元外資ITトップセールスのADHD仕事術(IT活用編①)
INDEX
おう!トミオやで!
この間書いたADHD当事者のための外資IT営業のすすめ、読んでくれてサンキューやったな!
その後ADHDの仕事術の話をちょっとしてみたら、そっちに関してもみんなの関心が高そうなことがわかったんや。
「元外資トップセールスのADHD仕事術(IT活用編)」、割といけそうだな。 pic.twitter.com/HsBE9XNGlY
— トミオ (@tomyuo) March 14, 2024
一念発起して、週末の土曜日を使って皆の役に立ちそうな記事を書いてみたで!
今回の記事で学べること
- ADHDの人間がやってはいけないITツールの使い方が学べる
- ADHD向けのIT活用法に必要なのは、Googleカレンダー、Gmail、Bitwardenの3つだけだとわかる
- ADHDが記事を書くと後半の失速がすごいというのを読んで実感できる
ところで、トミオって誰?
診断済みADHDの”元”外資IT営業だ
前回の記事ではADHDの解説に集中してたからみんな意識してなかったと思うけど、一応「仕事術」を読むならある程度は書いてる人間が何者か知っておきたいよな。ええでええで!
千葉県在住で、東京の日本橋兜町で小さな会社を経営している人間だ。
現在40歳で、3人の子供がいる。27歳のときに外資IT業界に入りソフトウェアセールスとして約10年間働いたが、2022年3月に「チャレンジャーベース株式会社」を設立し独立。エンタープライズソフトウェア領域に特化した人材紹介事業と英語コーチング事業を行っている。今年はセールススクール事業を始める予定。
外資ITセールスとしては、まあまあ優秀だったと思う。キャリアの中でアジア太平洋地域(APAC)の年間トップセールスを3回取ってるし、30代前半からずっと年収2000万円くらいあった。(MBA留学した時期を除く)
まあ、表彰系はだんだんと慣れてきちゃって感動なくなるんだけどね。なお、これらのトロフィーは、MBA留学するとき奥さんに「場所取るし捨てていいよ」って言っといたら本当に捨てられてた。写真撮っといてよかった。 pic.twitter.com/1J1Vg3a8QI
— トミオ (@tomyuo) August 21, 2022
社会不適合者として肩身狭く生きていくことの多いADHDの中では、結構頑張っているほうじゃないかな?と自負している。
なぜこんな記事を?チャレンジャーズアカデミーって何?
10年以上の実践を通じて編み出した技を仲間たちにシェアしたい
僕が発達障害を持ちながらもそこそこ上手くやれた一番の理由は「自分が楽しいと思える仕事をする」ことにフォーカスし、苦手なことから逃げ続けたことだと思っている。幸いにして営業には向いていた。(これに関する詳しい話は、前回の記事を読んでな)
とはいえ、とにかくミスが多いのが我々ADHDだ。大小様々なミスを犯し、その度に土下座して生きてきた。
ミスをするのはしょうがない。人間だもの。でも、何の対策も講じずミスを繰り返すのはADHDとか関係なく人としてダメだ。信頼を失ってしまう。お客さんから信頼してもらえない営業は(当然ながら)発注ももらえない。
つまり、トミオはたぶん、わりと、どうにかしてきた。この「どうやってどうにかしてきたか」を共有することで、助かる人がきっといるんじゃないかなと思い至ったのが今回筆を執った理由だ。
チャレンジャーズアカデミーとは?
弊社、チャレンジャーベースが運営する「日系&外資IT転職の総合メディア」だ。トミオが学長を務めている。
なぜこのメディアに記事を載せてるかというと、好き放題やれて使い勝手がいいからだ。なんせ俺、学長だからね。一応、仕事に関する内容だから転職と無縁ってわけでもないし。つまり、どうでもいい情報だから気にしなくていいってことだ。
さて、前置きが長くなった。今回の本題に入っていこうか。
ADHDの特徴振り返り
あ、ごめんもう一つ、必要な前置きがあった。
ADHD仕事術を学ぶなら、そもそもADHDがどういう発達障害か再度認識しておく必要があるよね。ADHDは以下のような障害だ。(前回の記事からのコピペだ)
1. 脳の報酬系がぶっ壊れている障害だ
ADHDの脳は、報酬感や快感を司るドーパミン系が機能不全であると言われている。これにより、モチベーションの持ち方やインセンティブへの反応が世の多くの人間とズレてしまう。
- 外的報酬より内的報酬:金銭や地位・名誉といった外的報酬にあまり関心を示さない。個人的な関心や情熱が高い活動に対して、高い集中力とエネルギーを発揮する。
- 将来の報酬より即時の報酬:将来のために目の前の報酬を我慢、ということができない。長期的な目標よりも目の前にある快楽を選択してしまう傾向がある。
2. 興味のあることにしか集中力を維持できない障害だ
「高い関心に基づく神経系」と呼ばれる。興味や情熱を感じる領域に対しては、非常に高い効率と創造性を発揮する一方で、関心が薄い事柄に対しては注意を維持するのが難��くなる。
学習や仕事での選択、日常生活の中での優先順位付けに大きく影響する。トミオも上司から「ミーティングで興味のない話題になった途端に露骨につまらなそうにするのをやめなさい」と注意を受けたことがある。
3. ワーキングメモリが圧倒的に少ない障害だ
「実行機能の問題」と呼ばれる。情報を短期記憶で保持し、それを適切な時に利用する能力が著しく低いため、同時に複数のことを考え、進めるということができない。ミスや忘れ物が多い、頻繁に電車を乗り過ごす、物をどこに置いたかわからなくなる、約束や会議の時間を忘れるといったADHDの異常行動はこの特性による。
僕の知っている中で最もADHDの発現が強い知人は「コンビニで受け取ったレシートを捨てようと思ったのに、なぜか財布をレシート入れに投げ込んで帰ってきた」というエピソードを持っている。
以上、ADHDには3つの特徴があるが、今回のADHD仕事術の目的はこの最後のやつ、「ワーキングメモリの少なさ」を補うことだ。じゃ、始めてくで。
2つの大原則
1. 自分自身を信じるな、決して
君はADHDだ。ポンコツだ。5秒前に考えていたことを忘れる鶏の妖怪だ。
あの経験あるでしょ。「大事なものだから、なくさないように●●に収納しておこう」って思った記憶だけはあるのに、実際どこにしまったのかわからなくなって詰んだ経験。
あれにも似てるよな。お菓子をもらったハムスターが、大切にどこかに埋めてそのまま忘れるやつ。
2. 記憶に頼るな、すべて見える場所に置いておけ
ADHDの辞書に「短期記憶」という単語はない。
ダメなんよ。見えない場所に持ってっちゃ。絶対に忘れるんだから。
だが、「すべてを見える場所に置く」なんてことが本当に可能なのだろうか?これは、可能である。正確には、以前は不可能だったが、ITの発達によりかなり「可能」に近くなった。
外資IT業界という、テクノロジーの第一線で働いてきたトミオが解説していく。
3つの「ADHDがやってはいけない仕事のしかた」
1. ToDoリストを使うな、おまえには100年早い
あれ、便利そうだよな。なんか頭の中が整理された気がするし、よしやるぞー!って気持ちになるやんか。
だが、君には100年早い。つまり、今回の人生ではToDoリストの使用は諦めてくださいということだ。
ToDoリストには複数の問題点があるが、一番の問題は「リストに書いてあることを全部やったら、確実に時間が足りなくなる」ということだ。結局、全部やることはできない。優先順位をつけて、できないことは切り捨てるしかない。
だったら、最初から「絶対にやる」ことだけが目の前にあるようにすればいいでしょという発想の転換が大切だ。
2. メールのフォルダ分けはやめろ、今すぐ
ここまで読んできた君なら、もうわかるな?
フォルダに振り分けたメールなんか読まないから。振り分けたこと自体を忘れるし、そのうちフォルダの存在そのものを忘れるから。
仕事をした気分になるのは今日で終わりだ。無理。やめろ。以上だ。
2. パスワード?それは健常者が使うものです
パスワードってさ、登録するサービスごとに変えるのめんどくさいし覚えておけないから全部のサイトで同じやつ使うやん。
でもときどき「ルール上そのパスワードは使えません」とか「●ヶ月おきにパスワード変えてください」とか言われるやん。変えるやん。忘れるやん。詰むやん。
あれはADHDが使うべきものではないし、そもそも人類が使いこなせるものかどうかも怪しい。
ADHDが生き残るためにやるべき3つのこと
我々ADHDはワーキングメモリが少ない。
ワーキングメモリが少ないということは「短期記憶に頼った仕事の仕方ができない」ということだ。とにかく、全部目の前に置く。それを徹底する。そのための方法を伝授する。
1. タスクは全部Googleカレンダーに入れろ、全部だ
時間は有限「だからこそ」カレンダーがタスク管理に向いている
僕は毎日14時間くらいは働いているが、それでも労働時間を20時間に増やすのはとても難しい。寝れない。26時間に増やすのは物理法則上不可能だ。
だから、それを逆手にとる。「この時間にはこれをやる」と決めてカレンダーの時間をブロックしてしまうのが最適解だ。タスクなんてリストにどれだけ並んでても、カレンダーに入れて実際にやらない限り無意味だし、カレンダーに入っている以上はそれが「最優先のタスク」なんだからあとはやるだけだ。
以下は、直近一週間の僕のスケジュールだ。
プライベートの予定も全部同じカレンダーに突っ込む
一日が24時間だという前提がある以上、仕事とプライベートの違いなんて単なるリソース配分の問題でしかない。
だから、すべての予定をひとつのカレンダーの上で一覧表示しておくのが正解に決まっている。
というのは方便で、実際はADHDに複数カレンダーの管理なんてどの道できない。できないんだから、やり方はこれしかない。これがベストだ。わかったか?
おまけ:デカいモニターを使う
そして予定を一覧で見られるようにカレンダーに集約しても、常に見られる状態になっていなくては意味がない。
そこで重要なのがデカいモニターだ。(デュアルディスプレイでもいい。そこは好みだな。)
たとえば今も僕は、画面の片側で記事を書きながらもう片側でカレンダーを開いている。複数アプリを並べられるディスプレイを用意するんだ。ちなみにトミオはLGの27インチ5Kディスプレイを使っている。(20万円くらいしたけど、かれこれ6年使っててまだまだいけそうなので良い投資だったと思う)
2. GmailのInboxをToDoリスト化しろ、フォルダは消せ
InboxをToDoリストとして使う
カレンダーに「その時間にやる最優先のタスクを突っ込んでいく」という話を上でした。しかし、「今すぐはやれないが、近日中にやりたい」みたいなタスクは当然発生する。そこで今回覚えてほしいのが「メールアプリをToDoリストとして使用する」方式だ。
ToDoリストは使うなと言った口で何言ってんねん、と言われそうだが、大切なのは「絶対に毎日、常に目にする場所にタスクのリストを置く」ことだ。その使い方をするには、メールがベストだ。
参考としてトミオの3/16(土) 昼時点のInboxを公開しておく。見てもらうとわかる通り、メールは11通しかない。残りは全部消したからだ。
当然だがフォルダは一個もない。(なお、バックオフィス業務に関して考えるのが面倒すぎて社労士の先生に3ヶ月以上返信してないやつがある)
メールはその場で処理する、できなかったやつがタスクとして残る
メールが届いたときに必要なアクションって、実は3種類しかない。
- ただ目を通すだけ:読んだら即Inboxから消す
- 返信または他者への指示が必要:即対応してInboxから消す
- 何らか別のアクションが必要:カレンダーにアクションを登録してInboxから消す
なので、Inboxに残っているメールは「カレンダーへの登録待ちのタスクたち」ということになる。
タスクを追加したいときは自分にメールを送る
「あっ、後であれやろ!と思ったけど、メモしておかなかったら忘れてしまった」という経験は誰しもあると思う。
そういうときはとりあえず自分にメールを送っておく。PCの前にいたら普通にGmailで送ればいいんだけど、外出中など、PCがないときに良いアイデアが浮かんだときは「自分にメールを送るためだけのアプリ」をスマホに入れておくと重宝する。トミオはBoomerangというアプリをiPhoneの一番目立つところに置いている。
“アーカイブ”機能のショートカットだけ覚えておけばいい
今回紹介したフローでメールを処理していく場合、一番よく使うのは「アーカイブ」というアクションだ。みんな既にやってると思うけど、メールを削除するのではなく、Inboxから出して裏側にしまい込む作業を指す。
これ、むちゃくちゃ使うのでショートカットキーを覚えてしまったほうがいい。そうすると右手はマウスを持ち、左手はキーボードでショートカットを叩くという組み合わせでメールの処理がサクサク進む。Gmailだとアーカイブのショートカットは以下だ。今すぐ覚えよう。
- Windowsの場合:Ctrl + E
- Macの場合: Command(⌘) + E
3. Bitwardenを入れろ、パスワードは忘れろ
Bitwardenは神、とにかく今すぐ入れろ
最後に、覚えてほしいのが無料で使えるパスワードマネージャー「Bitwarden」だ。ビットウォーデンと読む。似たようなソフトウェアはたとえば1Passwordなどもあるが、Bitwardenでいい。なんせタダだし、僕が使ってて何も不満がない。
3つのバージョンをダウンロードしておこう。
- デスクトップクライアント:あんまり使わないけど、まあ一応。
- Google Chromeアドオン:むちゃくちゃ使う。ただしSafari版はクソ重いので勧めない。
- スマホアプリ:使い始めたら元には戻れない。顔認証を有効にしておくこと。
覚える必要があるのはたった一つの「マスターパスワード」のみ
パスワードマネージャーの素晴らしいところは、自分が覚える必要のあるパスワードが一つだけというところだ。
Bitwardenにログインするためのパスワードを設定し、それだけ忘れないように覚えておけばいい。
Bitwardenにさえログインしておけば、もうどこのサイト・サービスに行っても怖いものなしだ。
パスワード生成をしてくれる
複雑なパスワードを、文字数、記号を含む含まないなどの指定をこちらからした上でサクッと作成してくれる。サイトごとに異なる堅牢なパスワードを用意できるようになる。
端末やブラウザを跨いでパスワードを管理してくれる
パスワードの生成機能や管理機能は、Google Chromeなどのブラウザにもある。また、AppleがCloud Keychainを提供しているように、OSに紐付いたパスワード管理機能もある。
しかし、人によってはPCはWin、スマホはiPhoneだったりするだろうし、ChromeとSafariを併用してる人だって多い。こういうときに困る。Bitwardenは、アプリさえインストールしてログインしておけば万能の活躍をしてくれる。
他にも色々機能があるが、とりあえずここまでにしておこう
このアプリは本当に使い勝手がよく、たとえばサイトに訪れた時点で自動でID/パスワードを入力してくれる”Auto-fill”なんて機能があったりする。が、一個一個説明してくとキリがないのでまた今度にしよう。
疲れた。何が伝えたかったのか忘れた。
この記事を書くために朝から6時間パソコンに向かい続けたおかげで脳が疲弊している。
せっかく記事を書くんだから何かしらのメッセージを伝えたほうがいいというのはわかるし、そういう目的があったような気もするんだけど、とりあえず今すぐこの記事を閉じてぐうたらしたい。
子供の頃さ、色々テレビゲームやったじゃん。俺、「ラスボスの直前まで行くと突然やる気がなくなって進められなくなる」タイプだったんだよね。未知に挑み続けるのが楽しいのであってさ、あとは仕上げるだけ、ってなったら急速にやる気が萎えてくるわけよ。
まあでも一応うちは日系&外資IT業界に特化した転職エージェントだからさ、転職に関する記事へのリンクも貼っとくわ。
トミオに質問、相談、ご意見などあったら、このフォームから連絡してや。
じゃあね。良い週末を〜
追記:さらに仕事術の続編書いたから、よかったら読んでみてな!