AWS事業で「御三家」などの先行を許したかに見える大手SIer。実際には大手SIerは、御三家などとうまくすみ分けているという。御三家が容易にまねできない、大手SIerならではの強みがあるからだ。
大手SIerならではの強みは大きく3つある。
第1はAWSを使うシステムの開発・運用などに携われるエンジニアの多さだ。大手SIerは数千人、数万人のエンジニアを擁し、数百人規模の御三家を圧倒する。エンジニアが多ければ、ユーザー企業も大規模案件を依頼しやすい。大手SIer各社は新人研修でAWSを扱ったり、AWSの認定資格取得を義務としたりと、技術取得をあの手この手で進める。
足元で最も勢いがあるのは富士通だ。2024年3月時点でAWS認定資格保有数が6000件を超え国内最多になった。AWSの普及以前から在籍する中堅~ベテランエンジニアや営業部隊にも資格取得を推奨する。
同社は、年度末時点で最も多くの有効AWS認定資格を保有する国内パートナーを表彰する「All Certifications Champion」を、2023年度に初受賞。併せて、1つの年度内にAWS認定資格を最も多く取得した国内パートナーに贈られる「All Certifications of the Year」、初級資格である「AWS認定クラウドプラクティショナー」を最も多く取得した国内パートナーに贈られる「Practitioner of the Year」も2023年度に受賞した。
富士通の荒井孝二グローバルソリューションビジネスグループアドバンスドテクノロジーサービス事業本部長は「大規模かつ効率的にAWS事業を行うことに注力している」と強調する。サービス提供(デリバリー)で蓄積してきた知見を、AWSビジネスにも生かそうとしている。
一例が開発プロセスの標準化作業だ。AWSが公開しているレファレンスなどを自動化ツールに落とし込めば、開発の品質向上やコスト抑制が期待できる。推進するにはAWSの技術者が相当数必要になる、との考えから資格取得に注力する。
TISはAWSエンジニア約2300人のうち約600人が上級の「プロフェッショナル」資格を持つ。社内のTeams上のAWSコミュニティーなどを通じ、資格取得者をたたえる取り組みなどが奏功したという。
同社の横井公紀IT基盤技術事業本部IT基盤ビジネス事業部 IT基盤ビジネス推進部エキスパートは「(AWSの表彰対象となったエンジニアに関する)ニュースリリースを出すなど、各人の努力を会社として認めている」と話す。