このため人権団体やえん罪被害者からは、長期間の勾留が自白を求める手段になっているという指摘が出ています。
長期間の勾留の一因となっているのが「罪証隠滅のおそれ」です。
裁判所はなぜ、検察が主張する「罪証隠滅のおそれ」を受け入れるのか。現職や元裁判官に聞くと、「あくまで一般的な考え方」という前提で複数の人が答えました。
ある裁判官は、「検察が起訴したということは、それなりの疑いがある。最終的には無罪になるかもしれないが、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれはあると言えばある」と話していました。
別の裁判官は、「自信を持って『罪証隠滅はない』と言えないので、口裏合わせを懸念する検察官の気持ちもわからなくはない」と話していました。
しかしそれでは、有罪が確定するまで犯罪者として扱わない「推定無罪」の原則に反しないのか。
私は、えん罪の可能性について考えないのか聞きました。
するとある裁判官はこう答えていました。
「有罪無罪を判断する裁判官は別にいて、保釈を判断する裁判官にとって有罪か無罪かは関係ない。罪証隠滅と逃亡のおそれを重視している。えん罪である人を長期間勾留してしまうのは本当に申し訳ないが、えん罪を主張するのであれば、やはり時間がかかることはしかたない」。
また、実際に「保釈を認めたら証拠隠滅をされたことが何度もある」と話す元裁判官は「実際に被告が裁判に来なかったり、証拠を隠したりした事例があると世間から批判を受ける」と話していました。
裁判が始まるまで、被告の逃亡などのトラブルを避けたいという意識が強いように感じました。