Apple 創業者のスティーブ・ジョブズが iPod を裸で使えと言った逸話はたいへん有名であると思う。孫引きになるが以下のようなものだ。
スティーブ・ジョブズは、 iPod の外見を損ねるものには、カバーであれ何であれ、非常に敏感に反応するのだ。
私は彼とのインタビューを録音する際に、外付けマイクと iPod を持っていったことがある。
「iSkin」という透明プラスチックのカバーをつけた iPod を鞄から取り出した途端、彼は私に名画「モナリザ」に牛の糞をなすりつけた犯罪者を見るような目を向けたものだ。
もちろん私は、繊細なiPodに傷��汚れをつけたくないのだと言い訳したが、彼は聞き入れようとしなかった。
「僕は、擦り傷のついたステンレスを美しいと思うけどね。僕たちだって似たようなもんだろう?僕は来年には五十歳だ。傷だらけの iPod と同じだよ」
スティーブン・レヴィ『iPod は何を変えたのか』(142ページ)
http://www.cyber-life.info/articles/17674.html
ご存知の通り、iPhone もまた iPod の一つだ。だから俺は2007年に iPod touch を買った時も、2008年に日本で初めて iPhone 3G が出た時も、タイで iPhone 4 を買った時も、そして今年のはじめにやはりタイで iPhone 5s を買った時もずっと裸で使ってきた。
ところがである。どうもそういった傷や汚れが「保証対象外」になると言われてしまったのである。
上記の写真は俺の iPhone 5s についた小さなキズである。若干パネルの上部が欠けている。よく見ないとわからないようなものだ。スティーブ・ジョブズの言うとおり、これくらいは「擦り傷のついたステンレス」であり、美しさの一部だ。俺にとってはかすかな思い出でしかない。ポケットに入れようとした時にすべって地面にまっすぐ落ちた時についた傷だ。
修理を依頼したのはホームボタンが効かなくなったことだ。Touch ID も動かない。5s の意味もない残念な状態で、これはたいへんユーザー体験を損なうものだ。ところが、Apple の見解としては「保証対象外」とのことだった。この傷が理由だ。
タイの TrueMove の独自見解かと思って日本の Apple Store のジーニアスバーでも聞いてみたのだが、やはり保証対象外、有償での本体交換ということだった。ボタンのみの修理は受け付けてないらしい。
今までの iPhone は何度も落としてきたがこんなことはなかった。iPhone 4 は金属部品が周囲を覆っていたので、これくらいのことでパネルが欠けることもなかった。
だが iPhone 5s は金属部分が細くなり、パネル部分が露出している。この程度でも欠けてしまうのである。
どんなに「擦り傷のついたステンレス」が美しかろうが、保証期間内のものが保証対象外になってしまうのでは美しいもへったくれもない。
特にホームボタンが動かず Touch ID も動かない iPhone 5s になんの意味があるのか。購入後わずか5ヶ月で期待した機能が動かなくなる製品になんの意味があるのか。
そういうわけで、スティーブ・ジョブズの戯言を真に受けず、みんな iPhone を使うときにはケースに入れて使わなくてはならない。ケースに入れてなかったがために保証対象外になるなんて事態、本来あってはならないことだ。
正直今回の Apple の対応には腹がたってるし、ボタンの修理くらいどうにかしてもらいたい。傷は思い出にできるけど、ボタンは機能しないと始まらないのである。