注目校に聞く
市川(下)及川校長に聞く 入試に込めた「書くことを大切に」のメッセージ AI時代に逆張りの発想で
2024.10.31
市川中学校・高校(千葉県市川市)の教育方針は、親から受ける「第一教育」、教師から学ぶ「第二教育」に対し、自ら主体的に学ぶ「第三教育」。「卒業生の自分だからこそ託されたものがある」と語る及川秀二校長に、「楽しい学校」をどう受け継いていくか、聞きました。(上はこちら)
(おいかわ・しゅうじ)東京生まれ。市川中学校・市川高校を卒業して大学は数学科へ進学。1983年に母校に数学教員として奉職。広報部長、国際教育部長、教頭、副校長を経て2022年に第12代校長に就任した。
外の世界を見てほしい
――学校でもデバイスを使うようになると、活字離れが起こりませんか。
中3以降、媒体は変わるかもしれませんが、最後まで読み切る力はついています。また、生徒はタブレットを使うようになっても、手書きのスケジュール手帳を活用しています。試験の範囲でも何でも手帳に書いています。
生成AIの時代ですから、なおさらアナログな取り組みが活きてきます。スマホで調べたものは、この言葉の意味を「理解した」ではなく「知った」だけ。画面にポンと出てきてポンと消してでは、理解して頭の中に残すところまではできません。例えば土曜講座の受講レポートを読むと、その場にいない人が読んでも、ああこういう流れで話していたんだなとわかる内容になっています。年々書く力が身についていきます。
新入生は最初の定期試験で記述の多さに驚きます。覚えただけでは書けないと気づき、柔軟に勉強のスタイルを変えます。一問一答型の問題は知っていれば解けますが、理解して解ける、書けることが大事だと思います。
――中学入試でも記述が多いです。
入試に込めたメッセージは、小学校でもしっかり読み取り、書くことを大切にして勉強してほしいということです。知識があるだけではなく、それらをひもづけて、自分の言葉で書いてほしいので、入試もそういう形式にしています。そういう力を持っている子を求めているということではなく、そういう勉強方法をやってきてほしい、ということです。
アドミッションポリシーの「知的好奇心が旺盛で、何事にも興味・関心を持ち、新たなチャレンジを楽しめる児童・生徒」というのは、考えることを楽しんでほしいというメッセージです。ここでもやはり、「楽しい」がキーワードなんです。
――今年の夏は、制服も話題になりました。
猛暑の中、昨年導入したハーフパンツ(半ズボン)が注目されました。中学の男子がよくはいています。ハーフパンツは海外の姉妹校や、交流校ではよく見かけますし、特別気にしていませんでしたが、世間では珍しいようですね。全国の学校や教育委員会から多数の問い合わせをいただきました。
――国際教育について聞かせてください。
海外に行く、ということでいうならばシンガポール研修(中3)、コロナで中断していた英ケンブリッジ大学研修(中3・高1)、米ボストン・ダートマスカレッジ研修(高1・高2)がようやく復活し、春にはニュージーランドの姉妹校での研修(中3・高1)があります。1年間でおよそ130 人くらいが海外研修に参加しますが、応募はその何倍にもなるので、様々な角度から研修へ思いを綴った小論文での選考を行っています。
もちろん海外に行くことだけが国際教育ではありません。校内でも「グローバル・スタディーズ・プログラム」、巣鴨中学校・高校が主催する「ダブル・ヒーリックス(DH)・オンライン」、本校と鷗友学園女子中学高校が共催する「ダブル・ヒーリックス・市川×鷗友 (DHIO) 」のように、国内でも国や学校を超えて協働するプログラムがあります。DHや文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」のエントリーシートを書くことが、自分の将来を一度俯瞰(ふかん)したり、海外への思いを確認したりすることにつながっていますので、それも国際教育の大きな柱です。
――海外研修は、行き先も内容も多様です。
ケンブリッジ大学研修のテーマは、サイエンスとリベラルアーツ、ボストン・ダートマスカレッジ研修はリーダーシッププログラム、中3のシンガポール修学旅行は、シンガポール国立大学の学生とのBrothers&SistersProgram、ニュージーランド研修はホームステイというように、研修ごとにテーマを設定しています。他にも神田外語大と連携する探究講座もあります。とにかく外の世界を見てほしいんです。20歳あたりで将来を見通すとしたら、中高生の時期にいろいろなものを見て経験を積んで、その上で判断してほしいですからね。