コンテンツにスキップ

4320p

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

4320pは、ディスプレイ動画解像度などで用いられる用語で、画面アスペクト比16:9で、有効垂直解像度4320本かつ、順次走査の動画を指す略称である[注釈 1]正方形ピクセルにおいて7680×4320、33メガピクセル(3317万7600画素)の動画となる。つまり、2012年で最も使われる1080iの縦横それぞれ4倍、画素数は16倍である。UHDTV(超高精細テレビ)における「8K英語版」であり、8K UHDTV8K UHDスーパーハイビジョン8Kと呼ばれている。フルスペックで撮影できる機材は2010年[1]に、フルスペックで表示できる機材は2011年[2]に開発されている。

人間の視覚能力の限界に到達

[編集]

NHK技研の研究により、映像サイズが水平視野角100°を上回ると、人間が映像から得られる臨場感は飽和することが分かっている。この水平視野角100°は、画面の高さの0.75倍の距離から視聴した場合に達成できるが、人間が画面の粗さを全く感じないように実現するためには、水平画素数を約8000万画素にする必要が有る。つまり、4320p(8K)で解像度の面では臨場感の限界に到達する計算になる[3]

人間の視覚系において体験の向上が感じられるフレームレートは240 fpsが上限[4]とされるが、4K 8Kテレビ放送でも60 fpsであるため臨場感向上の余地が残されている。また8K240Hzでの撮影は研究段階であり[5]、2024年現在実用化されていない。4320pディスプレイの実用化以降は、フレームレートの向上に技術開発のトレンドが移ると予測されている[4]

名称

[編集]

はじめに、映像がITUによりITU-R BT-1769(2006)、SMPTEによりSMPTE 2036-1(2007)が規定された。これらには2160pが含まれる[6]

国際電気通信連合(ITU)においてはUHDTV(Ultra HD television)、超高精細テレビに含まれる。2012年5月24日、4320pをUHDTVのうち8Kと呼ぶことが勧告された。そのため「8K UHDTV」「8K UHD」と呼ばれている[7][8]

またはUHDTV(Ultra high definition television)を直訳して「超高精細映像 8K」。総務省の発表資料でしばしば使用されている[9]

総務省においては現行の1080iを2Kとして、4Kと8Kを併せて愛称をスーパーハイビジョンとしている。そのため4320pは、「スーパーハイビジョン 8K」と呼ばれている[10]

他には8K Ultra HDまたはUHDTV Level2(超高精細テレビ レベル2)、UHDTV-2と呼ばれる[11][12]

8K4Kや単に8Kとも呼ばれるが、デジタルシネマ向け4K、4096×2160(1.90:1)の4倍の画素数の、8192×4320を指すこともある。

画面解像度においてはUHDと呼ばれている。ちなみに4KはQFHDとも呼ばれている(2K(Full HD)に比べて面積が4倍(Quadruple)になることから)。

スーパーハイビジョンには、「4K」と「 8K」があるが、NHKが単に「スーパーハイビジョン」と呼ぶときは4320pのみを指すことが多く、120p、4:4:4/12bit画質の「フルスペック」かつ22.2chサラウンドを目指して開発している。略してSHVとも呼ばれる。

種類

[編集]

ARIB STD-B56では解像度の他に複数のパラメーターが定められている。

フレームレート 60, 120
色差信号 4:4:4, 4:2:2, 4:2
階調 10bit, 12bit

実際の撮影では、デュアルグリーン方式を加えた種類がある[13]

フレームレート カラー 非圧縮デジタルレート 名称
60p 4k×4(R・B・G1・G2) 24Gbps(12bit),19.9Gbps(10bit) デュアルグリーン
120p 48Gbps(12bit)
60p 8k×3(R・G・B) 72Gbps(4:4:4/12bit),39.8Gbps(4:2:2/10bit)
120p 144.3Gbps(4:4:4/12bit) フルスペック

撮影

[編集]

カメラ性能は大きく分けて、4つに分類できる

  • フルスペックの三板方式(8K×3枚 R/G/B)
  • デュアルグリーンの四板方式(4K×4枚 R/B/G1/G2)
  • ベイヤー配列の8K単板方式(8K×1枚)
  • ベイヤー配列の16K単板方式(16K×1枚)

カメラの性能は世代ごとに向上している。

  • 1世代(2002年) - 80kg CCD 2.5インチ光学
  • 2世代(2004年) - 40kg CMOS ズーム付き
  • 3世代(2010年) - 20kg CMOS
これら3つは3840×2160の撮影素子を緑のみ2枚にしたデュアルグリーンの四板方式。緑の2枚目を3色から水平垂直方向に1/2画素分ずらしてある。緑はフルスペックの半分、赤と青は1/4の解像度しかないが補間演算よって4320Pを撮影する[14][15][16]
  • 4世代(2010年) - 65kgは初のフルスペック(7680×4320)のCMOS×3板式カメラである[17]
  • 5世代のカメラはベイヤー配列8K単板方式の小型カメラである。
2012年5月、NHK放送技術研究所と日立国際電気で共同開発した、単板式CMOSによる4キログラムの小型ビデオカメラを公開した。7680×4320のCMOSをベイヤー配列のカラーフィルターで補間演算し擬似的に4320Pカラー映像を撮影できる。ロンドンオリンピックにおける撮影で使用された[18]
  • 2012年には、NHKと静岡大学と開発した、120Hz(120p)に対応したCMOS撮影素子を発表した。撮像領域は21.5mm×12.2mmと小型である。この撮影素子を使用したカメラは、2012年に3版式カメラが、2013年5月には単板式カメラが発表されている。単板式カメラはNHKとアストロデザインの共同開��で、2キログラムと軽量であるが60pまでとなっている[19][20]
  • 2014年には、ベイヤー配列(デュアルグリーン)の16K CMOSを開発した。単板でも16Kになると三原色とも8K以上の解像度があるため、単板でありながら8K 3板以上の画質となる[21]。また、既に販売されている4Kカメラ、CineAlta F65を改造した8Kカメラが発表された。元々F65はハニカム配列に似た8k2K程度の解像度、1900万画素CMOSを搭載しており、8Kデュアルグリーン相当の画質を出力できる。
  • 2020年に、シャープから発売された5Gスマホ "AQUOS R5G"のカメラでは、8K映像が撮影できる。それにより、スマートフォンでも8k映像が撮影できるようになった。

ディスプレイ

[編集]

開発初期は、3840×2160の素子を緑のみ2枚使用し、緑の2枚目を3色から水平垂直方向に1/2画素分ずらしてある。4板式プロジェクター。緑はフルスペックの半分、赤と青は1/4の解像度しかないが擬似的に4320pを表示する。赤青のプロジェクターと緑緑のプロジェクター2台を並らべて投影する[14]

2009年、技研公開において、NHKがビクターと共同開発したフルスペックを満たす(8192×4320)の3板式プロジェクターを公開した[22]

2011年1月、NHKがJVCケンウッドと共同開発した3840×2160の素子を3枚搭載したプロジェクターを発表した。フルスペックより低価格化、小型化できるのが特徴。反射型液晶素子を斜め方向に1/2画素分、高速で光学的に屈折させることにより、縦横2倍、合計4倍の解像度を実現した[23]

2011年5月には、シャープがNHKと共同で85型直視型フルスペック(7680×4320)液晶ディスプレイを開発した。HDMIを16本接続、60p。輝度300cd/m[2]

2012年4月27日にはパナソニックがNHKと共同で145型フルスペック(7680×4320)プラズマディスプレイを開発した。世界初の自発光、直視型ディスプレイである。60p。カラー配列RGB縦ストライプ[24]

2017年5月24日、デルが世界初の31.5インチ8K液晶ディスプレイを発表[25]、同年7月28日に発売開始[26]

2017年8月31日、シャープが世界初の民生用8K対応液晶テレビ「AQUOS 8K LC-70X500」を同年12月1日より発売すると発表[27][28]。HDMIを4本接続、色域はITU-R BT.2020より狭い。

2019年9月13日、LGエレクトロニクスが世界初の民生用8K対応有機ELテレビ「LG SIGNATURE OLED 8K OLED88Z9PJA」を同日に受注販売することを発表[29][30]4K放送チューナーを搭載するが、8K放送チューナーは非搭載。8K放送チューナーを接続するにはHDMIを1本接続する。上記のAQUOSとは違ってHDMIを4本接続する方式には非対応。

伝送

[編集]
  • 2.4Gbps 非圧縮デジタル、NHK技研展示会、鴨川東京間(2005年)、光ファイバー[31]
  • 640Mbps mpeg-2 NHK紅白歌合戦、東京大阪間(2006年) ip通信[31][32]
  • 140Mbps H.264トリノ-アムステルダム間(2008年)、通信衛星ユーテルサット[31]
  • 100Mbps×3チャンネル H.264 札幌、鹿島、東京(2009)、通信衛星きずな[31]
  • 240Mbps H.264 ロンドン東京(2010年) ip通信[31]
  • 180Mbps H.264 東京(2011年) UHF
2011年5月15日、NHKが世界で初めて地上波における伝送に成功した。ISDBを基本にUHF31と34の2チャンネルを、水平垂直MIMOによりそれぞれ2倍、誤り訂正符号を低密度パリティ検査符号に変更、デジタル変調4096QAMを採用した。結果、182Mbpsのレートとなり、4320pの映像をH.264で圧縮して伝送することに成功した[33][34]
2013年、三菱電機とNHKは次世代圧縮方式、H.265(HEVC)を使用するものとしては世界初のリアルタイムエンコーダーを開発した[35][19]

放送

[編集]

2016年に21GHz帯衛星による試験放送を開始する予定。ちなみに2160p(4K)は2014年に試験放送を開始した。従来のBS・CS放送(110度・12GHz)においても16APSK(3/4)で変調すれば1チャンネルで4320pが伝送可能であり、NHKは12GHzを利用することも想定している[36]

CS110度衛星による8Kテレビ放送

[編集]

2016年、リオデジャネイロオリンピックにあわせて、左旋円偏波の東経110度CS放送を使用した放送を開始予定。スカパー!は現在、右旋波を使用しているが、2016年度に左旋波用衛星が打ち上げ予定[37]

2021年、東京2020 オリンピックにあわせて、スカパー!が使用している右旋波を使用した放送を開始予定[37]

CS110度左旋波、右旋波では4K(2160p)の放送も併せて開始される予定。

中継・撮影された素材

[編集]
全国約30箇所で収録。900分
継続して撮影収録されているかは不明。
  • International Broadcasting Convention展示向け動画(2008年)[15]
ニューヨークやハワイにて空中、水中撮影を含む。RAI(イタリアの公共放送)と共同で中継も行った。
BBCと共同。
日本対コートジボワールと日本対ギリシャを撮影。コートジボワール戦は4K UHDに変換してChannel 4Kで録画中継された。
本場所中、受信設備があるNHK放送局にて、幕内の取組のライブビューイングが行われた。
  • 乃木坂46 6周年バースデーライブ(2018年)
7月に行われた神宮球場での乃木坂46のライブを撮影、8K本放送開始直後である12月2日以降「乃木坂46 神宮球場8Kライブ!」としてしばらく放送された。なお隣接の秩父宮ラグビー場は収録されておらず、神宮球場でのライブとメンバーの移動シーンが収録された。
日本対アイルランドと準決勝戦(イングランド対ニュージーランド)、決勝戦(イングランド対南アフリカ)などを生中継および録画中継[39]。同時にパプリックビューイングも行われた。

比較

[編集]
4320p
1080p 1080p 1080p 1080p
1080p 1080p 1080p 1080p
1080p 1080p 1080p 1080p
1080p 1080p 1080p 1080p
4320p
2160p 2160p
2160p 2160p

  • 4K UHDが2160pである。

脚注

[編集]

註釈

[編集]
  1. ^ 1080iまでと異なり、飛び越し走査、つまり4320iを定義した規格は存在しない。

出典

[編集]
  1. ^ NHK技研公開2010、初のフルスペック・スーパーハイビジョンデモ/60gのスピーカーなど展示”. PHILE WEB. 2020年7月11日閲覧。
  2. ^ a b NHKとシャープ、85型スーパーハイビジョン液晶を開発 AV Watch 2011年5月19日
  3. ^ テレビは早くも4K超え!「8K」って何がスゴいの?徹底解説 - 価格.comマガジン」『kakaku.com』。2018年5月30日閲覧。
  4. ^ a b 黒木ほか 2013.
  5. ^ ハイスピード撮像技術|技研だより”. NHK放送技術研究所. 2024年9月5日閲覧。
  6. ^ スーパーハイビジョンの研究 NHK 1P
  7. ^ 4K/8Kテレビは「UHDTV」に。ITUが勧告案発表 2012年5月28日
  8. ^ ITU Recommendations on UHDTV standards agreed ITU
  9. ^ 総務省
  10. ^ 放送化の高度化に関する現状 総務省
  11. ^ ebu 4p 2011-05-07
  12. ^ Never Say 4K 2012-09-11
  13. ^ 情報通信審議会情報通信技術分科会 放送システム委員会 総務省
  14. ^ a b FPDの人間工学 5P NHK 2009-03-06
  15. ^ a b c d e スーパーハイビジョンの研究 NHK 16P
  16. ^ 放送技術のこれからの将来 NHK 9P
  17. ^ NHK、スーパーハイビジョンの進化版など「技研公開2009」 AV Watch 2009年5月19日
  18. ^ 重さ約4kgのSHVビデオカメラ、NHKと日立国際電気が開発 日経 2012-05-25
  19. ^ a b NHK技研公開2013。'16年試験放送に向けSHV加速 AV Watch 2013年5月18日 2013/05/28閲覧
  20. ^ スーパーハイビジョン用120Hzイメージセンサー NHK
  21. ^ NHK、1億3,300万画素のCMOSセンサーを開発 phileweb 2014年5月16日
  22. ^ NHK、スーパーハイビジョンの進化版など「技研公開2009」 AV Watch 2009-05-19
  23. ^ ◆実用的な小型SHVプロジェクターを開発! NHK 2011年1月13日
  24. ^ NHKとパナソニック、世界初145型スーパーハイビジョンPDP開発 AV Watch 2012年4月27日
  25. ^ デル、8K液晶ディスプレイ「UP3218K」を夏に国内投入 PC Watch 2017年5月24日
  26. ^ デルの8K液晶がついに本日発売 498,800円 2017年7月28日
  27. ^ 「8K対応液晶テレビ」 『AQUOS 8K』70型<LC-70X500>を発売 2017年8月31日
  28. ^ 世界初8K液晶テレビ「AQUOS 8K」登場、70型で約100万円。シャープが8Kをリードする AV Watch 2017年8月31日
  29. ^ 「OLED 88Z9PJA」を本日より受注販売開始 | プレスリリース | LGエレクトロニクス・ジャパン 2019年9月13日
  30. ^ LG、世界初8K有機ELテレビを日本発売。世界最大の88型で約330万円 AV Watch 2019年9月13日
  31. ^ a b c d e [1]
  32. ^ 紅白生中継のすべて NHK
  33. ^ NHK、地上波でのスーパーハイビジョン映像伝送実験に世界で初めて成功 2012年5月5日
  34. ^ 地上波伝送実験 NHK
  35. ^ 世界初! スーパーハイビジョン(8K)HEVC 符号化装置を開発 三菱電機
  36. ^ 12GHz帯衛星放送によるスーパーハイビジョン伝送技術 NHK
  37. ^ a b SHV/4Kとスマートテレビをオールジャパンで一体推進 AV Watch 2013-05-31
  38. ^ 紅白歌合戦8Kスーパーハイビジョンライブパブリックビューイング NHK
  39. ^ ラグビーワールドカップ2019™ 4K8K観戦ガイド | 一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)

参考文献

[編集]
  • 黒木 義彦、高橋 春男・日下部 正宏・山越 憲一「通常および高フレームレート映像刺激が脳波に及ぼす効果」『映像情報メディア学会誌』第67巻第8号、映像情報メディア学会、2013年7月25日、J340-J346、ISSN 1342-69072021年3月19日閲覧 

関連項目

[編集]