長野・岐阜県境の御嶽山(おんたけさん)が突然、噴火した。紅葉シーズンの週末ということもあって、異変が起きた9月27日昼には多くの登山者が訪れていた。警察や消防、自衛隊らが捜索した結果、山頂付近で30人以上が心肺停止状態で見つかり、10人以上の死亡が確認されている。
まだ行方がわからない人たちもいると見込まれており、捜索・救助活動が続いている。一方、ネットでは、救助された人が捜索活動にかかった費用を請求されるのではないかと、心配する声が出ている。こうした疑問に対し、「当然、個人が支払います」と断言している人もいる。
これは本当だろうか。捜索・救助のためにかかる費用は、今回のようなケースでは莫大な額になると推定されるが、救助された人が個人的に支払わなければならないのだろうか。
●公的機関の救助活動は「税金」でまかなわれる
今回の噴火については、「災害救助法」という法律が、地元自治体に適用されたと発表されている。それによって、救助費用がまかなわれたりしないのだろうか。内閣府の防災担当の職員に聞いた。
「御嶽山の噴火では、多くの人が生命や身体に危害を受け、継続的な救助が必要となっています。そのため、長野県が、木曽郡の木曽町と王滝村に災害救助法を適用することを決めました。
これによって、被災者の救助にかかる費用の一部を、国と長野県が分担して負担することになります。具体的には、避難所の設置や、避難所で行われる応急処置、炊き出しの費用などがまかなわれることになります」(担当職員)
警察・消防・自衛隊などが行う捜索・救出活動の費用も、それでまかなわれる?
「いえ、警察や消防、自衛隊は、救助が業務に含まれますから、災害救助法は直接関係ありません。いずれにしても、救助費用は税金でまかなわれますので、救助された人が支払う必要はありません」(同職員)
今回の捜索や救助にかかった費用は、基本的に税金でまかなわれるため、救助された人が個人で支払う必要はないようだ。
●民間の救助費用は「保険」でカバーされるか?
一方、山にくわしい溝手康史弁護士は、「民間の山岳遭難対策協議会などに出動を要請した場合、費用を個人で支払う必要が出てきます」と指摘する。民間団体に救助を要請するというのは、たとえば、どういうシチュエーションだろうか。
「今回は公的機関からかなりの人数が動員されているようですが、一般的な捜索の場合、人手が十分でないことがあります。また、公的機関が、いつまでも生存者の捜索・救助活動をしてくれるわけではありません。捜索により多くの人手をかける場合や、長期間の捜索を行う場合には、民間に頼むことになります」
仮に民間の団体に頼んだ場合、どれぐらい捜索費用がかかるのだろうか。
「捜索員・救助員の日当は一人あたり3~5万円くらいといわれています。また、救助に民間のヘリコプターを使った場合は、一回につき数十万から数百万はかかります」
そうしたお金は、個人で負担することになる。もちろん命はお金にはかえられないが、かなりの負担になることは、間違いなさそうだ。そのときにカギになるのが、保険だ。
山でケガしたときのために傷害保険に入る人もいるだろうが、遭難したときの捜索・救出費用は、一般的な保険ではカバーしていない。そのような場合に備え、遭難救助の特約がついた「山岳保険」もあるという。ただ、保険会社に問い合わせると、今回の噴火のような特殊事態でも保険金が支払われるかどうかは、即答できないということだった。
現在、山頂付近は、自衛隊ですら近寄ることができないと伝えられている。このような状況下だと、一般人にできることは限られている。まずは、公的機関の捜索活動がうまくいくことを祈るべきだろう。