その夜、ある家の晩餐の席で一つの賭けがなされた。美食家を自認する客の一人が、食卓に出た珍しい葡萄酒の銘柄を判定できると言いだしたのだ。賭けられるのは美食家の邸宅と当主の令嬢。絶大な自信を持つ当主は賭けに応じるが…… 賭博に打ち込む人間心理の恐ろしさを描く「味」をはじめ、鬼才ダールが描く、幻想とユーモアと恐怖をちりばめた珠玉の15篇を収録。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀短篇賞を受賞した傑作集。 田村隆一 訳 出版社:早川書房(ハヤカワ・ミステリ文庫) ロアルド・ダールの作品は『Charlie and the Chocolate Factory』しか読んだことはないのだが(なぜか原文で読んだ)、この人はちょっと皮肉な作品を書くのが得意なのかな、という印象を受ける。 本作には15の短篇が収録されているのだが、概ねオチがアイロニカルだからだ。 そして皮肉であるがゆえに、ちょっとしたおかしみだったり