「時間が足りない!」と嘆いてない?『やめる時間術』要約をチェック
「やるべきこと」が多すぎて、「やりたいこと」に時間を取れない……そんな悩みを抱えるビジネスパーソンは多い。時間の使い方を身に付けることは、今後の人生の充実度合いに大きく影響しそうだ。本書は、「使った時間の現状把握」こそ、豊かな「自分時間」を生み出す第一歩だと提案する。自分の時間を作りたい方は必読!
タイトル:やめる時間術 24時間を自由に使えないすべての人へ
著者:尾石晴(ワーママはる)
ページ数:224ページ
出版社:実業之日本社
定価:1,500円(税別)
出版日:2021年1月28日
Book Review
「時間がない」は現代人共通の悩みである。特に、子育てや介護など、仕事をしながら自分以外の人やコトに多くの時間を割かざるを得ない人は、目の回るような毎日を送っているに違いない。「やるべきこと」が多すぎて、「やりたいこと」を考えることすらできなくなっているという人もいるだろう。
本書の著者は、2人の子育てをワンオペで行う超多忙なワーキングマザーだ。育休後、仕事に復帰してからは「独身時代とはレベルが違う」ほど忙しく、追われるような日々に突入した。数々の時短テクを試してみたがうまくいかず、泣く泣く使っている時間を「分解」していった結果、この「やめる時間術」にたどり着いたという。
お金を増やしたいなら収支を見直し、ダイエットなら食べたものを記録するだろう。しかし私たちは、予定を立てることはしても、実際に使った時間をチェックすることは少ない。だが、この「使った時間の現状把握」こそ、豊かな「自分時間」を生み出す第一歩だという。
人生の持ち時間は有限であり、時間の使い方は「人生の過ごし方」に他ならない。本書を「自分らしい人生を送りたい、諦めたくない」と願う、すべての人に贈りたい。
時間がない! 思考から抜け出す
常に焦っている「時間がない病」
著者は結婚・第1子出産を経て仕事に復帰した後、フルタイムワンオペ育児で、やるべきことに忙殺されるようになった。毎朝7時に家を出て、保育園に子どもを送り、通勤中にメール処理。ゆっくりお昼を取る暇もなく業務をこなし、18時にダッシュで退社。保育園へお迎えに行き、子どもにご飯を食べさせ風呂に入れ、家事を済ませたら、持ち帰り業務をする。あっという間に24時を回ってベッドに入った途端に就寝……。「自分の時間」などまったくなく、ただひたすら「やっつけ仕事」をしているような日々だった。
当時の著者は「やること、やらなければならないことが多すぎるために時間がない」と考えていた。しかし、「やること、やらなければならないこと」とはそもそも何なのだろうか。
著者の場合、シンプルに言えば「仕事、子どもの世話、家事」である。この中にはたくさんのタスクが含まれている。仕事であればメール処理、資料作成、部下のマネジメント。子どもの世話なら保育園の送り迎え、寝かしつけ。家事は料理、洗濯、掃除……。
当時の著者は「やっていることや使っている時間」を大雑把に捉え、漠然と「これもやらなきゃ、あれもやらなきゃ」と焦ってばかりいた。そして、もっとも大切な「やめる」という選択肢には考えも及ばなかった。
「時間の財布」を持つ
時間がない人は「1日のうち、自分が何にどのくらい時間を使っているのか」を正確に把握できていない。時間は目に見えないからだ。
お金を貯めたいと思ったら、まず「収支の把握」をするだろう。それと同じように、時間を作りたいなら、「時間の把握」をしよう。そのためには「時間の財布」という考えを持つことだ。
私たちの「時間の財布」には、毎日、24時間という時間が入っている。自分はこの24時間を何に使っているのか。これを把握できない限り、時間を作れるようにはならない。「時間の財布」から出ていった「時間の使い先」を確かめて、「時間の見える化」をする必要がある。
著者はこれまで、メールの返信を早くする方法や食材の冷凍保存など、さまざまな時短テクニックを試してきたが、継続して時間を作ることはできなかった。それは、メールの返信や夕食作りにかかる時間を把握できていなかったからだ。
「時間の財布」の残金と使途がわからなければ、節約術だけ取り入れてもうまくいかない。まずは全体を「見える化」した「時間の財布」を持ち、「時間の使い方」を仕分けしていくことから始めよう。
時間の「見える化」
時間は3つに分けられる
私たちの24時間は、次の3つで成り立っている。まずは自分が使っている時間を3つに分解し、明確に数字で把握しよう。
(1)生活時間(睡眠、食事、入浴、排泄など、生きていく上で不可欠な時間)
(2)ルーチン時間(仕事、家事、送迎など、社会的に拘束される時間)
(3)自分時間(自由選択時間、余暇)
普段の生活で「時間がない!」と感じるのは、「自分時間」が少ないときではないだろうか。そのため、「毎日忙しく時間を使い切っているのに、満足感がない」となる。まずは3つの時間を見える化してみよう。
「時間の見える化」をする3つの方法
ここでは、「時間の見える化」をするテクニックを3つ紹介する。
1つ目は、24時間タイムログをつけることだ。紙を用意して、寝ている時間を塗りつぶす。残った十数時間が「使える時間」だ。次に、減らすことのできない生活時間を塗りつぶす。そしてルーチン時間に線を引き、最後に自分時間に線を引く。そして、これを分類別に色付けする。
2つ目は、ふせんで細分化することだ。3日間のタイムログを大まかにつけたら、何に時間を使っているのか、ふせんに書いて貼っていく。まずは、ルーチン時間からやってみよう。仕事の時間であれば、何の仕事に何時間使ったかを書いていく。メール返信に30分、ミーティングに90分……といった具合だ。
こうして見える化していくと、いろいろなことに気づくだろう。「この30分は何してたんだろう?」というような「使途不明時間」が浮かび上がってくることもある。
メール返信を30分程度で済ませているつもりが、実際にはそれ以上かかっている「見積もりオーバー時間」もあるかもしれない。この場合は、ストップウォッチで「メールを書いている時間」「メールの内容を理解している時間」「返信の文章を書いている時間」など、細かく分けて把握しよう。
3つ目は、使った時間に成績をつけることだ。使った時間に対する満足度を○△×で記入する。通勤時間に30分かかっていたとして、ストレス解消のためにスマホゲームをしているなら○、特に楽しくもないのにスマホゲームをしている人は×かもしれない。○△×は、本人にしかわからない。
衝動的になっていないかを考える
時間を見える化すると、「自分の行動」が見えてくる。時間の使い方には、その人の行動、そして生き方が表れる。
私たちが持っている時間は有限だ。1日24時間、1週間は168時間と決まっていて、貯めておくことも誰かに譲ることもできない。私たちの人生は、今この瞬間が重なって作られていく。
時間の見える化により、「やりたいことを満足にする時間がない」ことも見えてしまい、逆に辛くなる人もいるだろう。そんなときは、やりたいことを「行動と衝動」に分けてみよう。
やりたい! 面白そう! と衝動的に予定を入れていくと、「衝動時間」が増え、「時間の財布」から時間が出ていき、本当にやりたいことに使う時間がなくなってしまう。やりたいことができたら、「これは本当に自分が今やるべきことなのか?」と考えるようにしよう。
タイムパフォーマンスを上げる
大事な仕事はゴールデンタイムにする
時間の見える化により、使っている時間の「量」が見えると、「質」についても考えられるようになる。コストパフォーマンスならぬ、タイムパフォーマンスだ。
ここでのタイムパフォーマンスとは、かけた時間に対する「成果や評価、自分の満足度、周りからの感謝」など、数字では計測できないものも含む。ここでは、タイムパフォーマンスを上げる基本的な方法を2つ紹介しよう。
まず、大事な仕事はゴールデンタイムにすることだ。同じ作業をするにしても、時間帯によってタイムパフォーマンスの良し悪しは異なる。人間の脳にとって、1日でもっとも生産性の高い「ゴールデンタイム」は、起床後3〜4時間だと言われている。重要な仕事は午前中に持ってきて、集中力の途切れやすい午後に「経費精算」や「チームミーティング」のような、あまり思考力を必要としない仕事を入れるのも、ひとつの手である。
「瞬間目線」と「つながり目線」を持つ
次に、「瞬間目線」と「つながり目線」を持つことだ。「衝動」に使う時間は「消費」になることが多く、将来につながる時間にはなりにくい。使っている時間が衝動なのか、未来につながる行動なのか。それを見極めるのが「瞬間目線」と「つながり目線」である。
「今の自分と未来の自分にどのくらいつながりを感じるのか」という考え方を「自己連続性」と言う。「自己連続性」を意識することで、時間の使い方の質は向上する。
「自己連続性」を意識するには、1日・1年後・10年後という「3つの眼」を持つといい。3つの眼を使って「この時間は1日が終わったときに満足がいく時間か? 1年後は? 10年後は?」と自分に問うてみるのである。
私たちは、つい日々の「やるべきこと」に追われてしまう。しかしそれは本当に「やるべきこと」なのだろうか。将来につながる時間となっているのだろうか。
時間の「引き算」
価値観をあぶり出す
時間を見える化したら、「時間の引き算と足し算」が重要になってくる。「時間の引き算」とは、自分の人生の優先度に基づいて、優先度の低いものにかける時間を減らすことだ。本書における時間の考え方を式で表すと、次のようになる。
自分の使っていた時間(見える化)-価値の低い時間(引き算)=本当にやりたいことに使う時間(足し算)
自分の価値観に基づいた「引き算力・やめる力」をつけておくと、「満足のいく時間」を増やすことができる。また「時間の引き算」をしていくと、自分の価値観があぶり出される。引き算によって何かをやめれば、やりたいことが見えてくるからだ。
「マイものさし」を持つ
どの時間を足したり引いたりするかは、自分の価値観が基準となる。この価値観を明確にするためには、時間に対する「マイものさし」を持とう。ここでは、時間の足し引きに役立つ3つの「ものさし」を紹介する。
1つ目は、自分が使っている時間を「投資(未来のために使うもの)」「消費(今使うべきもの)」「浪費(無駄使いになっているもの)」の3つに分ける「ものさし」だ。例えば、食事の準備は「消費」だ。ところが、会社の上司とのランチなら、仕事のミーティングを兼ねたり、報連相や情報収集目的だったりと、「投資」の時間になるかもしれない。自分が過ごしている時間はどれに当てはまるのか。常にアンテナを立てておこう。
2つ目は、使う時間を「時給換算」して価値を測る「ものさし」である。計算方法は、1ヶ月の「収入」を、それを得るために使った「時間」で割るだけだ。時給2500円の人が1時間2000円の家事代行サービスを頼むとする。そこから生まれた1時間を「自分の時間」に使ったら、価値ある時間となるだろう。
3つ目は、コントロールできる時間かどうかを分ける「ものさし」だ。自分ではどうにもならないことに悩み、時間を使っている人は多い。例えば、通勤に2時間かかることを嘆いていても、会社の場所を移動させることはできない。自分でできるのは「自宅の場所の選定」や「会社を変える」ことだけだ。コントロールできないことで頭を悩ませ続けるのではなく、自分にとって有用な時間に転換すればいい。
時間の「足し算」
現実と理想のギャップを明確にする
「引き算」が「人生の優先度付け」なら、「足し算」は「人生の選び方」であり、引き算してできた時間に「理想の1日」を過ごすために必要な「点」を打っていく作業だ。
「足し算」をするために、まずは「理想の24時間の過ごし方」を書き出してみよう。条件は3つ。できない理由は無視すること、24時間好きに使ってOKという前提で考えること、誰にも見せないことだ。
理想の24時間を書いたら、現実とのギャップを書き込んでいく。そして、そのギャップを埋めるために必要なものを書き出す。
こうすると、今までぼんやりとしか想像できていなかった「理想の1日」が言語化できるだろう。すると、理想に近づくための気づきが生まれる。この気づきが「足し算」すべき行動を明確に示してくれるはずだ。
一読のすすめ
要約では「時間の見える化」「時間の引き算」にフォーカスしたが、本書では、豊かな自分時間を作るための「時間の足し算」についてもじっくり解説されている。また「専業主婦の妻の時間の使い方がよくないように見えます」「いつも延長する会議を時間通りに終わらせるいい方法はありますか?」などといったよくある悩みに著者が答えてくれている章もある。気になる方は、ぜひ本書をご覧いただきたい。
年齢を重ねるにつれて、自分以外の「ままならない」事情は増えていく。結婚も出産も、働く会社も自分で選択したはずなのに、それらに振り回されて、幸せを感じられないという人もいるかもしれない。しかし、それらを選んだのも自分なら、自分の人生を選ぶのも自分である。本書に興味を持たれた方は「自分の人生を選びたい」人のはずだ。諦めず、本書を片手に、豊かな時間を獲得してほしい。
※当���事は株式会社フライヤーから提供されています。
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著者紹介
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尾石晴(ワーママはる)(おいしはる)
外資系メーカーに16年勤務し、うち6年は管理職として活躍。長時間労働が当たり前の中、「分解思考」で時間を捻出。ワンオペ育児をこなしながら残業0時間を達成し、チームを社内表彰に導く。その傍ら、発信業・不動産賃貸業・ヨガインストラクター・メンタルオーガナイザー®・ライフオーガナイザー®など、会社員以外での収入経路を次々と確保。2020年4月に会社員を卒業し、サバティカルタイムに突入。音声メディア「Voicy」では1000万回再生超えを記録し、トップパーソナリティとして活躍中。その他、「note」や「Twitter」でも日々発信している。SNSの総フォロワー数は約5万人。2020年にはヨガスタジオ「ポスパムfukuokaスタジオ」を立ち上げ、代表を務める。2児の母。
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