顧客視点の「品質」定義はCSが握る
約4年前にも講演を行った風間氏。当時を振り返り、「聴衆のほとんどが開発者だった」と懐かしそうに語る。
そこから4年、状況はどう変わったのだろうか? 聴衆に挙手を求めると、QAやテストなど、開発以外の業務を担当するエンジニアが増えていることがわかった。品質保証やテスト部門への風向きが追い風に変わりつつある。そんな傾向を匂わせる会場を前に、河原田氏は「テストもしっかりとした技術だという認識が広まってきている」と期待を寄せる。
最初の議題は、「『品質が悪いせいで製品が売れない』と言われたらどうするか」だ。製品が売れない背景にはさまざまな要因が考えられるが、製品の品質がやり玉に挙げられた場合、どうアプローチするのが良いだろうか。
河原田氏は、「"品質"の正体を明らかにする」事から始めると話す。たとえば、ある顧客はレスポンスの遅さを嫌っており、別の顧客は、多機能性やセキュリティの堅牢性を求めているとする。この場合、それぞれの顧客が求める「品質」、および対応は異なってくるはずだ。
だからこそ、適切に「品質」を定義するには、CSの協力が不可欠だ。河原田氏は、「カスタマーサポートの方にウォークスルーをしてもらうと、想定していた仕様では足りない部分や、お客様が実際に使用する姿が見えてくる」と経験を語る。さまざまな部門を巻き込むことで、顧客が本当に求める「品質」を実現しようとするアプローチだ。
河原田氏はさらに、チャーンレート(解約率)やLTV(契約から解約に至るまで、顧客1人当たりが生み出す利益)をKPIとして設定することで、「品質が悪い」の中身や、「売れない」「使い続けられない」理由を推測できると示す。定量/定性の両輪で分析することで、「品質」と「売れない」の行間を埋めていくわけだ。