起業家の失敗談をテーマにしたカンファレンス「FailCon Japan」の午後、nanapiの古川健介氏が登壇。「CGMサービスを作る上での失敗」というテーマでトークを行った。
積み重ねてきたCGMサービスの運営経験
学生時代からCGMサービスの運営をしてきた古川氏。初めはユーザが投稿しやすい環境を作り出すために、運営者である自分が責任をとるという形式でサービスを運営していた。だが、この結果、警察から捜査関係事項証明書が100通以上届いたり、内容証明が100通以上届いたり、訴訟での損害請求額が��額で6800万円にものぼったという。
自分がすべての責任を負うという形ではコストが掛かり過ぎると考えた古川氏は、次に「したらば掲示板」というコミュニティサービスの運営に携わる。これはユーザが掲示板の管理人となり、その掲示板での責任は管理人が負うというものだ。このときは運営側の責任は減ったが、ユーザは掲示板は「自分のモノ」という認識を持ちやすく、広告を貼ることなどが難しかった。サービスは成長しているものの、マネタイズがうまくいかず、負担が増えていったため、事業譲渡に至った。
現在は、暮らしのレシピサービスである「nanapi」やモバイルのQ&Aサービスである「アンサー」などを運営している古川氏。彼が考えているCGMサービスを運営していく上での重要なポイントとは一体どういったものなのか。
CGMサービスから得た教訓
古川氏が参加者に伝えたCGMサービスの運営から教訓は、
- ユーザに対価を払わず投稿してもらうのは非常に難しく、トレードオフが多い
- あちらを立てればこちらを立たず、ということが起こりやすい
- 人と人とのコミュニケーションなので思い通りにいかない可能性は高すぎる
というもの。以上の教訓から、古川氏はCGMを作るためのポイントを5つ語った。
CGMを作る際の5つのポイント
- ロジカルに考えない
- 数字で考えない
- 意味不明にする
- ゴールを明確にしない
- 手段を目的化する
いずれも、サービスを運営する人にとっては困難なことではないだろうか。普通に考えれば、ロジカルに考え、数字を重視し、ゴールから逆算し、意味を明確にし、目的のために手段を選ぶ。だが、CGMではそれが成り立たない、と古川氏は語る。
古川氏「人にはわからないからこそ知りたくなるという面があります。ゴールなんかもどうでもいいことで、このアクションによってユーザがどういうことになるかが大事。手段自体が目的化するという点については、初音ミクの例がわかりやすいと思います。初音ミクを使って曲を作っている人は、曲を作ることを目的にしているのではなく、初音ミクを使っていかに面白いことをするかを考えている。その行為自体が楽しいので、それに集中して次第に盛り上がっていく。CGMもこれが重要だと思っています。」
古川氏は自らがコミュニティサービスの中に入り、ひとりのユーザとしても楽しんでいるように感じられる。こうした教訓に加えて、自らもユーザとしてコミュニケーションを楽しむこと、ということもCGMサービスを運営する上で大切だと考えられるかもしれない。
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