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 GAFAは一般にプラットフォーマーと呼ばれるが、1社だけ例外があった。最近社名を変更した米Facebook(フェイスブック)だ。人々や企業をつなぐプラットフォームを自称していた同社だが、アプリケーションなどのエコシステム作りには失敗してきた。新しい社名には、長年の悲願が込められている。

 フェイスブックは2021年10月28日(米国時間)に社名を「Meta(メタ)」に変更するとのプレスリリースを公表したが、実はメタは正式な社名ではない。米国証券取引委員会(SEC)に届け出た新社名はMeta Platforms(メタプラットフォームズ)だ。日本の証券コードに相当するティッカーシンボルはMetaverse(メタバース)にちなんだ「MVRS」で、メタバースのプラットフォームになりたいという思いが詰まっている。

 メタは2007年にSNSであるFacebookの機能をAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)として外部に公開して以来、Facebookがアプリケーション開発のプラットフォームであると呼称してきた。

 しかしFacebookのWebサイトの中でソーシャルゲームなど外部アプリケーションが実行できるという当初の方向性は、スマートフォンの台頭によってすぐに埋没する。メタは2010年代前半、スマホのプラットフォーマーになろうと独自スマホの開発を進めるもののこれも断念。2016年には「Facebookメッセンジャー」などのチャットアプリケーションを会話ボットのプラットフォームとして育てる構想を発表したが、会話ボットは「次のスマホアプリ」にはならなかった。

 Facebookは、ユーザーの行動を追跡して隠された趣味嗜好を明らかにするという広告主向けのプラットフォームとしては有効に機能し、メタに年間841億ドル(2020年12月期)という莫大な広告売り上げをもたらしている。しかし2018年にケンブリッジ・アナリティカ問題が明るみに出て以来、個人データを貪欲に集める姿勢には厳しい目が向けられている。

アップルのプライバシー保護対策で事業に打撃

 メタにとって特に打撃になったのは、米Apple(アップル)によるユーザー行動追跡を阻む取り組みだ。アップルは2021年春にリリースした「iOS 14.5」以降、アプリなどによるユーザー行動の追跡を監視したりブロックしたりする機能を追加し続けている。

 メタのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEO(最高経営責任者)は2021年10月25日(米国時間)に開いた決算説明会で「アップルによる変更が2021年第4四半期(2021年10~12月期)における業績の向かい風になる」「アップルの変更によって、Webにおけるeコマースや顧客獲得の効果が減衰する」との見解を示した。

 同じ決算説明会でメタのSheryl Sandberg(シェリル・サンドバーグ)COO(最高執行責任者)は、ユーザーが2021年6月にiOS 14.5を適用し始めて以来、ターゲット広告の正確さが低下し始めたほか、広告の効果測定も難しくなったと述べている。

 そして現在、ザッカーバーグCEOは他社にプラットフォームを握られる悲哀を嘆くとともに、アップルへの対抗心をたぎらせている。社名変更に併せて公開した「創業者からの手紙」にはこんな一節がある。

 「我々はまた他社のプラットフォーム上で(アプリケーションを)構築することがどのようなものであるかを学んだ。他社のルールの下で生きるということが、テクノロジー業界に対する私の見解を深く形作った。私は(こうした経験を通じて)、消費者の選択肢の欠如と開発者に課せられた高額な手数料がイノベーションを抑圧し、インターネット経済を阻害すると信じるに至った」