Apple(アップル)の自動運転開発が正式に終了した。2024年2月にも開発中止は報じられていたが、同年9月にアップルが米カリフォルニア州の道路管理局(DMV)に対し、自動運転車のテスト許可を取り消したことで、海外メディアはプロジェクトの停止が確定したと報じている。
かつては、自動運転の「Apple Car(アップル・カー)」を発表するのでは、と期待されていたアップル。巨額の費用を投じて自動運転プロジェクトを推進していたものの、実現には至らぬまま停止することになってしまった。
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■DMVのテスト走行許可を取り消し
アップルはDMVから2017年に、セーフティドライバーありでの自動運転車のテスト走行許可を得ており、2025年4月まで有効であった。しかし同社は2024年9月25日にDMVへ連絡し、テスト許可証の取り消しを行った。その後、許可は9月27日付で正式に取り消された。これにより、自動運転プロジェクトが完全に終了したということになる。
DMVから許可を受けた企業は、登録台数や走行状況などの報告が義務付けられている。
アップルは2017年に車両3台を登録し、2018年1月には27台、同年5月に55台、同年7月に66台、同年9月に70台と着実に登録台数を増やしていった。走行距離は、2017年(2016年12月~2017年11月)に838マイル、2018年に7万9,754マイル、2019年に7,544マイル、2020年に1万8,805マイル、2021年に1万3,272マイル、2022年に12万5,096マイル、2023年に45万2,744マイルと推移している。増減の波はあるものの、2022年以降は明らかに実証に力を入れていたことが分かる。
登録ドライバー数については、2023年3月ごろに過去最大の201人に達し、そのわずか2カ月後には145人まで大幅削減するなど、安定しない状況が続いていた。2024年5月の最終報告では、68台の車両と15人のドライバーを登録していたようだ。
■自動運転開発プロジェクト「タイタン」
アップルの自動運転開発は、2014年ごろに始まったと言われている。「Titan(タイタン)」と呼ばれるプロジェクトのもと、当初はEV(電気自動車)・スマートカーの開発を行うと報じられていた。しかしその後、DMV発行する自動運転の公道実証ライセンスを取得したことなどが明らかになり、自動運転開発を行っていることが確実となった。
プロジェクトは全て水面下で進められており、詳細は一切明かされていなかった。当初はハンドルなどの手動制御装置を備えないレベル4以上のオリジナルモデルの開発を進めていたとされる。
しかし2022年に入り、開発の方向性が大きく変更されたことが報じられた。米メディアによると、アップルは手動制御装置を備えたレベル3市販車の開発にシフトしたという。2024年1月にはさらにレベルを下げ、レベル2+相当のADAS(先進運転支援システム)搭載車を2028年以降に発売する計画が報じられた。もはや自動運転車ではなく、一般的なEVのレベルの車両開発にグレードダウンしている。従業員のレイオフのニュースもたびたび報じられた。
【参考】関連記事としては「Apple Car暫定情報 自動運転技術に注目」も参照。
■Appleの自動運転技術に注目する企業も?
そして2024年2月に、アップルのCOO(最高執行責任者)であるジェフ・ウィリアムズ氏とタイタンを統括していたケビン・リンチ氏が、開発に携わる従業員2,000人に開発中止を伝えことが、複数の関係者の証言により判明した。AI(人工知能)開発により注力していくことが要因のようだ。従業員の一部がレイオフの対象となるが、ほとんどは生成AI開発部門に移るとの報道があった。
そもそもアップルは自動運転開発プロジェクトについて公には一度も発表を行っていない。そのためプロジェクトの終了についても公式発表はなかった。
同社は数十億ドルと言われる資金を投じ、約10年間に渡りプロジェクトを推進してきたとされている。これまで研究開発してきた成果はどうなるのか。最新の自動運転技術を開発途中で放棄したのなら、その知的財産を得たいと思う企業が出てくる可能性もありそうだ。引き続き注視していきたい。
【参考】関連記事としては「Appleが開発中止した自動運転技術、「数十億ドル」で売却・現金化か」も参照。