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弁護士転職コラム(企業内弁護士(事業会社))
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2023/12/08
時代の変化に対応した多様なビジネス展開を支える少数精鋭の法務組織|豊田通商株式会社
サーキュラーエコノミー/カーボンニュートラルによる産業構造への影響をはじめ、社会・経済のあり方が大きく変化しつづけるなか、ステークホルダーにとって唯一無二、かけがえのない最適な存在となる「Be the Right ONE」をビジョンに掲げている豊田通商。 トヨタグループの総合商社として、「ネクストモビリティ」、「再生可能エネルギー・エネルギーマネジメント」、「アフリカ」、「循環型静脈」、「バッテリー」、「水素・代替燃料」、「Economy of Life」の7つの重点分野をはじめ、さまざまな事業をグローバルに展開しています。 そんな同社の幅広いビジネス展開を支えているのが、少数精鋭の法務部です。今回は東京法務第一グループの近藤顕伸氏、東京法務第二グループの羽部紗耶香氏に、業務の特徴や働き方について伺いました。 中途メンバーが活躍するオープンな組織 ——貴社の法務体制について教えてください。 近藤氏: 法務部は30名強の組織で、メンバーは30代から40代がメインです。中途社員とプロパー社員の比率はほぼ1対1で、垣根がないことが特徴です。私はプロパー入社ですが、羽部は法律事務所と企業の両方を経験しています。 東京の法務グループは、担当営業部によって第一・第二に分かれています。第一は、事業規模が比較的大きい領域をカバーしています。私の担当は電力、金属です。 羽部氏: 第二はより種々雑多な領域を扱っているイメージです。私は食料、アパレル、メディカル、ソフトウェアなどを担当しています。 羽部紗耶香氏 近藤氏: 名古屋にもグループがあり、自動車事業のほか、水素エネルギーをはじめトヨタグループとの共同事業のサポートを中心に担っています。株主総会対応のサポートも開催地である名古屋のグループが主となって担当しています。 基本的には、名古屋グループ、海外駐在を含め、ローテーションで各グループに配属されます。駐在地はニューヨーク、シンガポール、タイ、ブラッセルです。また、会社全体として、入社8年目までの若手社員全員に海外での実務経験を提供※しています。法務は米国のロースクール(LLM)へ行くケースが多いですね。 ※グローバル職のみ 自動車だけではない、幅広い事業領域に携われる ——会社としてはアフリカでのビジネスに注力されているイメージがあります。 近藤氏: 本部は基本的に商材ごとに分かれていますが、アフリカのビジネスを担うアフリカ本部という地域軸での本部を設けていることが当社の特徴です。アフリカ本部を担当する法務は、アフリカでの自動車販売から、港湾開発、工場・ビル建設まで、幅広い案件をカバーしていますね。 ——法務として特に比重の大きな案件にはどのようなものがありますか? 近藤氏: 私は電力を担当しているので、太陽光発電や水力発電などの案件が動き出すと、かなり負荷が大きくなります。組織規模が小さいため、契約審査はリスクの高いものに注力しています。 近藤顕伸氏 羽部氏: M&Aが多いのは特徴の1つですね。私は常時5件ほど担当しています。出資比率も100%のものから、数%のものまであり、さまざまなケースに対応しています。 近藤氏: 子会社だけで900社以上あり、増資、撤退、新規設立などをすべて法務が確認しているため、案件は常に発生しています。基本的にはその営業部の担当者が行いますが、大型案件などの場合はある程度知見のある者が対応することになります。 ——自動車の案件が多いイメージでしたが、お話を聞く限りではむしろ比重としては小さい印象を受けました。 羽部氏: トヨタのビジネスをやっているんですよねというのはよく言われます(笑)。 近藤氏: アフリカ市場については、トヨタ自動車から営業業務を全面的に移管されていますが、港湾開発や工場建設などのほうがサポートが必要なので、自動車関連の法務相談比率は低いです。 法務部内だけでなく、事業部門とのコミュニケーションも活発 ——法務部内の雰囲気はどうですか? 近藤氏: 最近フリーアドレス制を導入したため、会話の機会が増えましたね。前はグループごとに席が分かれていましたが、今は私の横の席に羽部が座っていることもあり、「うちのグループでも似たような問題がありましたよ」などとアドバイスをしあえるコミュニケーションが自然と生まれるようになってきています。 羽部氏: 固定席になってしまわないようにも意識しています。グループにかかわらず、法務部員全員に共有すべき案件について情報共有をすることはこれまでもありましたが、フリーアドレスになり、他グループのメンバーと業務外のことも含めいろいろな話をするきっかけとなりました。 ——名古屋のグループとのやり取りはありますか。 近藤氏: グループとは別に法領域ごとのプロジェクトが設けられていて、たとえば私は制裁法、羽部は独禁法のプロジェクトに入っています。プロジェクトはグループ横断型で、各グループから必ず1人のメンバーが参加しZoomでコミュニケーションを取りながら進めます。そういう意味では、自分が所属するグループ以外の法務メンバーとの会話の機会も多いと思います。 フロア内にリフレッシュ用のスペー��を用意 ——海外駐在メンバーとはいかがですか? 近藤氏: 若手やこれから海外へ行く予定のメンバーに向けて、駐在の良い面や悪い面、仕事の進め方などリアルな話をする「対話会」を開催しています。 また2023年11月には、「グローバル法務会議」として、米国、欧州、アジアから法務担当30名程度を集めた世界大会を日本で開催する予定です。2018年に第1回目を開催したので、今回で2回目の取り組みです。 ——事業部門とのコミュニケーションは普段どのように取られていますか。 近藤氏: 案件特有のリスクを判断するには、案件自体の理解が必要ですので、そこは営業部と密にコミュニケーションを取りながら強みや事業計画を把握していくようにしています。1日に2〜3件は打ち合わせをしていますね。 羽部氏: 営業部からは事業についてかなり詳細に説明してもらえます。法律事務所と異なり、事業部に気軽に案件の説明をお願いできる点は、インハウスのいいところなので、非常に勉強になっています。 近藤氏: 営業部側も自分たちがやっていることを聞いてもらいたい気持ちが強いため、仕事を進めやすい環境にあります。 在宅勤務の活用で柔軟な働き方が可能 ——各社で出社回帰の傾向が強まっているなか、貴社では在宅勤務を継続されていますね。 近藤氏: やはり従業員からのニーズが圧倒的に高く、ライフワークバランスの「ライフ」の部分を上層部が重視した決断だと聞いています。通常は月上限40%、時短勤務の方は月上限60%を在宅勤務とすることができます。 羽部氏: 集中して契約書を確認したいときなどは在宅のほうが捗ることもあり、私は在宅勤務を活用しています。会議のために出社しているようなイメージですね。 近藤氏: 私はどちらかというと出社派ですが、通勤時の混雑時間帯を避けるなど柔軟に対応しています。オフィスではミネラルウォーターやコーヒーが無料で提供されるなど、出社へのインセンティブも用意されつつあります。グループには子育て中の方も多く、お子さんの予定や体調にあわせて退社時間を決めるなど柔軟に対応できるようになっているのも特徴です。 大切なのは、変化を楽しめる知的好奇心 ——お二人が豊田通商への入社を決められた理由を伺えますか。 近藤氏: 私はずっと同じことをやるよりも変化を好むタイプなので、社会情勢に合わせてビジネスが変わりつづける企業で働きたいと考え、商社とIT業界を志望していました。ただ、他商社の場合は法務組織の規模が大きく、業務が細分化されており、幅広い仕事をしたいという自分のスタンスにマッチしませんでした。豊田通商では、法務として幅広い業務を経験でき、結果的に自分にとても合った環境だったと感じています。 羽部氏: 私は父が商社に勤めており、グローバルなビジネスに携われることの魅力を感じていました。ただ、何よりも職場は���人」だと考えており、転職時には一緒に働いて楽しそうと思えるかどうかを最も重視していました。 ——どのような人が貴社に向いているとお考えですか。 近藤氏: 何事にも好奇心を持てる人です。常にこれまで経験したことのないような案件が発生するので、それ自体を楽しめることが大切です。「これを調べなきゃいけないのは面倒だな」ではなく「勉強になるな」と思えるかどうかがポイントだと考えています。 羽部氏: 色々なことに挑戦できる環境にあり、自分の仕事にプライドを持ってきちんとやり抜くことが重要だと思います。質の高いアウトプットを出し続けられる人であれば、成長していけると思います。 近藤氏: 医者に例えるならば、風邪の診断から外科手術までを1人でやらなければならないし、やれる環境にあります。そこにやりがいを感じられるかどうかだと思います。「自分はこの領域にだけしか興味がない/この仕事しかやりたくない」というタイプの方だと厳しいかもしれません。 羽部氏: 勉強でいえば、弁護士会の研修や、外部の勉強会などにも自主的に参加して学んでいってくれたらうれしいですね。 ——最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。 羽部氏: 豊田通商の法務は少数精鋭で一人ひとりが担う仕事の幅が広く、手を挙げればどんな案件でも挑戦��きる環境です。事業の幅も広いので、主体性のある人であればとても楽しめると思います。ぜひ知的好奇心の高い方に来ていただきたいですね。 近藤氏: 当社のビジネスは、時代や社会の流れに合わせて常に変化しています。ビジネスの多様さはもちろん、今年やっていたビジネスが再来年にはなくなってしまうということもありえます。私は入社2〜3年目に石油・石炭、4年目にガスの領域を担当していましたが、留学から帰ってきたときにはそれらのビジネスはすべてなくなり、バイオマスやアンモニア、水素へと移行していました。在庫処理の契約や株式譲渡など、法務にとっては撤退も重要な要素ですので、法務が活躍できる機会は多く、同じ会社にいながらも仕事がどんどん変わっていくことが何よりの面白みです。昨今ではデータプラットフォームなど若手のほうが知識に強みのある領域も増えてきていますので、新しいビジネスへ興味のある方にはぜひ当社を検討していただきたいです。 (文:周藤瞳美、写真:竹本周平、取材:弁護士ドットコムキャリア) 弁護士ドットコムキャリアのエージェントサービス登録(無料)はこちらから。必要なタイミングで専任のコンサルタントが誠実にご支援いたします。 転職エージェントサービスに登録する
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2023/05/29
ライフステージの変化を機に企業法務未経験から民間企業へ – 法律事務所の弁護士キャリアの活かし方
保険関連の案件を扱うなかで人に寄り添うことを学んだ法律事務所時代 ——これまでのキャリアについて教えてください。 大学は法学部でした。大学入学時には弁護士になることも見据えてはいましたが、企業への就職にも興味があったので、その時点ではっきり決めていたわけではありません。その後、法科大学院を経て司法試験合格後、法律事務所へ入所しました。当時はまだ就職活動が大変な時期で、正直に言うとなかなかこちらから選べるような状況にはありませんでした。そんななか私が入所した事務所は、パートナーが数名の小規模な組織でした。面接のときに優しく対応してくださったこともあり、この方々と一緒に仕事をしてみたいという思いを持っていたところ、内定をいただくことができました。 ——法律事務所では主にどのような案件を扱われていましたか。 保険会社の顧問業務として、交通事故や労災事故対応など保険が関係する損害賠償の案件を中心に担当していました。ただ、企業法務として保険会社内の法律相談を受ける機会はありませんでしたね。 ——交通事故の保険は、被害者、加害者、保険会社と立場によってそれぞれ対応が異なるように思います。 そうですね、どのケースにも対応していました。依頼者のために全力を尽くすという基本的な考え方はどの場合でも同じですが、それぞれ方向性が異なります。被害者側の立場だと、賠償を増額する交渉をしていくことになりますが、加害者側であれば過剰な請求に対して減額を交渉する方針となります。いずれにしても、適正な賠償にしていくという発想が重要になります。 ——そうした業務のなかで学ばれたこと、またやりがいを感じられていたことはありますか。 人に寄り添うということを学びました。場合によってはお客さまにとって耳が痛くなるような話をしなければならないこともありますが、お客様が最初にご相談にいらしたタイミングで、今後どうなっていくか必ず見立てを伝え、できる範囲内で解決に向かうよう進めていきました。弁護士として適正な解決方法を提案することで、お客さまに喜んでもらえたときにはやりがいを感じますね。 ワークライフバランスの確保と予防法務への興味から、民間企業への転職を検討 ——転職を考えられはじめたきっかけはいつだったのでしょうか。 事務所に入ってからはとにかく忙しく目の前の仕事をこなしていくのに精一杯で、正直なところキャリアについてあまり深く考えたことはありませんでした。転職を考えはじめたきっかけは、子どもが生まれたタイミングでした。子どもと一緒にいられる時間を増やすために改めてワークライフバランスを見直し、テレワークや育休制度が整っている民間企業への転職を視野に入れはじめました。事務所の業務自体はおもしろかったですし、不満があったというわけではありません。 ——企業法務への興味はもともとお持ちだったのでしょうか。 事務所での業務は基本的にすでに起こった事件に関して対処していく形になるため、「もっと前のタイミングで対策を打てていればこんなことにならなかったのに」と感じることが多々ありました。あらかじめトラブルを予防する動きができるという点で、企業法務に挑戦してみたいという気持ちはずっと持っていました。 ——企業法務未経験からインハウスロイヤーへの転職ということで、企業を選ぶうえでどのような点を意識されていましたか。 業種や事業の内容については特にこだわりはありませんでしたが、企業法務未経験ということで、法務体制が整っている企業を志望していました。理想は、先輩弁護士が在籍していて、なおかつ他部署との兼任ではなくきちんと法務部が独立しているような組織でした。そうした会社では、法務の重要性が理解されており、法務としての専門的な意見が求められる体制があると考えたためです。 コンサルタントとの綿密な準備の甲斐あって、1社目の企業に内定 ——今回の転職活動では、弁護士ドットコムキャリア以外の転職エージェントは利用されましたか。 複数社に登録しましたが、弁護士ドットコムキャリアで紹介していただいた1社目の企業に決まったので、他社はコンサルタントとの面談をした程度です。 ——転職先はかなりスムーズに決まったのですね。 社内弁護士の退職によって人員補充を検討されていたタイミングで応募できたというタイミングの要素が大きかったかもしれません。かなり運がよかったと感じています。また、弁護士ドットコムキャリアの担当者の方が先方に対して「企業法務未経験の弁護士でも優秀な人材であれば検討したほうがよい」とアドバイスされたこともポイントだったように思います。 ——コンサルタントと面談をしてみて、弁護士ドットコムキャリアと他社のエージェントとの違いは何か感じられましたか。 他社は画一的な形で行われているような印象でしたが、弁護士ドットコムキャリアの担当者の方は、私が求めている条件を的確に把握してさまざまな案を提案してくだいました。だからこそ、すぐに内定をいただけたのだと思っています。 ——面接ではどのような点に気をつけられていましたか。 自己PRや志望動機など一般的に聞かれやすい項目については、弁護士ドットコムキャリアの担当者の方と相談しながらあらかじめ答えを準備していました。 ——法律事務所から民間企業へのキャリアチェンジの理由についてはどのように説明されたのでしょうか。 事務所の業務を通して予防法務の重要性を理解したという点に重きを置いて伝えるようにしました。転職先の法務部長が弁護士の方で、ワークライフバランスの問題も含めこちらの事情をよく理解してくださり、私の説明もすんなり受け入れていただきました。 ——企業法務未経験という状況での転職活動において重要だったと思うことがあれば教えてください。 これまでの仕事の経験をどう活かせるか、面接時に説明できるようきちんと言語化しておくことが大切だったと思います。私に関していえば、保険会社の顧問業務としての事故対応は一見すると企業法務とはまったく別の業務に思えますが、保険会社の担当者から直接相談を受けていた経験は、社内の法律相談などに活かしていけると考えました。 また、転職活動をしている人や、過去に経験している人に相談することもやはり重要だと思っています。私は企業の法務担当者として働いている妻や修習同期からアドバイスをもらうようにしていました。 未経験からの転職を考えるのであれば、なるべく早めに動きはじめる ——これから実際に転職されて新しい業務に取り組まれることになりますが、意気込みを伺えますか。 はじめはとにかく目の前にある仕事にできる限り取り組み、事業部の方々が気軽に相談しやすいような法務体制をつくっていければと考えています。 ——最後に、30歳前後で転職を検討されている弁護士の方にメッセージをお願いします。 企業の場合、未経験でもこの年齢であれば将来性を考慮して採用してもらえるケースは多いと思いますので、転職活動をするのであればなるべく早めに動きはじめたほうがよいでしょう。実際に転職活動をしてみて、「今の職場のままがいいな」と感じることも、それはそれで収穫です。今は売り手市場ということもあり、転職を考えるタイミングとしてはよい時期です。まずは動いて企業の話を聞いてみるのがよいと思います。 弁護士ドットコムキャリアのエージェントサービス登録(無料)はこちらから。必要なタイミングで専任のコンサルタントが誠実にご支援いたします。 転職エージェントサービスに登録する
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2023/07/21
人気上昇中、大規模一般民事事務所とインハウスロイヤーの採用状況
弁護士人口の増加や社会の変化の影響で、弁護士の転職実態も年々変化している。今回、年間100人以上の弁護士の転職やキャリア相談を受ける、弁護士ドットコムキャリアのコンサルタント2人に、転職事情などを聞いた結果を随時紹介する(インタビュー:2021年12月)。2回目は、大規模一般民事事務所やインハウスの実態について。
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2023/11/06
IT法務とは?弁護士業務の実態やトラブルの種類を解説
IT法務とは、主にIT企業の間で交わされる取引契約に関わる企業法務です。数多くのITサービスが世にあふれる現代において、IT法務の必要性は徐々に一般企業にも波及しています。この記事では、IT法務の仕事内容や取引の種類、開発現場で発生しやすいトラブルについて解説します。 IT法務とは IT法務とは、ITサービス・IT製品のシステム開発に関連した法務全般を指します。 発注側・受注側の双方で交わすシステム開発契約の締結、プロジェクトの進捗管理、検収チェックによる動作確認、成果物納品後の運用・保守など、ITサービスが納品されるまでの各フェーズにおいて、法的観点から監督を行います。 弁護士の視点から見れば、IT領域に特化しているものの企業法務の一種に分類できます。 IT法務の主な領域 IT法務で扱う領域は、人材・観光・メディア・医療・流通・買い物と実に幅広い分野があります。 ITサービスに関連した企業間取引のほとんどについての法律業務が、IT法務に分類されるため、案件の種類は非常に豊富といえます。 ITサービスは商業利用を目的としたサイトから、公共性の高いサービス、社内管理のみで使用するクローズドなシステムなど、様々な種類があります。 業務にあたっは専門知識や業界の動向を知っておいた方��有利なので、企業法務の知識だけではなく、IT業界・ITサービスに関する最新情報にも精通しておく必要があります。 IT法務を必要とする企業の種類 IT法務は、ITサービスを開発するベンダー企業側と、ITサービスを利用するユーザー企業側の2種類があり、どちらのIT法務を請け負うかによって目指すべき目的や仕事内容が異なります。 この章では、ベンダー企業・ユーザー企業それぞれのIT法務の特徴について、簡単に解説します。 ベンダー企業(開発側) ITサービスの開発を手掛けるベンダー企業は、仕様書(要件定義書)に沿ったシステム開発を行い、成果物を納品することによって利益を得る企業です。 IT法務の役割は、受注金額の範囲内で適切なリソースコントロールを行い、契約内容に沿った成果物を納品することにあります。 検収後に大幅な機能追加・修正が発生しないように注意して交渉を行い、ユーザー企業からの過剰要求などに対して自社の利益を守れるように契約を進めます。 開発納期の切迫によって起こるエンジニアの過重労働などの、人事・労務問題も部分的に扱います。 ユーザー企業(利用側) ITサービスを利用するユーザー企業は、システム開発に投資を行い、完成した成果物を利用することで利益を生み出す企業です。 IT法務の役割は、投資金額に見合った成果物を回収することであり、成果物が契約書・仕様書に記載された機能を満たしているのかを厳しくチェックします。 想定とは異なる成果物が納品された場合の追加開発や、検収後に発生した不具合の修正依頼、成果物未納品による損害賠償請求など、トラブル発生時に自社の利益を守れるように契約を進めます。 ITサービスの不正利用対策や機密情報の流出防止など、成果物が納品された後の運用・保守業務も法的観点から監督します。 IT法務の主な業務内容 IT法務の業務としてて、システム・ソフトウェア開発の契約、検収、納品、保守までの一連のフローを担当します。 この章では、特に重要性が高い業務の詳細を開発過程の順に解説します。 契約書の作成・チェック・締結 IT法務にとって最も重要なフェーズが、システム開発の前段階で結ぶ契約書の内容です。 最初に結んだ契約書・仕様書の内容を元に開発フェーズが進むため、どの工程においても不利益が発生しないように契約書の内容を吟味します。 成果物の定義・開発業務範囲・検収方法と期間・賠償責任の所在・知的財産権の所属など、細かい項目まで綿密にチェックを行い、担当者と何度も協議を重ねながら契約書を作成します。 契約内容に反する事案が発生すれば、契約解除、場合によって損害賠償請求を伴うこともあるため、幅広いリスクを想定した契約内容で取引を進める必要があります。 成果物の検収管理 検収フェーズは、納品後に成果物の品質チェックを行う工程です。 納期を守れているか・成果物の品質は適切か・正常に動作するか、などが主なチェック項目になります。 実際の検収では、契約書の内容に加えて、システム開発内容や機能などが描かれた要件定義書の内容も確認し、内容に沿った仕様・機能が実装されているかを厳しく確認します。 ベンダー側は検収終了の定義と期限を明確化し、期日までに検収チェックが終了するようにコントロールしていく必要があります。 機密情報管理とセキュリティ対策 ITサービスの開発に際して企業間で機密情報の共有を行う場合、秘密保持契約(NDA)を結びます。 双方が社外秘の情報を取り扱うため、開発体制の管理と社内のセキュリティ対策が必要になります。 ベンダー側はシステム開発体制を細分化して見通し、開発環境で想定される情報流出のリスクを事前に防ぐ対策が求められます。 誤操作による流出や知人への口外といった人的リスクもあるため、社内のセキュリティを強化する仕組み作りも重要です。 ITサービスの運用ルールを規定 成果物の取り扱いに関する運用ルールの設定もIT法務の重要業務です。 ITサービスの納品後に継続的な運用・保守業務が契約に含まれている場合、契約書の内容に従って正しく運用されているかをチェックし、運用ルールを明確に規定します。 また、開発側が���利を所有するソフトウェアの使用契約の場合は、運用過程で利用規約違反が起こらないように、社内のコンプライアンスを強化する取り組みが必須となります。 不正利用・技術流用・知的財産権の侵害に関しては賠償義務が発生するケースもあるため、セキュリティ管理と合わせて運用ルールを規定する必要があります。 IT法務で発生しやすいトラブルの種類 ITサービスは開発側・利用側が事前に完成形をイメージしにくい側面があり、双方の認識齟齬によって様々なトラブルが発生します。 この章では、IT法務の現場で発生しやすいトラブルの種類について解説します。 IT法務において最も発生しやすいトラブルが、システム開発における双方の認識違いです。 ITサービスの特性上、検収の直前まで成果物の品質を確認しにくいので、事前の擦り合わせで双方の認識を合わせる努力を重ねても齟齬が発生することはよくあります。 特に成果物の品質に満足できないという理由で納品を断られるケースが多く、契約書・要件定義書に記載した「納品」の定義を争点に交渉・訴訟に発展することがあります。 ベンダー側はみなし検収のフェーズを設定して納品拒否を防ぐ、ユーザー側は契約解除の条件を明確化して成果物への保険をかけるなど、双方がリスク管理を徹底することが重要です。 以下、ベンダー側・ユーザー側それぞれで発生しやすいトラブルをまとめています。 ベンダー側(開発)で多いトラブル 開発の不備を指摘され、いつまでの検収が完了しない 成果物の品質に対して過剰な要求をされている 完成直前のフェーズで急な仕様変更を指示された 検収後に動作の不具合が発覚し、追加の修正開発を依頼された 仕様変更で開発コストが大幅に膨れ上がった ユーザー側(利用)で多いトラブル 成果物が納期までに完成していない 検収段階で多くの不具合が発生している 仕様書の設計とは異なる作りになっている 仕様書に記載された機能が実装されていない 成果物の操作性・機能性が悪くリリースできない 不具合による損害賠償請求 検収で成果物に対するバグや不具合、機能の未実装が発覚した場合は、内容によっては損害賠償請求を行います。 主に開発を委託したユーザー側から訴訟を行う場合が多く、契約書・要件定義書に記載されている内容と成果物の品質にどの程度の乖離が発生しているかが争点となります。 また、ユーザー側が完成前に品質の低さを理由に契約解除を申し出た場合は、ベンダー側は不服申し立てを行うことができます。 賠償金額は開発委託料金に相当する額が上限で、逸失利益(成果物が納品されていれば得られていた利益)に関しては証明が難しいため除外されるのが一般的です。 そのほか、成果物の未納によって起こった実質損害や、プロジェクトの進行管理費、人件費なども賠償金額に上乗せできるケースがあります。 データ流出・個人情報漏洩 ITサービスの開発においてユーザー側の社内機密や個人情報データを必要とする場合、秘密保持契約(NDA)を交わしたあとに開発がスタートします。 開発の過程で保護内容に含まれるデータが流出した場合は、損害賠償請求となりえます。 情報流出の原因となった脆弱性がベンダー側とユーザー側のどちらにあったのか、流出データが保存された場所や管理方法は適切だったのかなどが争点になります。 既に完成済みのソフトウェアの一部機能を活用して開発を行う場合、成果物にベンダー側の機密情報が含まれるため、情報を流出させてしまった場合は、委託側であるユーザー側にも責任が及ぶ可能性があります。 偽装請負 システム開発や運用・保守の現場でベンダー側のエンジニアがユーザー側に常駐して作���を行う場合、労働者派遣法に違反した偽装請負とみなされてしまうケースがあります。 偽装請負として摘発を受けるケースは、委任契約の内容から逸脱した勤務形態(労働者派遣)と判断されてしまうことに原因があることが多いです。 委託元企業に常駐して作業を行う場合、気が付かないうちに委任契約に抵触してしまう可能性があるので、ベンダー側は契約内容を確認して勤務体制の管理・チェックを徹底する必要があります。 IT法務弁護士が活躍できる環境 IT法務の案件を担当したい弁護士は、どのような環境に身を置けば良いのでしょうか。 この章では、IT法務に従事できる可能性が高い職場や働き方を紹介します。 IT法務に強い法律事務所 幅広い分野のIT法務に携われるのが、IT領域の企業法務を専門で扱う法律事務所です。 システム開発の各フェーズを一貫して監督する事務所もあれば、特定の訴訟・トラブルのみを担当する事務所もあるため、特化の度合いは法律事務所によって大きく異なります。 IT領域はトラブルの種類が非常に多いため、幅広い企業法務に携わって知見と経験を蓄積できるのが大きなメリットです。 事務所の業務内容の表示として「IT・インターネット関連」があれば、IT法務に携われる可能性が高いです。 求人募集の内容をよく確認し、自身のキャリアに最も適した法律事務所を探しましょう。 IT企業の顧問弁護士 IT企業の顧問弁護士として契約を結び、IT法務を担当する方法もあります。 法律事務所のように単発の訴訟やトラブルを解決するのではなく、長期間に渡ってIT企業の法務を監督します。 特定のIT企業を継続的にサポートするので、事業の内部に踏み込んだ密度の高いIT法務を担当できるのが強みです。 顧問弁護士を必要とするIT企業は大規模な取引を行っているケースがあり、その場合、顧問契約を結ぶには豊富な実績と交渉スキルが必要になります。 IT企業のインハウスロイヤー IT企業の一社員として法務部に所属する方法も有効です。 法務部の一員として、部署・チームで連携しながらIT法務に携われるのが特徴です。 顧問弁護士とは違って組織内部の人間なので、会社の意思決定にも参加できるのは大きなやりがいになります。 インハウスロイヤーは法律業務のみを担当するわけではないので、社内のコンプライアンス教育や現場研修など、IT法務以外の業務にも積極的に参加する必要が出てくることが少なくありません。 IT法務のみで実務経験を積みたいたい方には適さない場合もあるので、自身の目指す方向性を考慮しつつキャリアを選択しましょう。 まとめ 今回は、IT法務の仕事内容・業務領域・トラブルの種類・活躍できる業界について解説しました。 ITサービスを巡る企業間の契約は増加傾向にあり、業界自体の進化も早いことから、今後はIT法務の重要性も高くなることが予想されます。 IT分野に特化した企業法務のスキルを身に付けたい方は、キャリアプランの選択肢として想定しておくのも良いでしょう。 弁護士ドットコムキャリアのエージェントサービス登録(無料)はこちらから。必要なタイミングで専任のコンサルタントが誠実にご支援いたします。 とりあえず登録しておく
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2023/11/27
企業内弁護士と法律事務所の違いは何?仕事内容・年収・福利厚生のポイントを比較
企業内弁護士(インハウスロイヤー)と、法律事務所に勤務する弁護士には、どのような違いがあるのでしょうか? 両者はしばしば仕事内容・働き方・年収・ワークライフバランスなどの項目で比較されやすく、どちらが自分に向いているのか迷ってしまう人も多いです。この記事では、企業内弁護士と法律事務所という二つの働き方の違いについてわかりやすく解説します。 目次 企業内弁護士と法律事務所の違いは? 企業内弁護士の特徴を解説 法律事務所勤務の特徴を解説 結局どちらのキャリアパスを選ぶべきか まとめ 企業内弁護士と法律事務所の違いは? もうすでにご存知の方が多いかと思いますが、まずは企業内弁護士と法律事務所勤務の違いについて簡単に解説します。最も大きな違いは、雇用先が「企業」か「法律事務所」かというポイントです。 企業内弁護士は文字通り企業に雇用される弁護士であり、法律知識を活かして利益追求やコンプライアンス順守を行うのが主な役割です。 一般的に、弁護士は法律事務所に雇用され、法律の知識を活かしてクライアントの���利を守るのが仕事とされています。雇用先から給与を貰うという体系は同じですが、両者を取り巻く労働環境は大きく異なります。 次の章からより詳しい違いについてチェックしていきましょう。 企業内弁護士の特徴を解説 まずは企業内弁護士の仕事内容や福利厚生について詳しく解説します。 仕事内容 企業内弁護士の仕事内容は、法律知識を活かした社内外のトラブル対応、契約書チェック、労務管理、M&A、コンプライアンス遵守などがメインになります。 配属されるのは法務部・総務部・バックオフィスなどが多く、大企業の役職であれば、相談役・監査役として参入するケースもあります。 企業内弁護士は社内における法律のスペシャリストとして、契約締結や訴訟対応といった外部企業との交渉から、労務管理や契約書チェックなどの内部調整まで、数多くの人間と密にコミュニケーションを取り、連携しながら仕事を進めていく必要があります。 習得可能なスキル 実際の業務を通じて企業法務全般の幅広い知識・スキルを習得することができます。 ほかの部署を巻き込んで連携・調整を進めて行く必要があるため、組織の中で円滑にコミュニケーションをとるための社会性も同時に身に付けることができます。 また、営業活動の全体像を把握しつつ、適切な打ち手とアドバイスで利益を最大化する技術を習得できるのもメリットです。 デメリットは、周りに自分以外の弁護士がいないため(もしくは少ない)、法曹界の交流や新しい情報に疎くなってしまうリスクが有ることです。また判断迷ったときは過去の判例やデータを元に自分で解決しなければいけないケースが多く、日頃から情報をキャッチアップし社外の弁護士のネットワークを維持する意識が必要となります。 福利厚生の充実度 就職する企業によって差はあるものの、法律事務所と比較した場合、企業内弁護士のほうが手厚い福利厚生を受けられるケースが多いです。 上場企業であれば休日・残業に関する規則もきちんと整備されていることが多く、クライアントワークが発生しないので、会社員と同様に土日休みをしっかりとれる企業が多く存在します。 福利厚生の充実度に惹かれて企業内弁護士への転職を決断する人も一定数います。 ワークライフバランス ワークライフバランスについては、法律事務所と比べると企業内弁護士のほうがとりやすいという意見が多いです。 また、企業内弁護士は残業が少なく、休日も取得しやすい傾向があります。個人単位で仕事を請け負うような状況が少ないため、社内のスケジュール調整さえ抑えておけば、納期に追われることも少ないでしょう。法律絡みで急なトラブルが発生した場合は、イレギュラーで忙しくなる可能性はあります。 年収の目安 企業内弁護士の年収は、法曹界の実務経験の有無によって大きく変動します。 弁護士としての実務経験がほとんどない場合は、年収300〜600万円台の求人に応募するケースが一般的です。 未経験可の求人��は、無資格の法務部スタッフと同等か少し高い年収で雇用されることもあり、弁護士資格に見合わない年収と評価する人も多くいます。一方で弁護士として十分な実務経験と実績を兼ね備えている場合、転職で年収800〜1,000万円以上の高年収が約束される場合もあります。 大手弁護士事務所・渉外事務所から大企業に転職した場合は、法律事務所を上回る年収を提示されることもあります。 法律事務所勤務の特徴を解説 次は法律事務所に勤務する弁護士の特徴について解説します。企業内弁護士と比較しながら相違点をチェックしてみましょう。 仕事内容 法律事務所に勤める弁護士の仕事内容は、法律相談・クライアント対応・訴訟手続き・契約書チェックなど多岐に渡ります。 顧客のほとんどは個人または企業の担当者なので、業務を遂行するには一定のコミュニケーション能力と提案力、問題解決能力などが必要になります。 法律事務所の種類によっては、大規模な渉外案件や企業法務・金融といった専門性の高い案件に携わることも可能です。 習得可能なスキル 法律事務所は司法試験合格者の最も一般的な就職先であり、弁護士として業務を遂行するために必要な基本知識とスキルを習得することができます。 外部のクライアントと接する機会が多いため、法律相談やコンサルタント業務にも携われます。 業務の多様性と自由度の幅が大きく、法律事務所の方針次第で多彩な領域の案件を担当することが可能。アソシエイトであれば民事・刑事系の案件で法廷弁護も経験できますし、パートナー弁護士へと昇格すれば、営業・経営・育成などに参画して実績を積むこともできます。 福利厚生の充実度 福利厚生に関しては法律事務所によって待遇に大きな差があります。 採用を強化する目的で手厚い福利厚生を備えている事務所もあれば、最低限の保証のみを備えた規模の小さい事務所も存在します。 個人の裁量権が大きい職場では個人判断で休日出勤や残業をする必要もあるため、そもそも福利厚生が機能しにくい状況も見受けられます。 また、年収とインセンティブは高いが福利厚生はほぼ存在しないといった実力主義の法律事務所もあるので、求人情報をよく確認して応募することが大切です。 ワークライフバランス 法律事務所は基本的に忙しく残業時間が多くなりがちなので、仕事中心の生活になってしまうケースが非常に多いです。 特に大手弁護士事務所などは激務かつ競争も激しいので、終電を逃して朝まで働くことなど日常茶飯事。外部クライアントと密に連携をとる必要があるため、スケジュールの都合によっては休日出勤を余儀なくされたり、早朝〜深夜の時間帯に相談業務が入ることもあります。 年収の目安 アソシエイト弁護士の年収は、勤めている法律事務所のランクによって大きく変動します。 民事事件・刑事事件を扱う一般的な法律事務所でも、年齢に応じたキャリアを積むことで年収800〜1,000万円以上を目指せます。 国際案件を扱う渉外事務所であれば、2,000〜3,000万円以上という高年収に到達するポジションもあります。 報酬が高くなるほど仕事内容は当然ハードなものが多くなり、ハードワークに耐えうる体力と卓越したスキル・才能が必要になります。仕事に生活を捧げる覚悟が必要になることもあります。 結局どちらのキャリアパスを選ぶべきか 企業内弁護士と法律事務所、どちらのキャリアパスを選ぶかについては、人生において何を重視すべきかによって変わるので、一概に結論は出せません。 法曹界でキャリアを積みつつ順当に年収を上げていきたい人は、法律事務所のアソシエイト弁護士、法律の知識を活かして企業をサポートしたい人は企業内弁護士が向いているでしょう。 また、やはり弁護士業界の多忙さに耐えかねて企業内弁護士への転職を望まれるケースも一定数あるのが現状です。働き方や人生観は弁護士業界でも多様化しつつあり、生活を重視する働き方に対しての理解も少しずつ浸透しています。そういった観点では、「インハウスか法律事務所か」という問いに対しては、ワークライフバランスも重要な意思決定材料の一つになっていると言えるでしょう。 まとめ 今回は企業内弁護士と法律事務所の働き方について、両者の特徴を比較しながら整理しました。 選択肢の多さゆえに迷うことも多いですが、自身のキャリアプランを明確に描くことによって、転職のミスマッチを最小限に抑えることができます。 仕事内容・福利厚生・年収幅など異なるポイントは多いですが、法律知識を活かして人助けをするという本質は同じです。 どちらのほうが良いと端的に決めつけるのではなく、それぞれの性質を理解したうえで理想のキャリアパスを描いてみましょう。 弁護士ドットコムキャリアのエージェントサービス登録(無料)はこちらから。必要なタイミングで専任のコンサルタントが誠実にご支援いたします。 転職エージェントサービスに登録しておく
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2023/12/21
一般企業の法務部の仕事内容と業務に関わる資格とは
一般企業の法務部ではどのような業務内容があり、 所属している社員は、弁護士以外にどんな資格を有しているのでしょうか。
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2024/02/08
企業内弁護士とは?仕事内容や増加の背景、採用の傾向
企業の中で弁護士として働く場合にどういった仕事内容なのか、会社の中での役割は具体的にどのようなものがあるのかを事前に理解しておくことは転職活動において重要です。企業側が社内や組織の内部に弁護士を雇用するメリットを把握し、求められている役割と自らのキャリアが合致するのかを見極めることが成功のポイントになります。企業内弁護士の求人や採用の募集状況、転職をした場合の収入面の傾向など、昨今の企業内弁護士数の推移データなどを交えながら、企業法務などの形で弁護士が活躍するためのポイントをご紹介します。 目次 企業内弁護士の仕事内容と役割 企業が弁護士を雇用するメリット コストの削減 問題の発生を予防・迅速な解決 訴訟代理人・弁護人になることができる コンプライアンスの遵守を徹底 弁護士の人脈・専門性・情報力の活用 信頼感の向上 企業内弁護士数の推移 企業内弁護士の求人情報の傾向や特徴 企業内弁護士への就職・転職が成功するポイント 企業内弁護士の仕事内容と役割 企業内弁護士(インハウスローヤー)とは、企業の従業員または役員として業務を行う弁護士を指し、その業務内容は企業の業種・配属先・ポジションによって多岐に渡ります。従業員として雇用された場合は法務部に配属される事が多く、主に以下のような業務に携わります。 株主総会/取締役会の召集/運営 M&A 株式の公開/発行 子会社の設立/解散/独立 契約書の作成/審査/手続/管理 労使交渉 債権回収 社員への法教育 社内/グループ内の法律相談 内部統制 個人情報など情報の管理 特許権や意匠権などの知的財産権の手続/管理 不動産関連業務 官公庁への対応 法律リスクの分析 訴訟代理人への就任 各種調査権による調査 基本的に 臨床法務 のみに携わる顧問弁護士とは違い企業内弁護士は 予防法務や戦略法務など、あらゆるレベルでの法律業務に関わっていく こととなります。 企業が弁護士を雇用するメリット 企業が外部に委託せず、企業内弁護士という形で弁護士を直接雇用する理由としては、以下のようなものが挙げられます。 コストの削減 弁護士の直接雇用によって、法律事務所に委託した場合のタイムチャージよりもコストを抑えることができます。 問題の発生を予防・迅速な解決 会社組織・事業全体の状況を把握している弁護士がいることで、問題の発生を予防することができます。また発生した際も、初動対応をはじめ、迅速に解決に向けて動くことができます。 訴訟代理人・弁護人になることができる 企業内弁護士を訴訟代理人・弁護人にすることができます。その場合も背景事情を把握していることから、的確な答弁書・準備書面を作成することができます。また問題点を速やかに適正化し業務へ反映すること・コストを抑えることができます。 コンプライアンスの遵守を徹底 弁護士は法律違反をすると資格が剥奪されることから、コンプライアンスに抵触する可能性のある案件について公平な立場で正すことができます。 弁護士の人脈・専門性・情報力の活用 資格のない法務担当者と比べて幅広い知識や人脈を持っているため、業務に活用していくことができます。外部に委託するときも、価格や能力面から適切な委託先を選定することができます。また、顧問弁護士など社外弁護士とのコミュニケーションにおいても効率的に進めることができます。 信頼感の向上 弁護士資格を持つ従業員が内部にいる、ということが国内外の企業に対して信頼感の醸成につながります。M&Aなどの際にも対等な立場で効率的な交渉を行うことができます。 企業内弁護士数の推移 上記のグラフは日本組織内弁護士協会による「企業内弁護士数の推移」を元に作成したものです。2016年6月における企業内弁護士は1707人で、全弁護士数の4.5%が企業内弁護士となっています。 傾向としては、修習期が遅くなるほど企業内弁護士として働く弁護士の割合が増しています。60期代では実に1247人、7.4%が企業内弁護士として活躍しています。 ワークライフバランスを確保したい・現場に近いところで仕事をしたいといった理由などから企業内弁護士は年々増えており、2001年と比べて約 25倍に増加しました。また企業内弁護士を採用する企業も増加しており、2016年6月の時点では847社に上ります。このように企業内弁護士にはこれからも継続して高い需要が見込まれると思われます。 企業内弁護士の求人情報の傾向や特徴 弁護士数の増加とともに、保険・金融・IT業界を中心として、企業が外部の法律事務所と契約せずに、直接弁護士を雇用するというケースが急増しています。今後も、企業からの求人・弁護士の求職者数のいずれも増加していくことが予想されます。 その理由としては、前述した通り、外部の法律事務所と契約するよりも社員として弁護士を抱えていた方がコストが抑えられる・対応スピードが早い・社外の弁護士には相談しづらい問題も安心して相談できる、などが挙げられます。 基本的に社内の業務をこなしていくことになりますが、企業によっては個人案件を受任することもできます。業界によって求められる能力は異なってきますが、基本的には業界・関連法に関する知識に加え、企業法務を全般的にこなすことのできる経験弁護士が、即戦力として募集されるケースが多く見られます。 企業内弁護士のメリットの一つにワークライフバランスの充実も挙げられます。法律事務所の受け入れ体制は改善してきていますが、やはり女性の場合は育休や産休など、福利厚生を重視する方に企業内弁護士は根強い人気があります。ただし、いち会社員として雇用されるので、採用されるポジションによっては、給与面では法律事務所と比べて低くなるケースも見受けられます。 企業内弁護士が雇用されているポジションとしては、一般従業員が63.4%・管理職が31.6%・役員が5.1%となっています。一般従業員としての雇用が多数を締めていますが、管理職や役員としての雇用は増加傾向にあります。また、一般従業員としてのポジションで雇用された後に管理職へと出世する企業内弁護士も多いようです。 2013年の弁護士白書によると、企業内弁護士を採用する際に実務経験を「強く求める」が20.0%・「求める」が55.6%と、計75%の企業が実務経験を求めています。 しかしながら、「あまり求めない」が20.0%・「求めない」が4.4%あることから、即戦力ではなく弁護士という資格・ポテンシャルを重視している企業も一定数存在することがわかります。 業務改善意欲がある若手の弁護士が好まれる傾向にあり、実務経験のない弁護士や司法修習生から採用する傾向は年々強くなっています。即戦力としてベテランの弁護士を採用するよりも、経験年数の短く若い弁護士の方が人件費の面で負担が少ないため、積極的に採用したいきたいという企業の思惑が働いているようです。 一方で、管理職や役員のポジションを募集する場合は、経験や信頼感という面からも経験のある弁護士が求められるため、中堅以上の弁護士の採用ニーズも引き続き残ると考えられます。 企業内弁護士への就職・転職が成功するポイント 企業が企業内弁護士を採用する際に期待する能力としては、法的思考力・法律知識・状況/リスク判断能力・信頼感が弁護士として求められ、さらに、コミュニケーション能力や、管理職であればマネージメント能力など、ビジネスマンとしてのスキルも強く求められます。 また、企業内弁護士は、求められた際に法律知識を提供したり問題を解決するだけではなく、組織の一員として積極的に企業に貢献していくことも求められます。職務経歴書や面接では、これらの要素をアピールしていくといいでしょう。 なお、企業内弁護士の採用は、大企業に多い傾向にあるため、国際的な活躍を求められるケースも多くあります。英文契約書のレビューなど、業務において英語力が必要となる割合も多く、ビジネスレベルの英語力が募集要項に記載されている求人が多く存在しています。そのため、英語力の向上及びTOEICやTOEFLなどは、企業内弁護士としての就職や転職には有利に働くでしょう。求人企業によりますが、一般的な基準としてはTOEICで800点程度がひとつの目安となります。 弁護士ドットコムキャリアのエージェントサービス登録(無料)はこちらから。必要なタイミングで専任のコンサルタントが誠実にご支援いたします。 転職エージェントサービスに登録する
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2024/02/20
「インハウスロイヤー」とは?増加の背景やその仕事内容・年収・待遇のまとめ
近年では、企業に務め「インハウスロイヤー」として活動する弁護士が年々増加傾向にあります。企業のグローバル化や経済・雇用情勢などの激変、コンプライアンス意識の高まりなどを背景に、弁護士を採用する企業が増え続けているためです。この傾向は今後もしばらく続くことが予想されるため、インハウスロイヤーとして弁護士を採用したい企業からの高い需要が見込まれています。 このページでは、インハウスロイヤーが行う企業法務の仕事内容や、就職・転職するときに求められるキャリア、募集される求人の傾向や年収などをご紹介します。 インハウスロイヤーとは インハウスロイヤーとは、企業の従業員や役員として業務を行う弁護士のことです。 企業の業種���配属先などにもよって業務内容は異なりますが、一般的には、法務部に配属され、企業法務・コンプライアンス・知財関連の業務を行います。 インハウスロイヤーの仕事内容 M&Aや契約法務、顧客への法対応、社内法務、知的財産、事業継承、国際法務など多岐にわたります。募集する企業によって、どの分野の業務が多いのか異なりますので、就職または転職する際には、求人情報にかかれている業務内容や面接時での質問などを通じて事前にしっかりと確認しましょう。 問題が顕在化した場合に、その問題の解決(臨床法務)を行う顧問弁護士とは異なり、 インハウスは、予防法務や戦略法務などを中心として、様々なレベルでの法律業務を行うことになります。 インハウスロイヤーが増加している背景 近年、インハウスは増加傾向にあります。どのようなことを背景に増加しているのでしょうか。以下のグラフは、日本組織内弁護士協会による「企業内弁護士数を推移」を元に作成したものです。ここしばらく年々増え続け、2016年6月時点ではインハウスロイヤーは1707人で、全体の4.5%までに増えています。 増加した理由を、”企業サイド”と”弁護士サイド”にわけて、詳しく見ていきましょう。 企業サイドの理由 まず、企業によるインハウスロイヤーの雇用需要が高まっていることが大きな要因と言えます。企業による海外進出の増加や、世間によるコンプライアンスへの関心の高まりなどを背景として、企業における法務の業務量の増加や重要性が高まっています。 これによって、従来は大手の法律事務所などの企業法務を扱う法律事務所にアウトソーシングしていたものを、自社で弁護士を雇用し対応することで、コスト削減やスピードアップを図りたいというのが企業側の意図です。 コスト削減 企業はできるだけコストを抑えたいと考えるのが通常です。法律事務所に委託するよりも、直接雇用する方がコストが抑えられます。 レスポンスのスピード 社外の弁護士(顧問弁護士)には相談しづらいことがあっても、社員として雇用しているインハウスには安心して相談できることや、普段から自社の業務や背景を把握している弁護士であれば、いざというときに素早く対応・解決できます。 リーガルニーズの増加 会社法や証券取引法などの法改正や、規制緩和による司法制度改革などにより、臨床法務だけでなく、法的リスクに対処する予防法務や戦略法務の必要性が顕在化しました。 また、グローバル化が進んでいることにより、組織内法務の整備・M&A・コンプライアンス構築・行政対策など様々なことが、従来の法務業務にプラスして求められるようになり、限られた人材でこれらを行うことが厳しい状況になりました。 弁護士サイドの理由 弁護士サイドの理由はわかりやすく、”安定”を求めてインハウスを選択する人が増えているのだと考えられます。インハウスロイヤーを採用する企業は大企業が多い傾向にあり、法律事務所と比べれば福利厚生が整備されていて、給与や待遇面、ワークライフバランスの安定が見込めます。 経験の幅を広げるため また、臨床法務ではなく、予防法務や渉外法務、M&Aや戦略法務など様々な分野を扱いたい。これらの仕事を現場に近いところでしたい。という理由も挙げられます。 転職理由では「経験の幅を広げたい」「待遇改善」「ライフワークバランス」などがよく挙げられるので、これらの点が解決できるインハウスという選択をする人が増加するのは必然といえるでしょう。 このように「需要」と「供給」がそれぞれ高まったことによって、インハウスロイヤーが増加していると考えられています。 インハウスロイヤーの求人情報の傾向と特徴 基本的には、社内の業務を行うことになりますが、業界・関連法に関する知識や企業法務全般をこなすことができる「経験弁護士」が即戦力として募集されるケースが多くなっています。 日本組織内弁護士協会が2016年2月に実施したアンケート結果では、募集されるポジションとしては、一般従業員が63.4%、管理職が31.6%、役員が5.1%となっています。一般従業員として雇用された後に管理職へと出世するケースも多いようです。 また、一方で、ポテンシャルがある若手の弁護士が好まれる傾向もあり、実務経験のない弁護士や、司法修習生から採用する傾向���年々強くなっているようです。 インハウスロイヤーの年収や待遇 インハウスロイヤーの年収の分布は以下のようになっています。日本組織内弁護士協会が実施したアンケート結果をグラフにしたものです。 2016年の企業内弁護士の平均年収は1143万円で、このグラフの通り、一番多いのは、30.5%の500~750万円となっています。 また、同アンケート結果から、勤務時間については、9〜10時間が38%でもっとも多く、次が8〜9時間の31.8%で、合わせると約70%を占めます。このように、法律事務所と比較すれば、ワークライフバランスが実現しやすいといえるでしょう。なお、84.2%の割合で企業が弁護士会費を負担しています。さらに、有給休暇制度・年金制度・社宅制度などの福利厚生が充実している職場が多くを占めます。 インハウスロイヤーに求められる能力 企業がインハウスロイヤーに求める能力としては、まず、弁護士としての「状況/リスク判断能力」「法的思考力」「法律知識」「信頼感」が求めらます。また、他の社員や部署との調整などが多いため、「協調性」「コミュニケーション力」も必要とされます。これらは、即戦力採用・ポテンシャル採用に関わらず、弁護士として当然に求められます。 就職・転職時にアピールすべきポイント インハウスロイヤーとして就職または転職する場合、上記の弁護士としての能力に加え、組織の一員として積極的に企業に貢献していくことも求められるため、業界や業種への理解や意欲なども含めて、”ビジネスマンとしての一般的なスキル”が、法律事務所と比べると重視されます。 さらに、管理職のポジションでの募集であれば「マネージメント能力」なども求められます。 また、グローバル化が進んでいる影響により、日本国内だけでなく国際的な業務に携わることが求められるケースも多くなってきています。 英文など外国語の契約書の作成やチェックなど、業務において語学力が必要となることも多く、募集要項にビジネスレベルの英語力が必須と記載されているものも多く存在しています。 そのため、TOEICやTOEFLなどの点数があるなら漏らさずアピールしましょう。応募書類や面接のときには、ここに挙げた内容を踏まえてアピールしていくとよいでしょう。 弁護士ドットコムキャリアのエージェントサービス登録(無料)はこちらから。必要なタイミングで専任のコンサルタントが誠実にご支援いたします。 転職エージェントサービスに登録する
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