MEIKO
MEIKO(めいこ)とは、クリプトン・フューチャー・メディアが発売しているバーチャルシンガーソフトウェアとそのキャラクター[1]。「ピアプロキャラクターズ」に分類される[1]。
開発元 | クリプトン |
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初版 | 2004年11月5日[1] |
最新版 |
V3
/ 2014年2月4日 |
種別 | 音声合成 |
ライセンス |
プロプライエタリ PCL |
公式サイト |
piapro.net 初音ミク公式ブログ 製品一覧 - CFM公式 |
概要
編集クリプトン社の女性バーチャルシンガー[1]。主な愛称は「姉さん」[2]。栗色のショートボブ、赤いショート丈のトップス、ミニスカートが特徴[1]。
世界初の日本語対応バーチャル・シンガーソフトウェアであり、同種(VOCALOID[3])の製品で“パッケージにキャラクターを起用する”という試みを初めて行ったパイオニア[1]。同種の歌唱合成ソフト・楽器を“実際に人の姿をしたキャラクターに歌ってもらう”概念とする「バーチャルシンガー」の先駆け的な存在である[3]。
第1弾製品は2004年11月5日に発売[1]。当時の水準の3倍以上の���数を売り上げるも、この時点では市場そのものが小規模で、同じクリプトン社製品「KAITO」の売り上げ低迷で市場拡大に至らなかったこともあり、ジャンル(現在のボカロ音楽)を形成するまでには至らなかった[4]。
その後、同社製品の「初音ミク」の大ヒットの影響でKAITOと共に再び人気を集める形となった[5][2][6]。MEIKO及びKAITOがいなければミクの成功はなかったと言われており、ボカロ音楽の概念を最初に日本へと持ち込んだ「偉大なる先駆者」とも評価される[3]。
現在ではミク、鏡音リン・レン、巡音ルカ、KAITOと共に「ピアプロキャラクターズ」として名を連ねている[3]。
バーチャルシンガーソフトウェア
編集初代の開発担当はクリプトンの社員[7]。この人物は佐々木渉(初音ミクの生みの親)の学生時代からの友人であり、佐々木は同氏の退社後にクリプトンに入社した[7]。V3以降は佐々木が企画開発を担当。
- MEIKO(V1版)
- VOCALOIDエンジン対応ソフト。2004年11月5日に発売。
- 同シリーズで“パッケージにキャラクターを起用する”という試みを初めて行った[3]。
- MEIKO V3
- VOCALOID3エンジン対応ソフト。2014年2月4日に発売[8]。
- ピアプロキャラクターズ・スーパーパック
- ピアプロキャラクターズ全6名(初音ミク、鏡音リン、鏡音レン、巡音ルカ、MEIKO、KAITO)の日本語歌唱ライブラリ1種類ずつに新規チューニングを施して収録した商品[9]。2024年8月1日に「初音ミク NT」の新バージョン及び「初音ミクV6 AI」と共に発表され、同月30日にリリース予定[9]。ベースとなったのはV3からV4Xまでの「Original」で、より発音や声色の全体バランスが良くなるよう磨き込み、クリアネスやジェンダーファクターを始めとしたパラメータも効きが良く設定され、歌声を作り込むことも可能[9]。過去作を所持しているユーザーによるクロスシンセシス使用での声色表現の拡張なども想定されている[9]。
- クリプトン社の新音声データベース(仮称)
- クリプトン社が主催する「初音ミク マジカルミライ 2019」にてミクの新データベース(後の「初音ミク NT」)の存在が発表され、ミクをリファレンスとしてピアプロキャラクターズの他5体も随時調整する形になる事も言及された[10]。クリプトン社の佐々木渉(wat)がTwitter(現X)上で進捗状況を呟いている。
デザイン
編集MEIKOのパッケージには、マイクを握った女の子のアニメ風の絵が描かれている[11]。MEIKOでは当初マイクのイラストが候補として挙がっていたという[11]。しかしDTM未経験者も興味を持ちやすいようにとの考えから、マイクの案は破棄され「歌っている人格」をアピールするためMEIKOの名前をイメージした女の子のイラストを採用することになった。このパッケージイラストを手がけたのは、クリプトンの社員である[11]。
「MEIKO V3」のイラストは「初音ミク V3」のイラストを手がけたiXimaが担当している。なお初代MEIKOとは若干ながらも一部装飾品が変更されている(ネックレスやブレスレットの追加など。ただし初代ともKAITO以降にあるヘッドセットマイクは無い)。
キャラクターイラストの使用という路線は後のCVシリーズなどの同社製バーチャルシンガーにも引き継がれている[3]。
なおパッケージイラストについてはキャラクター化を意図したものではなかったが[12]、2009年6月に発表された同社製品のキャラクターの利用についての規約「ピアプロ・キャラクター・ライセンス」においてはMEIKOもキャラクターとして扱われるようになっている[13]。キャラクターの利用についてはピアプロ#キャラクターのライセンスを参照。
反響
編集発売~2006年
編集肉声と比べればまだまだ不自然さの残るMEIKOの歌声に対し業界の反応は良くはなかったが[14]特別な設備も人脈も必要なく個人のパソコンのみで女性ボーカルが作成できることからアマチュアDTM愛好家の支持を得[15]、1000本売れればヒットとされるバーチャルイスントゥルメント市場にあって初年度だけで約3000本もの売り上げを記録した[14]。DTM専門誌DTMマガジンでは2005年3月号よりMEIKOを使いこなすための連載記事が組まれた他、当時の読者投稿コーナー「超★極辛道場」にもMEIKOを使用した投稿作品が多数寄せられ2005年7月号ではMEIKOのモデルの拝郷メイコ本人がこのコーナーのオーディオ番組にゲスト出演をした。2006年にはMEIKOを使った楽曲のコンテストも行われ[16]、コンテストの優秀作品については拝郷メイコによるレコーディングが行われている。しかし音楽製作ソフトとしては異例のヒットを遂げたMEIKOではあったが当時はアマチュアDTM愛好家の間での話題性に留まり[15]、広く知られることはなかった。
2007年以降
編集2007年の半ば、すでに廃れていたはずのMEIKOの売れ行きが伸び始めた[14]。当時急速にユーザー数を増やしていた動画投稿サイトニコニコ動画にMEIKOで作成された歌唱を使用した動画が投稿され、人気を集めていた[17]。更に同年8月31日、MEIKOと同じクリプトン・フューチャー・メディアからVOCALOIDの後継であるVOCALOID2を使用したキャラクター・ボーカル・シリーズの第1弾初音ミクが発売されると初音ミクを使用した動画もニコニコ動画へ投稿されそれをきっかけに初音ミクはMEIKOを凌ぐ大ヒットを記録、MEIKOを含むVOCALOIDシリーズの存在はDTM愛好家以外にも広く知られるようになった。
初音ミクをはじめとするキャラクター・ボーカル・シリーズはキャラクターが歌うというイメージを前面に押し出した商品である。初音ミクのキャラクターとしての人気が高まるにつれ元々キャラクター商品ではなかったMEIKOをもまた「初音ミクの関連キャラクター」として受容されるようになり[18]、キャラクターとしての��気を広げた。
2007年以降、MEIKOを用いて作成されたオリジナル曲やカバー曲、パッケージのキャラクターを用いたPVなどが多数制作されニコニコ動画などに投稿されている。また、2007年9月にニコニコ動画に投稿されたワンカップPによる動画「初音ミクが来ないのでまだスネています」でMEIKOで歌わせた「ワンカップを一気飲み 明日は届くといいな」という歌詞をきっかけに酒好きというイメージが広まり[19]、2011年に発売されたMEIKOのフィギュアにも、一升瓶にワンカップ、グラスなどの小物を付属させるといった形で取り入れられている[20]。
主役企画
編集MEIKOのメディア展開は、下記の3種に大別される。
- 初音ミクのメディア展開(イベント - ゲーム - 書籍 - 音楽)
- ピアプロキャラクターズの関連コンテンツ:全員もしくは複数人が主役の企画
- 主役コンテンツ:本節で解説する。
なお、ソーシャル媒体での公式アカウントは初音ミク名義である。
KarenTによる配信
編集権利元であるクリプトン・フューチャー・メディアのレーベル「KarenT」により、iTunes Store、AmazonMP3、moraなどでMEIKOを用いた楽曲コンテンツが販売されている。
2024年6月現在、曲数は720曲、収録アルバムは300枚にのぼる(KarenT公式サイトの表示数より)。
プロジェクト・企画
編集- 周年記念企画
- MK15th project
- クリプトン社が主催するMEIKOとKAITOの周年記念プロジェクト。
作品
編集- 悪ノ大罪 悪食娘コンチータ(作:悪ノP、出版:PHP研究所)
- 悪ノP(mothy)がMEIKOを用いて発表した楽曲「悪食娘コンチータ」を元にした小説。「悪食」(暴食)にあたる。2013年9月に発売。
- EXIT TUNES PRESENTS Meikonic feat. MEIKO
- MEIKOの代表曲を多数収録した、MEIKOコンピレーションCD。
模型
編集フィギュア、プラモデル、ドール(※初音ミクシリーズ、ピアプロキャラクターズとして展開されたものも記載する)。
- 絵梦(エモン)トイズ
- トレーディングミニフィギュア
- KADOKAWA
- 「摔倒的初音未来」シリーズ
- グッドスマイルカンパニー
- ねんどろいどシリーズ(通常、ぷち、どーる、さぷらいず)
- どうぶつチャームストラップ
- ポケマケット
- あかたんず
- グルーヴ
- プーリップ
- セガ
- セガプライズ
- ストロンガー
- 「初音ミク ~花色衣~」シリーズ
- タイトー
- プライズ
- タカラトミー
- こえだらいず
- 肩ズンFig.
- バンダイナムコグループ
- 初音ミクスイング
- あそーと
- SNOW MIKU COLLECTION
- プライム1スタジオ
- キュ―ティ1プラス
- フリュー
- スケール(1/7)
- プライズ
- ボークス
- ドルフィー・ドリーム
- マックスファクトリー
- figma
- リーメント
- 初音ミクシリーズ
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c d e f g h ピアプロキャラクターズ.
- ^ a b MIXING BOX 2008, p. 8-13.
- ^ a b c d e f ミク10周年特別号 2018, p. 9.
- ^ 柴那典 2014, 4章1節.
- ^ DIVAマスターブック 2010, 7章.
- ^ ミクペディア 2013.
- ^ a b Quarterly8 2012, pp. 24–27.
- ^ “MEIKO V3(メイコ V3)”. クリプトン・フューチャー・メディア. 2015年9月22日閲覧。
- ^ a b c d “バーチャルシンガー6名の歌声をまとめた新製品の予約を開始! 「初音ミクV6 AI」も年内リリースに向けて準備中!”. クリプトン (2024年8月1日). 2024年8月1日閲覧。
- ^ 【マジカルミライ】初音ミク「マジカルミライ 2019」◇企画展レポート◇ - 初音ミク公式ブログ - クリプトン、2019年9月5日
- ^ a b c 初音ミクと仲間たち 2012, p. 23-27.
- ^ 「CVシリーズの開発を終えて」『DTM magazine』(通号 184)2009.5増刊CV03巡音ルカ、寺島情報企画、54頁。
- ^ “ピアプロ・キャラクター・ライセンス”. クリプトン・フューチャー・メディア. 2009年12月30日閲覧。
- ^ a b c “初音ミクの誕生は僕にとって必然だった 伊藤 博之 クリプトン・フューチャー・メディア代表取締役”. ITpro
- ^ a b 『DTM magazine』(通号 173)2008.8、22頁。
- ^ “ボーカロイド・コンテスト作品募集開始!”. DTMマガジン. (2006年4月14日). オリジナルの2008年10月22日時点におけるアーカイブ。 2008年10月5日閲覧。
- ^ 『日経エレクトロニクス』(973)[2008.3.10]、124頁。
- ^ 『DTM magazine』(通号 173)2008.8、32頁。
- ^ 『初音ミクMIXING BOX』講談社、2008年、初音ミク スペシャルファンブック30頁頁。ISBN 978-4-06-358260-4。
- ^ 伊藤真広 (2011年12月8日). “パッケージイラストも再現可能、ねんどろいどのMEIKOが登場”. ASCII.jp (アスキー・メディアワークス) 2011年12月16日閲覧。
参考文献
編集- “piapro.net”. クリプトン・フューチャー・メディア. 2022年7月9日閲覧。
ムック
- 『初音ミク -Project DIVA- マスターブック』SBクリエイティブ、2010年。ISBN 978-4797356601。
- 『初音ミクMIXING BOX 初音ミク スペシャルファンブック』講談社、2008年。
- 『Quarterly pixiv vol.08』KADOKAWA、2012年。
- 『VOCALOIDをたのしもう Special 初音ミクと仲間たち』YMJ、2012年。
- 『初音ミク 公式ガイドブック ミクペディア』マガジンハウス、2013年。ISBN 978-4838788170。
- 柴那典『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』太田出版、2014年。ISBN 978-4778313968。
新聞・タブロイド
- 『スポーツ報知 =初音ミク10周年特別号』スポーツ報知、2018年。
雑誌
- 「特集 VOCALOID」『DTM magazine』(通号 173)2008.8、寺島情報企画、21-42頁。
その他
- 根津禎「実録 開発物語 パソコン用歌声合成ソフト「初音ミク」(第1回)出会いは着メロから」『日経エレクトロニクス』(971)[2008.2.11]、日経BP社、107-110頁、ISSN 0385-1680。
- 根津禎「実録 開発物語 パソコン用歌声合成ソフト「初音ミク」(第2回)コア・ユーザーはあえて狙わない」『日経エレクトロニク』(972)[2008.2.25]、日経BP社、127-130頁、ISSN 0385-1680。
- 根津禎「実録 開発物語 パソコン用歌声合成ソフト「初音ミク」(最終回)みんなのミクになってみた」『日経エレクトロニクス』(973)[2008.3.10]、日経BP社、123-127頁、ISSN 0385-1680。
- 岡田有花 (2008年2月22日). “クリプトン・フューチャー・メディアに聞く(2):「初音ミク」ができるまで”. ITmedia 2008年10月9日閲覧。
- 高橋暁子 (2008年5月12日). “クリエイターを支えるクリエイターでありたい クリプトン・フューチャー・メディア社長 伊藤博之氏(前編)”. Impress Watch 2008年10月6日閲覧。
- 藤田憲治 (2008年2月25日). “初音ミクの誕生は僕にとって必然だった 伊藤 博之 クリプトン・フューチャー・メディア代表取締役”. ITpro 2008年10月5日閲覧。
関連項目
編集- クリプトン・フューチャー・メディア
- 拝郷メイコ
- ピアプロキャラクターズ
- バーチャルシンガー - キャラクターの分類名
- 音声合成
- VOCALOID