フィンテック、新規ユニコーン減少 事業の「習熟」に壁
知っておくべきこと:
・2024年1〜6月期に誕生したフィンテック部門のユニコーン9社は、米国から世界各地への分散化、BtoB(法人向け)サービスへの注力、商業的成熟度は低いが衰えないブロックチェーン(分散型台帳)技術・暗号資産(仮想通貨)への関心、最高財務責任者(CFO)向けテックに弾みがついていることを示している。
・フィンテック部門の新規ユニコーンは24年4〜6月期にはわずか2社で、21年4〜6月期の49社から大きく減少した。スタートアップの「成長最優先」思考が変化したことを示している。
フィンテック部門ではユニコーンはめったに誕生しなくなった。
24年4〜6月期の新規誕生数はわずか2社だった。一方、新型コロナウイルス下でテック投資ブームが最高潮に達しつつあった21年4〜6月期は49社だった。
このため、24年(6月末時点)のフィンテックの新規ユニコーン9社は注目すべき存在だ。以下では9社の顔触れと主なポイントを挙げる。
ポイント
・米国から分散化:新規ユニコーン9社のうち、米国に拠点を置く企業は2社(22%)にとどまった。一方、フィンテックのユニコーン全体では米企業は50%を超える。9社はウズベキスタン、香港、オランダ、インド、フランスの企業で、フィンテック企業が世界各地に広がりつつあるという傾向を示している。
・BtoBに注力:9社はいずれも法人向けサービスを手掛けている。これは市場の不安定化と高い顧客獲得コストを乗り切るため、フィンテックのスタートアップは法人を対象にするようになるとのCBインサイツの23年の予測を反映している。一方、現在のフィンテックのユニコーンの3分の1以上が消費者向けサービスを提供している。
・ブロックチェーンと暗号資産の隆盛:9社のうち、ハッシュキー(HashKey、香港)、米ポリへドラネットワーク(Polyhedra Network)、ヒューマニティー・プロトコル(Humanity Protocol、香港)などはブロックチェーンに関連するアプリケーションを手掛けている。これは投資家がこの分野に引き続き関心を持っていることを示している。もっとも、こうしたスタートアップの商業的成熟度は低く、高い企業価値に応じて成長しようとしても壁にぶつかる可能性がある。
・CFO向けテックに弾み:仏ピグメント(Pigment、財務計画・分析ソフトウエア)とデータスニッパー(DataSnipper、オランダ、財務リスク・監査ツール)はともにCBインサイツの「CFOテック市場マップ」に掲載されている。USバンコープの23年の「CFOインサイツ調査」によると、米企業の財務部門トップの32%が財務機能の新しいテクノロジーへの投資を優先的に進めている。
フィンテックの新規ユニコーン9社の顔触れ
・米アルトゥルイスト(Altruist):独立投資アドバイザー向けにテックツールを提供する資産管理プラットフォーム(24年4月のシリーズEで1億6900万ドルを調達。企業価値15億ドル)
・ハッシュキー:暗号資産の取引や資産管理などブロックチェーン技術を活用するツールに特化したデジタル資産金融サービス(24年1月のシリーズAで1億ドルを調達。企業価値13億ドル)
・ミューズ(Mews、オランダ):ホテル業界向けのクラウドベースの財産管理、決済システム(24年3月のシリーズDで1億1000万ドルを調達。企業価値12億ドル)
・Uzum(ウズベキスタン):ウズベキスタンで電子商取引(EC)、フィンテック、料理配達を提供。(24年3月のシリーズAで5200万ドルを調達。企業価値12億ドル)
・ポリへドラネットワーク:ゼロ知識証明と呼ばれる技術を活用し、ブロックチェーン間の取引を可能にする「zkブリッジ」を開発するWeb3(ウェブ3)インフラ企業(24年3月のシリーズAで2000万ドルを調達。企業価値10億ドル)
・ヒューマニティー・プロトコル:ブロックチェーンを活用したデジタルID認証を提供(24年2月のシードラウンドで3000万ドルを調達。企業価値10億ドル)
・パーフィオス(Perfios、インド):金融機関向けにリアルタイムの金融データ分析と与信システムを提供(24年3月のシリーズDエクステンションで8000万ドルを調達。企業価値10億ドル)
・ピグメント:法人向け経営計画・予測プラットフォーム(24年4月のシリーズDで1億4500万ドルを調達。企業価値10億ドル)
・データスニッパー:監査・金融部門向け作業自動化ツール(24年2月のシリーズBで1億ドルを調達。企業価値10億ドル)
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