「いきなりステーキ」が、会員1500万人を敵に回してまで「肉マイレージ」を改悪したウラ事情
極めつけは各種特典の終了という、肉マイレージの事実上の“改悪”だ。1500万人の会員を敵に回してまで、システムを見直した理由とは。飲食店コンサルタントの白岩大樹氏が、その舞台裏を解説する。
スタバ・マックを超えた!2年8ヶ月で100店
2016年8月2日、それは外食産業の��史に残る日となった。いきなりステーキの100号店である恵比寿店のオープン。銀座の1号店オープンから2年8ヶ月での100店達成は、スターバックス、マクドナルドを上回る日本最速記録を更新した。
「流通ニュース」の記事で同社の一瀬 邦夫代表は「100号店は一つの通過点であり、まだまだ出店はできる」と語り、同時にリピーターを囲い込む「肉マイレージシステム」の有用性を語っていた。当時(2016年7月末時点)、すでに27万人を超えていたこの会員制度は、その後に続こうとする競合他社に追随する余地を与えない「城壁」となっており、これが最速での100店という快挙に大きく貢献していた。
しかしその後、同社は凋落を辿ることとなる。その時、同社の息の根を止めかねない凶器となっていたのが、この肉マイレージシステムだった。
本記事では、飲食の現場に精通したコンサルタントとしての視点で以下の3点についての解説をしていく。
・いきなりステーキがなぜ躍進を遂げられたのか?
・なぜ「肉マイレージ」システムの改悪を決行したのか?
・いきなりステーキが復活する可能性はあるのか?
3つの点で「完璧だった」ビジネスモデル
2013年12月に開店したいきなりステーキ1号店は、当時の飲食業の常識を大きく覆す内容だった。そのきっかけは異業種からやってきた。ブックオフを創業し、2009年に飲食業界に進出して当時、話題を席巻した坂本孝氏の高原価・高回転というビジネスモデルが、いきなりステーキのルーツとなっている。
もともと業界側(料理人)であった一瀬氏は、このモデルを経営するステーキレストラン「くに」と融合させることで、いきなりステーキを発案した。さらに同氏は飲食店経営における定石である「リピーター囲い込み」についても異業種の発想を取り込む。それが航空会社のネーミングを取り入れた「肉マイレージ」だった。
(1)70%に迫る高原価率によるコストパフォーマンス
(2)立ち食いスタイルによる低家賃(固定費率の軽減)
(3)肉マイレージによるリピーターの囲い込み
この3点において、いきなりステーキのビジネスモデルは、競合他社に付け入るスキがない完璧なものとなっていた。これが功を奏し、先述したスタバ・マックを超え��2年8ヶ月で100店達成という記録が打ち立てられたのだった。