タコが複数の種の魚をまとめて狩りをしているという驚きの研究結果が発表された。狩りのチームの多くはタコ1匹と2~10匹ほどの複数の種の魚で構成されていたという。論文は、9月23日付けで学術誌「Nature Ecology & Evolution」に発表された。
研究を率いたのは、ポルトガルにあるリスボン大学とドイツ、マックス・プランク動物行動学研究所の博士研究員であるエドゥアルド・サンパイオ氏だ。氏は2018~2019年に紅海で、タコと複数の種の魚たちが繰り広げる次のような行動を観察し、興味をそそられたという。
狩りはうまく行っている、と思っていたら、1匹のアカハタが勝手な行動を始めた。すると、これに気づいたワモンダコ(Octopus cyanea)が瞬時に体の色を白と黒に変化させ、腕を1本繰り出し、アカハタ(Epinephelus fasciatus)にパンチを食らわせた。殴られたアカハタはおとなしく持ち場に戻り、仲間と一緒に狩りを続けた。
「タコと魚が本当に協力して狩りをしているのか、それとも魚たちがタコの後をついて回っているだけなのかが謎でした」とサンパイオ氏。(参考記事:「あなたの知らないオクトパス」)
そこで氏は、研究仲間とともに2台のカメラリグを使って紅海で狩りをする魚の群れを撮影し、コンピューターソフトウェアでこれを再現した。そして100時間を超える映像を確認した結果、研究チームは、ワモンダコが魚の群れをまとめ、協力させていると結論づけた。
「獲物を見つけるのは、ヒメジ(ウミヒゴイ)などの活発な捕食魚です」と、サンパイオ氏は説明する。そしてタコは「狩り仲間のために隠れている獲物を追い出す役割を担います」
「群れがちゃんと動いていれば、全員が満足し、何の問題もありません」。ところが、まれにアカハタのようなトラブルメーカーがみんなの仕事を台無しにすることがある。これらの捕食魚は通常、獲物が自分たちのほうへやってくるのを待ち伏せするが、仲間がしっかり動いてくれなければ狩りが遅くなる。
「群れの中にアカハタがいると、2回に1回の割合で殴られています。協力しないのはあいつだと、タコが理解しているのは明らかです」と、サンパイオ氏は言う。(参考記事:「【動画】近くのタコに物を投げつけるタコ、初の報告」)
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