1 終章 2011年の夏、スティーブ・ジョブズは、まだまだがんと闘え ると考えていた。その彼から、8月末にはアップルCEOを辞任す るつもりなのだが、その話も本書に含めないかと提案があった。最 後の部分以外は原稿を出版社に送ったあとのことだ。最後の修正原 稿を提出する直前、本書に収録したたくさんの逸話についてジョブ ズと話し合う時間を持つことにした。ジョブズにとって気に入らな いのではないかと思われるものも含めて、だ。 ありのままを書いてくれと要望されていたこともあり、彼の厳し い側面もたくさん取りあげている。それは複雑で情熱的な人間の一 面である、そういう性格だったから普通の規則になど従わなくてい いと信じ、世界を変えることができたのだと伝わるように、できる 限りの努力をした――そう、私は彼に請けあった。 ジョブズは満足してくれた。自分が礼儀正しく上品な人として歴 史に記録されないこと