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【瀋陽=出水翔太朗】中国の無人探査機「
論文が15日、科学誌サイエンスとネイチャーに掲載された。世界的に有名な米欧の科学誌に同時に掲載され、中国としては科学技術力をアピールする機会となった。
月の裏側は表側と比べて火山活動が活発ではないとの説もあったが、東京大の宮本英昭教授(地球惑星科学)は「裏側でも長期間にわたって火山活動が続いた可能性を指摘した重要な成果だ」と評価する。
嫦娥6号は6月、月最大のクレーター「エイトケン盆地」で1935・3グラムの試料を採取した。9月に公表された別の論文では主に試料の組成を紹介したが、今回は土壌に含まれる金属などを分析し、年代を特定した。
月の裏側は従来、クレーターの密度に基づいて年代を推定していた。今回の結果は、従来の手法で導き出される年代とおおむね一致しており、算出方法の信頼度が高まったことも意味している。
大阪大の寺田健太郎教授(惑星科学)は「月の進化の過程や火山活動の年代などに関する従来の説が、試料を実際に持ち帰ることで改めて検証できた。研究が進めば、従来の学説を塗り替える発見につながるかもしれない」と話している。
中国共産党機関紙・人民日報は6月、「嫦娥5号」が2020年12月に月の表側から試料を持ち帰って以来、105本の論文が投稿されたと報じた。「宇宙強国」を掲げる中国としては、国際的に影響力のある科学誌に研究成果を発表し続け、学術分野でも存在感を高める構えだ。