3%83%A3%E3%83%AB%E5%AD%90%2C(%E3%80%8D%E3%83%BB%CF%89%E3%83%BB)%E3%80%8D%E3%81%86%E3%83%BC!(%2F%E3%83%BB%CF%89%E3%83%BB)%2F%E3%81%AB%E3%82%83%E3%83%BC!

 TOPSYのソーシャルグラフによると、関東での放映日の翌日から(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!が爆発的に蔓延。そのままニコニコでの配信日にピークとなっているのがわかります。興味深いのが(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!ブームから3日後には(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!よりもニャル子さんという単語のほうが話題の上位にきている点。何がなんだかわからないうちにTwitterで感染的なブームとなり、それがどうやら新作アニメのネタらしいと知れたことから継続的な動画へのアクセスが続いたのではないかと推測されます。最近は他にも1行AAが発端になった┌(┌^o^)┐ホモォ...ブームなどもあり、これも一連の流れなのかもしれません。

(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!とは (ウーニャーとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

┌(┌^o^)┐ホモォ...とは (ホモォとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

 Twitterで話題になったアニメというのは過去にもありましたが、キャッチーな1行AAによって、アニメクラスタ以外にも存在が広く知れ渡ったというのが過去の同種のブームと比べてケタ違いの規模感になったというのが現時点での結論です。

追記

『這いよれ!ニャル子さん』の一行AA「(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!」の由来 - Togetter
 こちらのまとめによると、当初は文字だけのうー!にゃー!弾幕だったものが、Twitterで創作された(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!流入Twitterニコニコ動画が相互作用する形で更に増幅したというのが実際のようですね。

地方配信に先行

 もうひとつ重要なファクターとして見逃せないのは、実はこのニコニコ動画での配信が関東以外での地方配信に先行しているという点ですね。

名状しがたいアニメ「這いよれ!ニャル子さんF」オフィシャルサイトのようなもの

 公式サイトによると、テレビ愛知がニコニコ配信の1日遅れ、テレビ大阪が2日遅れ、それ以外の地方は配信がない。その上、公式サイトに直接ニコニコ動画の外部プレイヤーが設置され、わざわざニコニコ動画にログインしなくても見れるようになっていたというのも実は大きな要因なのかもしれません。

重層的なネタの嵐

 爆発的な再生数それ自体がニュースになって更に注目を集めることとなったニャル子さんですが、それだけではただの一過性のブームで終わってしまう可能性も高かった。それが第2話の再生数も第1話を上回るペースで推移しており、話題が一段落した後も勢いが留まるところをしらない。Twitterを発端としつつも、そのブームを追い風として良質なMAD動画が次々と投稿されニコニコ動画全体を巻き込んだブームへと発展しているんですね。そのMADの質を支えているのが、作品中に多層的に仕込まれたネタの数々です。

 実は「這いよれ!ニャル子さん」という作品は過去に2度FLASHアニメとして製作されており、これもニコニコ動画で配信されていたのですが、この時はそれほど大きな話題とはならなかった。クトゥルフ×美少女というのが最大の特徴の本作ですが、やはりそれだけではネタとしてはニッチすぎるんですね。それが通常のアニメ作品として製作されたこの第SAN3期は、クトゥルフネタのみならずガンダム仮面ライダーを中心としたアニメ・特撮ネタをふんだんに盛り込んでおり、それがまたフックとなってより多くの人達を巻き込んでいるという実感があります。

ニャル子さん第一話のクトゥルフネタ全部解説 - クトゥルー/クトゥルフ神話作品発掘記
トップページ - 這いよれ! ニャル子さん 元ネタwiki - アットウィキ

 この空前の勢いが果たして最後まで持続するのか、持続したとしてパッケージの販売等、実際の商売にちゃんと反映されるのかいろいろと未知数な部分もまだ多いですが、公式配信アニメの歴史を塗り替えた「這いよれ!ニャル子さん」。今後も注目していきたいですね。