エンジニアの呼吸を支える技術
こちらは ピクシブ株式会社 Advent Calendar 2014 の12/24の記事です。
エンジニアは知識労働がメインとは言え、身体が資本であることに違いはありません。 そこで今回は、私 @Moyashipan が鼻の手術を受けた体験を通して、エンジニアの呼吸を支える技術についてお話ししたいと思います。
いつからか仕事中に頭痛を感じるように
2012年の春。仕事中に鼻が詰まりやすくなり、それにより頭痛を感じることが多くなっていました。 そしてある日、出社後に自分が風邪気味であることに気づいた時、鼻呼吸ができないほど鼻が詰まっていることにも気づきました。
短期的な解決が長期的には悪化を招く可能性
鼻詰まりがあまりにも辛かったので、薬局に行って鼻詰まり用のスプレーを買って使用してみました。 すると、これまでの人生で体感したことが無いくらいに鼻が通るではありませんか。
それまでの「普通」に満足できなくなる
そうしてスプレーを使っているうちに風邪も治り、鼻の通り具合も元に戻ったのは良かったのですが、 スプレーを使った時の最適な状態を知ってしまったために、今度は自分の普段の状態に満足ができなくなってしまいました。
「あぁ、鼻スプレーして呼吸をラクにしたい。でも僕はこのままずっと鼻スプレーを使い続けていくんだろうか...」
そう思いながら鼻スプレーについてGoogleで検索してみると、どうやら使い続けることは推奨されていないことがわかりました。
市販の鼻スプレーはあくまでも一時的な辛さをおさえるための物
短期的な解決では良くない。それどころか悪化する可能性すらある。長期を見据えて根本から解決しなくては。
そうして近所の病院を探して向かいました。
休日にも開いている病院で検査
重い症状では無いし、どうも億劫(おっくう)で平日には行きにくかったので、土曜にも開いている近所の病院を選んで向かいました。
検査結果
鼻スプレーの話や、根本から解決したいということを伝えて、CTスキャンとアレルギー検査を行いました。 当初は「きっと鼻の通路が狭い・狭くなりやすいんだろう」ぐらいに思っていたのですが、 CTスキャンの結果からもっとやっかいそうな症状であることがわかりました。
鼻の中央にある仕切りの骨が大きく曲がっている「鼻中隔彎曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)」です。
鼻を強くぶつけたことも無いし、鼻を外から見ても曲がっている様子は見られなかったので意外でした。 これのやっかいなところは、仕切りが曲がったことにより、片方の通路は狭く、もう片方の通路は広く「ならない」点です。 左右のバランスを取るように、両方が狭くなっているのが写真からもわかるかと思います。
そうした検査結果やこちらの希望を元に、お医者さんはそれぞれのメリット・デメリットを含めて治療法をおすすめしてくれました。
たとえば、
- 薬を定期的に飲んで膿が溜まりにくくする方法は、手術の必要は無いが、ずっと飲み続けなくてはいけない可能性がある。
- 鼻の内側の粘膜を焼ききって通路を広くする方法は、手術は手軽だが、いずれまた通路が狭くなってくる可能性がある。
- 鼻の中央の骨を除去する方法は、根本から解決することが可能だが、入院が必要。
などです。
僕が「薬にずっと頼りたくない、やはり根本から解決したい」と伝えると、手術の設備の整っている病院への紹介状を用意してくれました。
紹介状を持って大きな病院へ
診察、測定、予約
紹介された病院には、紹介状・CTスキャンのデータが入ったディスク・書類などを持って行きました。 そこで再度診察があり、手術に必要な身体機能を備えているかの測定があり、入院期間をいつにするかといったやりとりを経て、晴れて入院の日を迎えます。
ちなみに呼吸機能検査の際に以下のようなTシャツを着て行くと、視線を感じたりいじられたりするのでぜひお試しください。
なお、CTスキャンのデータが入ったディスクは、病院で見せた後に貰って帰ることができました。 欲しい方は検査を受ける機会があればお医者さんに相談してみてください。
インフォームド・コンセント -説明と同意-
インフォームド・コンセントという言葉があります。
医者が患者に対して手術に関する十分な説明を行い、それを聞いた患者が同意か拒否を選べるというものです。
良い情報も悪い情報もすべて教えてくれる
実際に僕が手術を受ける際にも、以下のような説明を口頭と文書の両方でしてもらえました。
- 副鼻腔という部分に対する手術では、目の近くで作業を行うことになるため、失明の可能性が無いとは言い切れない
- 全身麻酔による手術では、器官に管を挿入するのでその部分が炎症を起こす可能性がある
これらの説明を聞いて「失明する可能性が捨てきれないなら、鼻が詰まったままでいい!」という判断をして手術を拒否するのも患者の自由です。 それらを伝えられずにもし万が一失明してしまった場合の患者の気持ちを考えると、事前にリスクやデメリットも伝えておくことの重要性がわかります。 「いいからやりなさい」というのではなく、良い情報も悪い情報もすべて共有して納得した上で事に挑むという姿勢は、開発においても見習える場面があると感じました。
全身麻酔
呼吸が3時間以上止まる
手術の最中に痛みを感じたり、身体が動いたり、むせたりしないように、全身麻酔が行われました。 呼吸に関わる部分の手術をするので、患者の自発的な呼吸に任せるとむせてしまうというのは確かに納得です。 そのため、麻酔が効くまでは酸素マスクを付け、麻酔が効いてからは酸素を送り込むチューブを口に入れて手術が行われたそうです。
手術が終わって
手術によって、鼻の中央の仕切りの骨が切除され、副鼻腔の中の薄い骨が除去されたそうです。
なぜ虫さされにマルが書かれていたか
術後に意識が戻ってから自分の身体を見ると、虫にさされていた箇所を囲むようにペンでマルが書いてありました。 また担当の方から「下腹部に模様がありましたが」と質問されました。 それは赤ん坊の頃にかかった水疱瘡(みずぼうそう)の跡で、今回の手術とは関係ない物です。 虫さされの件もそうですが、どちらも手術によって意図せぬ変化が起こっていないかを確認するための配慮なのだそうです。
鼻のありがたみがわかる
手術後には鼻に詰め物がされた状態で過ごさなくてはなりません。 口呼吸にはすぐに慣れるのですが、ごはんを食べるのがなかなか大変です。 というのも、通常、人が物を飲み込む時、鼻から空気が出入りしているんですね。
後日、その詰め物を取る時には、まるで鼻から中指が飛び出てきたかのような感覚で驚いたのを覚えています。
高額療養費制度の事前申請を利用しよう
高額療養費制度を利用することで一定金額以上の医療費を払わなくて済みます。 さらに事前申請を行うことで、後ほど支給されるはずの額を差し引いた金額だけを払えばよくなります。 これらはすべて病院の窓口で説明してもらえるので、保険証を用意して心配せずに入院に臨みましょう。
結果、入院費 約9万円
1週間の入院・手術のために僕の財布から出ていったお金は約9万円で済みました。 検査や術後の診療、各種文書請求などの費用も含めると約12万円です。 さらに保険の給付金、傷病手当金などが受け取れたので、実際にはもっと少ない額で済んだことになります。
そして今
鼻詰まりしてません
手術から2年が経ちましたが、鼻が詰まることはまったく無くなり、常に快適な鼻呼吸とともに業務に打ち込んでいます。
ただし勝手に鼻が高くなったりはしません。
鼻詰まりの自覚がある、同僚がいつも鼻をかんでいる気がする、といった方はこの記事をきっかけにして近所の病院への相談を検討してみてはいかがでしょうか。
エンジニア募集!
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次回のAdvent Calendarは?
明日は@edvakfがグランドフィナーレを飾ってくれます。