自己分析で強みを見つける!無謀な転職を防ぐ! 自分に合った転職先を見つける「キャリアの棚卸し」
転職サイトで求人を選ぶ時、給与や勤務地などの条件だけで判断していませんか? 実はそれが、転職活動で苦戦する原因になることも多いので要注意。自分に本当に合う会社を見つけ、転職活動をスムーズに進めるには、自己分析を行って、「キャリアの棚卸し」をすることが欠かせません。なぜ棚卸しをすべきなのか、そして具体的に何をすればいいのかを詳しく解説します。ダウンロードして使える「棚卸しシート」も付いています。
キャリアの棚卸しって何?
キャリアの棚卸しとは、「これまで自分が何をやってきたのか」を洗い出す作業のことです。具体的には、社会人になってから現在までを振り返り、やってきた業務を書き出します。そこから自分が持っているスキルや経験を整理し、自分の強みや得意なことを見つけ出して、転職活動での会社選びや仕事選びに役立てることがキャリアの棚卸しをする目的です。
そう聞くと、「自分は大した仕事はしていないから、書くことなんて何もない」と思うかもしれません。でもキャリア棚卸しとは、特別な仕事や大きな成果を出した仕事だけを振り返る作業ではありません。むしろ普段ごく当たり前のようにやっている仕事を振り返ることこそが重要です。
同じ仕事をしていても、「どんなことを意識して取り組んでいるか」「どのような工夫をしているか」などは人によって異なります。また、その業務を通して何を身に付けたかも人それぞれ違います。キャリアの棚卸しでは、単なる業務内容だけでなく、その仕事に取り組む姿勢やそこから得たものまでを掘り下げることで、自分でも気付かなかった強み・弱みや得意なこと・苦手なことを把握できます。つまり、棚卸しをすることで、「自分のキャリアはこういうもの」という思い込みを取り払い、現状を客観的に把握できるのです。
転職活動の最初にキャリアの棚卸しをすべき理由
1、自分が目指せる転職先が分かる
キャリアの棚卸しをすれば、「自分の今のスキルと経験で目指せる会社はどこなのか」を知ることができます。いくら給与や勤務地などが希望通りでも、その会社が自分のスキルや経験を必要としていなければ、採用されるのは難しくなります。その結果、いくら応募しても採用されず、転職先がなかなか決まらないというつらい思いをすることになってしまうのです。たとえ転職できたとしても、自分の強みを生かせる機会がない会社を選んでしまったら、活躍することもやりがいを感じることもできず、また転職を繰り返すことになりかねません。キャリアの棚卸しをする最大のメリットは、本当に自分に合う転職先を選べることなのです。
2、転職先の選択肢が広がる
キャリアの棚卸しをしておくと、求人広告を見た時に自分がやってきた業務と照らし合わせて、「この経験やスキルなら自分にもある」と気づくことができます。「この業界や職種は自分には縁がないと思っていたけれど、実は自分のキャリアが生かせそうだ」という発見が多くなるので、転職先の選択肢も広がります。
3、転職のタイミングを判断できる
もし自分が転職したいと考えていた企業の求人を見た時に、その会社が求めるスキルと自分のスキルに差がある場合は、「現在の会社でもう少し経験を積んで、応募資格にあるスキルを身につけてから転職にチャレンジしよう」などと、最適な転職のタイミングを判断する材料にもなります。
4、応募書類や面接準備の土台になる
キャリアを振り返って洗い出した内容が履歴書や職務経歴書を作成するときに役立つのはもちろん、キャリアの棚卸しは面接対策にもなります。実際にやってきた業務のエピソードから強みや弱みを語れるように整理しておけば、面接でも説得力のあるアピールができるからです。キャリアの棚卸しは、転職先選びから面接まで幅広いく役立つことを知っておきましょう。
キャリアの棚卸しのやり方
「キャリアの棚卸しをしましょう」と言われても、具体的に何をすればいいのかわからない人も多いでしょう。そこで、「キャリアの棚卸しシート」に記入しながら、5つのステップで行うことをおすすめします。シートは下記のリンクからダウンロードできますので、ぜひ活用してください。
【STEP1】一日の業務、行動を書き出す
いきなり過去にさかのぼって新人時代からの業務を振り返ろうとすると、思い出すのに時間がかかってしまうので、まずは思い出しやすい現在の一日の仕事を振り返り、自分がやっている業務を書き出してみましょう。「朝出社したら、メール処理をする」「13時から定例ミーティング」「16時からクライアントにアポ取り」といったように、出社から終業までの行動を全て書き出します。
ポイント
現在の仕事の代表的な一日を書き出しているうちに、「こんな業務もしているな」「こんな仕事が発生する日もあるな」など思い出せる業務が増えるはずなので、それもどんどん書き足していきましょう。
【STEP2】それぞれについて姿勢と実績を書き足す
次に、書き出したそれぞれの業務について、「どんな姿勢で取り組んだか」「どんな実績を出せたか」を書き出します。
「姿勢」については、その業務をする時に気を付けたことや工夫したこと、意識したことを振り返ってください。すると「メールは遅くとも翌日までに返信することを心掛けた」「ミーティングではタイムマネジメントを徹底した」「提案の前に、お客さまの考えをヒアリングする時間を多くとるようにした」といったことが書き出せます。
「実績」については、数字や明確な事実としての実績を書くのが難しければ、「やりがいを感じたこと」を書いても構いません。例えば、書類作成なら「上司から見やすいと褒められた」、コーディングなら「他の人より早く完成させた」など、自分なりにやり遂げたと思えたことや手応えを感じたことでOKです。あまり大げさに考えず、何でもいいので書いてみましょう。
ポイント
キャリアの棚卸しで重要なのは、業務そのものの内容より、その業務に取り組む姿勢やそこから得たものを把握することです。例えば「打ち合わせ」という業務自体は多くの人がやっているとしても、何も考えずにただ参加しているのか、「相手の意見を聞くことを大切にしているのか」は伝えなければ分からないこと。後者のように伝えられた方が、企業側もプラス評価をしやすいのではないでしょうか。「ミーティングなんて誰でもやっているじゃないか」などと思わず、まずは自分がやっていることを何でも書き出してみて、一つ一つを「姿勢」と「実績」で振り返ることが大切です。
【STEP3】1~2をこれまでのキャリア分繰り返す
「現在の一日」を洗い出したら、同じ作業を、過去の職務、部署異動、昇進、転職など“変化のタイミング”ごとの一日を思い出してやってみましょう。エンジニアであればプロジェクトごとに区切るのもよいでしょう。「棚卸しシート」のSheet1を複製すると便利です。
【STEP4】キャリアの一覧表にまとめる
「棚卸しシート」のSheet2「キャリアの一覧表」に、【STEP3】までに書き出した情報をまとめていきます。【STEP2】で作成した枚数をそのまま行にしてもいいですし、同じ部署にいた時期でも業務の種類が異なる場合は細かく行を分けてもOKです。(記入例のシート参照)
以下の項目ごとに埋めていくだけの記入箇所と、追加で書き出す項目がありますが、当てはまるものがない項目は空欄のままで構いません。
- 「所属」…会社名・部署名・役職・プロジェクト名など
- 「在籍期間」…その会社・部署・役職・プロジェクトに在籍・参画した期間
- 「規模」…部署やプロジェクトの人数、予算の規模、チームのミッションなど
- 「職務内容」…主な仕事内容やプロジェクトの内容、個人のミッション、役割など
- 「実績」…目標達成率、売上実績、通った企画など
- 「使用ツール」…その業務や組織で使用したツールや言語
- 「取得資格」…その時期に取得した資格
- 「姿勢」…心掛けていたこと、得意だったこと、うまくいったこと、成功したこと
- 「やりがい」…その業務の中でやりがいを感じたこと、うれしかった出来事
- 「苦手なこと」…苦労したこと、失敗したこと
- 「反省」…苦手なことをどう克服したか、失敗や苦労から何を学び、その後の仕事にどう生かしたか
- 「習得したスキル」…得意なこと・苦手なことを通して身に付けたこと、できるようになったこと
- 「不満」…その業務の中で不満を感じたこと、改善したかったこと
ポイント
成功したことだけでなく、失敗や苦労を振り返るのは、「初めての仕事や難しい仕事に自分がどう対処してきたか」を知るためです。転職すると、新しい職場や環境で仕事することになるので、慣れるまではなかなかうまくないこともあります。その間も仕事に前向きに取り組み、成果を出すために努力できる人を企業は採用したいと考えるので、「過去の苦労や失敗をどう乗り越えたか」を振り返っておくと、それがそのまま転職活動でアピールできるエピソードになります。
【STEP5】俯瞰して「強み」を見つける
【STEP4】で作成したシートから、自分の強みを3〜5つほど探し出します。「強み」となり得るものは、どの時期も一貫している姿勢や、経験から学んだこと・得たことに着目すると探しやすいでしょう。強みが多い方が、それがマッチする求人の数も多くなるので、最低でも3つは探してください。
応募したい企業や、業種・職種が明確にある場合
【STEP5】までで強みの洗い出しは完了ですが、応募したい企業や業種・職種が既にある場合は、その求人情報にある応募資格や求めるスキルの欄と自分の「棚卸しシート」を照らし合わせてみるのも良いでしょう。
求人広告の「応募資格」を見れば、その会社がどんな経験やスキルを求めているのかが分かります。キャリアの棚卸しができていれば、その企業の条件に合致するものや、応用できる何かが今の自分にあるのかを判断することができます。
キャリアの棚卸しが終わったら
キャリアの棚卸しをして、自分の強みが明らかになったら、転職サイトでその強みが生かせる求人を探してみましょう。例えば、自分の強みを検索キーワードとして入力してみると、その経験やスキルを必要としている思いがけない業界の企業がヒットするかもしれません。
「一人でキャリアの棚卸しをやってみたがが、どうしてもうまくできない」という人がいたら、転職のプロであるキャリアアドバイザーに相談するという方法もあります。ヒアリングをしながらその人のキャリアを整理し、強みを見つけ出すのがキャリアアドバイザーの仕事です。転職先選びについても客観的なアドバイスがもらえるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
「自分の強みや得意なことは何か」を普段から意識している人は少ないでしょう。だからこそ、キャリアの棚卸しをすることが重要です。本人は「誰でもやっている業務だから、大した経験じゃない」と思っていても、実はその業務経験を求めている企業はたくさんあるもの。例えば、ITエンジニアで特定の開発言語しか使ったことがないというのを「弱み」と決め付けるのではなく、「その言語での開発経験が3年以上ある」と捉えれば、そういう人材を求めている求人と出合える確率はぐっと高まるのではないでしょうか。
ぜひ「キャリアの棚卸し」で強みを洗い出し、自分に合った転職先を見つけるヒントにしてくださいね。