袴田巌さん(88)の再審で、静岡地方裁判所は9月26日に無罪の判決を言い渡し、10月9日に静岡地方検察庁が控訴の権利を放棄する手続きを取ったことから、袴田さんの無罪が確定しました。
これを受けて、静岡県警の津田隆好本部長が、21日午前11時ごろに袴田さんの自宅を訪れ、本人と面会しました。
本部長は「逮捕から無罪確定まで58年間の長きにわたり、ことばでは言い尽くせないほどのご心労とご負担をおかけし、申し訳ありませんでした」と述べ、袴田さんに頭を下げて謝罪しました。
その上で、「静岡県警といたしましてはよりいっそう、緻密かつ適正な捜査に努めて参ります」と述べました。
面会に同席した袴田さんの姉のひで子さん(91)は、「58年も前の出来事で巌も私も運命だと思っています。いまさら警察に苦情を言うつもりはありません」と述べました。
袴田さんはソファーに座った状態で謝罪を受けましたが、ひで子さんによりますと緊張した様子だったということです。
袴田巌さんに県警本部長が謝罪 “ご心労とご負担申し訳ない”
58年前、静岡県で一家4人が殺害された事件の再審=やり直しの裁判で袴田巌さんの無罪が確定したことを受けて、静岡県警察本部の津田隆好本部長が浜松市内にある自宅を訪れ、袴田さんに対し、「ことばでは言い尽くせないほどのご心労とご負担をおかけし、申し訳ありませんでした」などと謝罪しました。
姉 ひで子さん「死刑囚だったこと忘れるため」
本部長の謝罪のあと、袴田さんの姉のひで子さんが報道各社の取材に応じ、「巌に死刑囚だったことを忘れるためのふんぎりをつけてもらいたいと思ってきょうはお迎えしました」と話しました。
そのうえで「本部長さんは、ざっくばらんに申し訳ありませんでしたと巌に謝っていただきました」と謝罪を受けた時の様子を述べました。
また、無罪判決で証拠のねつ造や非人道的な取り調べが行われたと認定されたことについては、「当時の人ではないし、職務上、来ているのでしょうから、その人に言ったところで何もないと思って申し上げませんでした」と話しました。
そして、袴田さんの様子については「警察の偉い人がきょうは謝りに来るんだという話をしたところ、硬い表情をして顔を紅潮させていました。謝りに来たことが分かっているのかなと思いました」と話していました。
静岡県警 津田本部長「強制的 威圧的取り調べ 誠に申し訳ない」
袴田さんに対する謝罪のあと、津田本部長が報道各社の取材に応じ、「警察として捜査をして結果的に裁判がこれだけ長期間にわたった。巌さんとひで子さんにことばでは言い表せないほどのご心痛やご負担をおかけしたので、本日はそれに対しておわびをしたところです」と述べました。
その上で、無罪判決で非人道的な取り調べが行われたと認定されたことについて、津田本部長は「強制的、威圧的な取り調べがあったということで、誠に申し訳なく思っています」と謝罪しました。
袴田さん「一般の国民の言い分をどう認めるか」
袴田さんの支援者によりますと、津田本部長との面会のあと、支援者から袴田さんに対し、謝罪があったことについての受け止めを尋ねたということです。
袴田さんは、死刑への恐怖のもと長期間収容された影響で意思の疎通が難しくなっていますが、「権力は繰り返して認めていくだろうね、一般の国民の言い分をね。どういうふうに認めるか、それだけのことなんだろうね」などと話しました。
このあと、ひで子さんは袴田さんに「もう死刑囚ではないんだから安心しな」と語りかけていました。