ちゃんと洗濯をしているのに衣類やタオルが臭うことはありませんか。これは菌によるものです。なので定期的にお湯で除菌すると嫌な臭いを防ぐことができます。
はじめに
清潔な生活を送るため、洗濯は欠かせない家事のひとつです。しかし、衣類やタオルはしっかり洗っていても生乾きの悪臭がしてきたりします。着た後に洗っているのになぜ?自分の体臭?と思われている方もいるくらいで、詳細は不明のままでした。
2011年に花王が洗濯物やタオルの悪臭の原因の一つを明らかにしました。それは、生乾きの悪臭の原因がモラクセラ属細菌の増殖というものです。また、2016には汗臭さの原因がマイクロコッカス属細菌が分解した皮脂成分によるものと発表しました。
これらに共通しているのは菌によるものです。ちゃんと洗っているのにと思われますが、洗剤のような界面活性剤には除菌はなく、繊維からすべて除去することもできません。そして細菌は紫外線耐性や乾燥耐性を持っているため、天日干しをしたくらいで菌は死なないというものです。従って、定期的な除菌をしなければいけないということがわかってきました。
悪臭の原因
悪臭はひとくくりにされますが、繊維から発する生乾きの臭いと汗をかいたときにする発汗臭と呼ばれる2種類に分けられます。
生乾きの臭いはモラクセラ属細菌と呼ばれる菌が原因です。菌の代謝する4-メチル-3-ヘキセン酸という物質が、あの生乾きの独特な悪臭と報告されています。
もうひとつは、発汗臭と呼ばれる服を着て汗をかいたときに出る臭いです。こちらは、マイクロコッカス属細菌と呼ばれる細菌が皮脂に含まれる脂肪酸を分解した物が悪臭の原因とされ、イソ酪酸、イソ吉草酸、2-メチル酪酸などの複数の短鎖脂肪酸や、4-メチルペンタン酸、4-メチル-3-ペンテン酸、4-メチルヘキサン酸、4-メチル-3-ヘキセン酸(4M3H)などの複数の中鎖脂肪酸と報告されています。
これらの菌は、紫外線耐性や乾燥耐性をもっているため、天日干ししていても菌が死ぬことはありません。従って定期的な除菌をしなければ悪臭のもとを絶つことはできないということになります。
対処法
悪臭は、菌が繁殖して数が増えたことに起因します。従って、増える前に定期的な対策を取ることが必要です。
菌は、付着させない、増やさない、定期的に減らすといった操作がとても有効です。日常生活でも汚い物は直接さわったり汚れた手で他の場所に触れたりしませんよね。また、仮に触ったとしても洗って汚れを落としたりすると思います。
基本に忠実にやれば衣類やタオルが臭うのを防げます。臭くなる前に定期的な菌対策を生活に組み込みましょう。
菌を付着させない
洗濯機の掃除はしていますか。洗う物なんだから必要ないじゃんと思っている人は大間違いです。
洗濯槽の裏側の見えない部分に汚れは溜まっています。お風呂場で見える場所でも菌のぬめりが発生しますよね。洗濯機も同様で定期的に掃除をしていない場合、悪臭の原因になる菌を洗濯によって洗った衣類に移しているとも言えます。洗濯機からなんとも言えない臭いがするのでしたらすでに内部はかなり汚れています。すぐに洗浄しましょう。
洗濯機の洗浄はこちらをご覧ください。
定期的に50-60℃のお湯と過炭酸や次亜塩素酸といった漂白剤を併用しながら微生物を減らしましょう。
菌を増やさない
菌は栄養と水分があるとすぐに増えます。梅雨の時期に陰干の悪臭が発生しやすいのは、洗濯物が乾きにくく菌が増殖するのに適した状態になるためです。
乾燥機を使うのがベストですが、一体型の洗濯機は高く、専用の乾燥機は高いので持ってない方が多いと思います。
こういう場合、布団乾燥機などを使用しましょう。雨の日でも数時間で乾きます。コンパクトで場所も取らないので一人暮らしの方やちょっと乾燥させたい場合にはぴったりです。
ちなみに陰干に対応した洗剤を使用しているから問題ないと思われる方、菌はそれくらいじゃ殺し切れません。バイオフィルムを形成して薬品に対する抵抗をつけ増え続けます。定期的な除菌を行いましょう。
定期的な除菌
菌は洗濯で落とすことはできません。対策をしていても徐々に衣類に蓄積されます。そこで定期的な除菌を行って菌を減らす必要があります。頻度は2週間から1ヵ月に一度程度です。
除菌方法は、薬品を使うものと熱によるものがあります。
〇薬品で除菌
先ほどの洗濯機の洗浄でも触れましたが、過炭酸を使った除菌も有効です。カビキラーのような次亜塩素酸系よりもマイルドな酸化剤なので衣類が傷みにくいと言えます。また、酸化剤は過酸化水素で分解されやすいため、人体への影響が小さいのが利点です。
オキシクリーンや酸素系漂白剤を購入してもいいのですが、何も入っていない薬品を持っていると洗濯槽の洗浄にも使えるので便利です。
除菌効果の高い薬品に逆性石鹸というものがあります。石鹸という名前がついていますが、泡立てて汚れを落とすものではなく、医薬品として殺菌できる製品です。希釈してつけ置くだけで殺菌できますが、殺菌後、多量の水で薬品を洗い流さなければならないので、多様は避けたい製品と言えます。
〇熱で除菌する
欧米では、洗濯にお湯が使われるため、衣類から悪臭は出ないと言われています。というのも感染症対策としてお湯を使用するのが習慣化したためです。除菌に有効な温度は60℃前後と言われており、この温度域で15分前後保持すれば効果的な除菌ができます。
日本では熱で除菌する習慣がないため、お湯は汚れを効果的に落とすために使用する程度でした。近年、悪臭の原因が解明されたこともあり、一部のモデルに60℃で除菌する機能がついてきました。
高価格なモデルから低価格のモデルまで入手できるものをまとめているので、あわせてご覧ください。
高価な洗濯機を使わなくてもバケツにお湯を張って除菌することは可能なので、洗濯機にお金をかけれない場合はそれでも大丈夫です。
うちでは給湯器から浴槽に60℃のお湯を供給して衣類を泳がせて除菌しています。鍋にぎゅうぎゅうに押し込んでしまうとシワがよってしまうので大きな鍋や容器でやりましょう。
他にもアイロンをかけたり、コインランドリーの乾燥機、家庭用でもガス乾燥機の熱で除菌するのも有効です。一方で酸素系の漂白剤にも除菌効果がありますが、繊維上に菌がバイオフィルムを作っていると内部まで薬品が入っていかないので熱で除菌する方が有効と言えます。
薬品を用いた除菌は、薬品を洗い流すのに多量の水が必要だったりします。一方で熱は何も残らないので一番クリーンな除菌です。工業的に除菌が必要なところでも薬品から熱に代わってきているので、薬品を使う必要はないんじゃないかと思います。
すでにかなりの臭いがする洗濯物の場合は、洗濯機と同じように熱と過炭酸を組み合わせた洗浄をお勧めします。
オタクが臭い理由
悪臭の話題になると必ずオタクの話が出てきます。普段運動しないとか、風呂に入らないとかちゃんと洗濯してないなんて言われています。
大学時代、学食の一角にカード空間(オタクがカードゲームをするたまり場)があって、そこから漂う空気はどこか淀んでいてちょっと臭いもアレでした。ジャンルは違えどオタクの友人は沢山いるので彼らの名誉のためにも言いますが、ちゃんと風呂も入ってるし、洗濯もしてるんですよね、彼ら。
じゃあ何で臭いのかっていうと、彼ら服をあんまり持っていないんです。帰宅後、すぐに洗濯して干す、次の日は乾いてたら来てしまうといった生活で、服は2、3着くらいしか持ってません。
衣類からする悪臭の原因は、モラクセラ属の菌類ということがわかっています。日光や乾燥に耐性があることから、洗濯をしてもある程度残って繁殖を続けます。毎日のように同じ服を着ていると、汗や皮脂を栄養に徐々に増え続け臭い特級呪物が完成します。
試しにこの夏に汗を拭くタオルを毎日洗濯して毎日使うような生活をしたところ、2週間を過ぎたあたりから何とも言えない臭いがしてくるようになりました。そう、カード空間のオタクたちのようなあの嫌な臭いです。
さて、じゃあ対極になるオシャレ大好きな女の子に注目してみます。彼女らは服を沢山もっていて、ワンシーズンで着る数って数回なんですよね。新品の服を数回着て洗ったくらいでは悪臭を放つまでにはなりません。
というわけで、オタク臭いから風呂に入れ論争は、服を持っていないから洗う回数も着る回数も多いことで、服に菌が増えすぎて生乾きや汗臭さが合わさったものと考えられます。
これを見たオタク君、自分自身で臭いがちょっと気になるなら周りはかなり不快に思ってる可能性があります。また、数着しか服もってねーやって場合、要注意です。
定期的に服をお湯で洗ったり、コインランドリーで服を乾燥させて臭い対策をしましょう。また、お気に入りの服があるなら同じのをいくつも用意して着る回数を減らすのも有効です。清潔感の第一歩は、絶対に生乾きや汗臭さをさせないことです。
おわりに
衣類やタオルからする悪臭に悩んでいる人は、熱で除菌しましょう。定期的に熱をかけることで、悪臭ともおさらばできます。
日本のメーカーでは熱水で洗える洗濯機は多くは出ていませんが、悪臭の原因が細菌であることが特定されたため、今後熱水洗浄機能の付いた洗濯機の販売数も伸び価格も低下してくると思います。
今できる対策は、定期的な洗濯機の洗浄、汗や水で濡れたまま長時間放置しない、定期的な熱による除菌の3つです。特に臭いに悩むオタクの方はぜひお試しください。
参考資料
日本微生物生態学会講演要旨集, Vol.27(2011), 68
Applied and Environmental Microbiology, Vol.78, No.9(2012), 3317-3324
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