新型コロナがあったにしても
もちろん、2020年にはコロナ禍があったから、それがこの年の新生児の出生数に影響したのであろう。コロナの中で未来への不安が高まったから人々は新生児の出生に慎重になったからである。しかしそれにしても、2020年における中国の新生児出生数の激減���は普通ではない。それはいくつかの国のそれと比べてみればすぐに分かる。
例えば中国の近隣にある台湾の場合、台湾内政部(内務省)の発表では、2020年の台湾の出生数は2019年から7%減の16万5000人に急落したという。「急落」とは言ってもその落ち幅はせいぜい7%程度、中国のそれとは比較にならないのである。
台湾はコロナ禍が比較的に軽度な国であるなら、コロナ被害が最も酷い国の1つであるイタリアのケースを見てみよう。
イタリア統計局(ISTAT)が去年の11月に出したレポートによると、2019年には42万件の出生届が出され過去最低となったが、2020年の出生数はそれをさらに下回る40万8000件になるという。つまり、2020年の出生数はコロナ禍の影響もあって2019年と比べれば落ちることになっているが、その落ち幅は3%未満、中国のそれの十分の一以下である。
もう1つ、わが日本のケースを見てみよう。2020年の出生数に関する正確な統計は今の時点ではまた出ていないようだが、日本総研が去年12月1日に出したレポートは、「2020年の出生数(日本人)は、当社推計に基づく予測では、前年比▲1.9%の84.7万人となる見通し」と書いている。
日本総研の実力からすればこの予測は大きく外れることはまずないだろうが、コロナの影響があった中で、2019年の大幅減に比べれば微減にとどまった。
以上のように、いくつかの国のケースと比較してみれば、2020年における中国の「出生数32%減」はいかに衝撃的であって重大な出来事であるかが分かるのであろう。